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洋画部門

マジカル・ガール

マジカル・ガール

2016年4月3日鑑賞

 

監督「Nippon」で映画を撮ってください

 

まず、本作で驚かされるのは、ジャパニーズPOPカルチャーが、スペインにまで波及していることです。

白血病で余命いくばくもないアリシア(ルシア・ポシャン)は日本のアニメ「魔法少女ユキコ」に夢中です。

少女にとっては、アニメの世界と現実は結構リンクしていたりします。

自分も「ユキコ」のような、かわいいフリフリの衣装を着てみたい。

少女のささやかな夢を叶えてやりたいと思うのは、彼女の父親ルイスです。

現在失業中。

お金もない。

明日の生活が出来るかも分からない。

しかも愛する娘は白血病。残された時間に、娘アリシアの夢を叶えてやりたい。

そこで父親ルイスは、ある行動を起こすのです……。

 この映画、新人監督カルロス・ベルムトさんの、人物の描き方、ストーリー展開がおもしろい。

本作で特徴的なのは、主人公は一体誰なのか?ということ。実に興味深い脚本であることに気づかされます。

 まずは「主人公はアリシアだ」と観客に思わせておいて、次に父親ルイスを描き、次にたまたま遭遇した人物に「ストーリーの流れ」そのものを、いわば「放り投げて」任せてみたりします。

一つの映画作品の中で、たったひとつであるはずの「主役の席」を、次々に別の人物が、交代して座ってゆくみたい。

いわば、主役のリレー方式。

主役のバトンを受け取った人物は、作品中で「そのシーンだけ主役」なのですが、次のシーンになると、主役のバトンをポイっと次の人に渡すのです。

これはなかなか面白い演出手法です。

 ただその分、観客にとって、いったい本作は誰を描いているのか? 何が描きたいのか? いまいち焦点がぼやけてしまう、という難点があります。

そこをあえて、面白がれるか? というのが、観客の懐の広さを試されているところなのでしょう。

新人監督カルロス・ベルムトさんは1980年生まれ。今年まだ36歳。

 日本の「ドラゴンボール」が大好き、とのこと。

 日本のポップカルチャーが、遠くスペインの地で、若き映画監督に大きな影響を与えているなんて。

ネットの影響もあり、文化の違いはあるものの、まさに世界は一つにつながっているんですね。

劇中で使われる日本のアイドルソング。演歌歌手になる前の長山洋子さん「春はSA-RA SA-RA」

こんな曲、僕も知らなかったなぁ~。

カルロス・ベルムト監督、一度、日本に来て、是非映画を撮ってください。

いつか、そんな日が来るのが楽しみです。

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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)

物語 ☆☆☆

配役 ☆☆☆☆

演出 ☆☆☆

美術 ☆☆☆

音楽 ☆☆☆☆

総合評価 ☆☆☆

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作品データ

監督   カルロス・ベルムト

主演   バルバラ・レニー、ルシア・ポシャン、ホセ・サクリスタン

製作   2014年 スペイン

上映時間 127分

「マジカル・ガール」予告編映像


グランドフィナーレ

グランドフィナーレ

2016年4月19日鑑賞

 

人生に「シンプル・イズ・ベスト」はあるのか?

 

引退した名作曲家、指揮者のおはなしです。

音楽に関わる映画は大好きなので、見に行ってきました。

ラストシーンで演奏される「シンプルソング」とってもよかった。

それ以上に、心癒される保養地の風景。

美しい建築、緑の高原。

プールに映る夜の照明。

どれも、絵画のような美しさ。

この作品には、ストーリーなどあってもなくても構わない、と思えます。

また、許せてしまいます。

そういうアート系の映画がお好きな方向けです。

アクション映画専門の方ははっきり言って「ご遠慮ください」としか言いようがないですね。

主人公フレッドは、現代イギリスを代表する名作曲家であり、指揮者です。まさに「マエストロ」

今は引退して、スイスアルプスの保養地で余生をおくっています。

そのマエストロの元へ、エージェントから依頼がきます。

「女王陛下が、マエストロの指揮で『シンプルソング』をご所望です」

わざわざ、王室から直接依頼がくるなんて、とんでもない名誉なことです。

一般ピープルならそれこそ「揉み手」をせんばかりに、

「へっ、へっ、おおきに! なんぼでもやりまっせ!!」と作り笑いを浮かべて、愛想を振りまくところなんでしょうが(それはお前のことだろ? という批判は置いといて……)

主人公フレッドは違います。

この女王陛下の申し出を断ってしまうのです。

「シンプルソング、あの曲は妻のためだけに書いたのだ。演奏するか、どうかは、私の自由にさせて欲しい」

奥さんもかつて音楽家でしたが、いまは認知症のため、施設で暮らしています。

フレッドは、今まで音楽に捧げてきた自分の人生を振り返って思いをめぐらせます。

「これでよかったのだろうか?」

家族を顧みず、音楽だけに没頭し続けた。

そして、音楽の高みを目指して日々研鑽を重ねてきた。

その結果が

「妻は認知症」「娘とも別居」「家庭崩壊」

これが音楽へ人生を捧げた、その見返りなのでしょうか?

だとしたら、いったい自分の80年の人生は何だったのか?

そのあたりを、友人の映画監督ミックと語らいながら、マエストロは保養地で日々を送って行く、というお話です。

 

こういう類の作品については、人物の造形が大切なんですね。

キャスティングについては、それなりのキャリアを積んできた、相当なベテラン俳優。さらにカリスマ性も必要です。

主人公の作曲家にマイケル・ケイン、その友人の映画監督にハーベイ・カイテル。

これはいいです。キャステング、ハマってますね。

この二人のオーラで、映画の緊張感が崩壊せず、ギリギリのところで踏みとどまっている感じがしました。

本作は劇的なストーリー展開など、ハナからあるはずもない作品。

そういうことをご理解した上で、鑑賞されることをお勧めします。

本作でモチーフとなる「シンプルソング」という楽曲。

これ、少年がヴァイオリンで練習するシーンなどで、断片的に紹介されるんですね。

女王陛下が聴きたがった楽曲。

そして、マエストロが奥さんのためだけに作った曲。

それゆえに「どうしても演奏したくない曲」

どうです?

ものすごく勿体ぶっているでしょう?

いったいどんな楽曲なのか?

最後の最後まで観客を焦らせておく演出方法です。

それだけ映画作品の中で、なかなかその姿を現さない楽曲

「シンプルソング」の「価値」や「ハードル」をあえて高めておいて、

ラストに、これでもか!と涙が出るような美しい音楽を聴かせる。

これは素晴らしい演出方であり、また、楽曲そのものがそれだけの「品の良さ」

「格調の高さ」を持ち合わせていなくてはなりません。

本作のために作られた「シンプルソング」という楽曲の出来栄えが、作品の鍵を握っていることは言うまでもありません。

その監督の厳しい要求に応える音楽を提供したデヴィッド・ラングさんは、素晴らしい仕事をしたと思います。

本作における、映像の美しさ、音楽の美しさは、とても気品溢れるもので、僕はとても好きなタイプの映画です。

作品世界の中へ身を浸して、ゆっくりと過ぎてゆく時間を楽しむような、そんな作品です。

ゆったりした気分でお楽しみくださいませ。

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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)

物語 ☆☆

配役 ☆☆☆☆

演出 ☆☆☆

美術 ☆☆☆☆

音楽 ☆☆☆☆

総合評価 ☆☆☆

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作品データ

監督   パオロ・ソレンチィーノ

主演   マイケル・ケイン、ハーベイ・カイテル、ジェーン・フォンダ

製作   2015年 イギリス、フランス、ベルギー、イタリア

上映時間 124分

「グランドフィナーレ」予告編映像

 

 


スポットライト 世紀のスクープ

スポットライト 世紀のスクープ

2015年5月1日鑑賞

 

真実は「この眼で見るまで」わからない

 

西欧諸国、特にアメリカ合衆国で「ゴッド」「神」の威光を背後に見せるものは、絶対的な権力を手にする。

何をやっても許されてしまう。

「すべては神の御意志だ」といえば「つじつま」があってしまう。

それは「正義」にも姿を変える。

国同士が「正義のために」「神のために」時には戦争で、人を殺すことさえ「神の祝福」が与えられる。

それに比べれば、神父が子供達に、性的ないたずらをするのは「神の側」である協会側にとっては、きっと取るに足らないことなのだろう。

こどもたちのその後の人生に、一体どのような、大きな痛手と苦悩と影響を与えようが、知ったことではないらしい。

全ては「神の御意志なのだ」で済ませてしまう。

そんな、驚くべき「タブー」が、ようやく世の中に知らされたのが21世紀に入ってから。ついこの間のことなのだ。

それ以前、この問題が表に出なかったこと自体、驚嘆すべき出来事だ。

その教会の「タブー」を報じたのは、アメリカの地方新聞「ボストングローブ紙」である。

本作は、その真実の物語を元に、記者や、裁判に関わった弁護士たちの人間群像を描くものである。

 

本作は「アカデミー作品賞」を受賞している。

それは、このカトリック教会に潜む「腐りきった根っこ」を、世間の目にさらすという、途方もないインパクトを、アメリカ社会に与えたことにあるのだろう。

なぜいままで、この問題を新聞報道しなかったのか?

なぜ、いままで誰も、この問題を映画化しなかったのか?

うがった見方をすれば、本作を「アカデミー受賞作」に祭り上げることで、ハリウッドや映画界、マスコミは、自分たちへの火の粉を防ぐ「ファイヤーウォール」あるいは「免罪符」にしているのではないか? とさえ思ってしまった。これはあくまでも私の個人的意見である。

ただ、本作でも描かれているが、神父の子供達への性的虐待については、早くから報道され、裁判にさえなっていた。

しかし、記事の扱いはごく小さなものであり、裁判沙汰もうやむやになってしまっていた。その被害者の子供達を守った、弁護士役を演じるのがスタンリー・トゥッチだ。

私が本作で最も心惹かれたのが、この役者さんの存在感だった。

彼はトム・ハンクス主演の「ターミナル」 や 

「プラダを着た悪魔」

 

それにアメリカでリメイクされた「Shall we Dance?」 で抜群の演技を見せてくれた。

本作では、カトリック教会の「大罪」を告発したが、それを圧力によって封印されてしまった過去を持つ、気難しい弁護士を演じる。

彼の演技プラン、人物造形は実に見事だ。

彼はボストングローブ紙が、協力を要請してきても、最初は全く協力しようとはしない。

「相手は”カトリック教会”なんだぞ! 君たちが勝てる相手じゃない」

ボストングローブの熱血記者はそんな彼に対して

「今も、罪のない子供たちが、神父の餌食になってるんだ」

「たとえ”ヴァチカン”に乗り込んでも、この事実を暴いてみせる!」

そうなのだ。この衝撃の事実は、実に根深い。

なお、私も含め「日本人」は、宗教について、さほど強い関心を示さず「無神論者」を決め込んでいる人が多い。

また宗教こそ「人生の道標なのだ」という人は少数派だ。

しかし……。

アメリカという国では、子供の頃から宗教教育を叩き込まれるのである。以前「りんぼう先生」こと、林望さんの、イギリス留学中のエッセイを読んだことがある。

意外にもイギリスでは、それほど信心深い人は少ないという。

りんぼう先生は、イギリス留学時代、古いマナーハウス(中世ヨーロッパの領主邸宅)に滞在していた。

(ちなみに滞在費は結構安いらしい)

そこに、あるアメリカ人女性が滞在していた。彼女はある日、ラッキーな出来事があり、感激のあまり、庭先で神に感謝を捧げていたらしい。それを見つけたマナーハウスの女主人。

走り込んできて、そのアメリカ人女性に放った一言。

「やめてちょうだい! そんな馬鹿げたこと」

「りんぼう先生」はその一部始終を目撃しているのである。

アメリカとヨーロッパでは、キリスト教に関するスタンスが、どこか違うらしいのである。

宗教にしろ、政治にしろ、巨大な権力は、どこからか腐敗が始まる。

それは世の常といったところかもしれない。

かつて日本でも、田中角栄氏が逮捕された「ロッキード事件」があった。

そのきっかけとなった、立花隆氏の文藝春秋レポート記事「田中角栄研究」

その後、他の新聞記者たちは、田中逮捕後に、悔し紛れにこういったという。

「あの程度の情報は、俺たちはとっくに掴んでいた」

だったら

なぜ記者は記事を書かなかったのか?

なぜ総理大臣の不正を暴こうとしなかったのか?

私には忘れられない、出来事がある。

「心の友」とでも言うべき、敬愛してやまないネット作家がいる。

その方が2012年6月23日

「大変なことが起こってます!すぐにこの動画をみてください!!」

とメールを送ってくれた。

私はすぐにリンク先の動画をみた。その動画の撮影者はタクシーに乗り、ゆっくりと首相官邸前を車で一周した。その先に映っていたのは……。

断固とした姿勢で首相官邸を取り囲む「一般市民たち」の姿だった。

「一般市民が首相官邸を取り囲んで抗議行動をした!?」

これは日本という「国家を揺るがす」とんでもないニュースだと思った。

新聞の一面トップを飾ってもおかしくない出来事だ。

私は翌日、朝一番のテレビを見た。

どの局も首相官邸で起きていることを報道しなかった。

私がこの事実をメールで初めて知ったのち、テレビ及び新聞などのマスメディアは、一斉に沈黙した。

その間、実に「一週間」

真実を報道するべきはずの「新聞・テレビ」は、一切、固く口を閉ざしたのだ。

首相官邸で実際には何が起きていたのか?

誰も何も言おうとはしないのだ。

あきらかな「箝口令」である。

私はこの国が恐ろしくなった。

「大本営発表はまだ続いているのだ……」

そうだ。それは”記者クラブ”という名に変わっているだけなのだ。

私たちは、何を信じたらいいのか?

自分の目で見つめること。

自分の眼の前で起こっていること。

その事実を淡々と受け止める、心の準備をしておこう。

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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)

物語 ☆☆☆☆

配役 ☆☆☆☆

演出 ☆☆☆

美術 ☆☆☆

音楽 ☆☆☆

総合評価 ☆☆☆

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作品データ

監督   トム・マッカーシー

主演   マーク・ラファロ、マイケル・キートン

     スタンリー・トゥッチ

製作   2015年 アメリカ

上映時間 128分

「スポットライト 世紀のスクープ」予告編映像