閉じる


邦画部門

ちはやふる 上の句

ちはやふる 上の句

2016年3月31日鑑賞

 

競技かるたは「荒ぶる」青春なのだ!!

 

「ちはやふる」という”言の葉”を辞書で調べてみました。美しいコトバの響きとは違い「荒々しい」とか、「勢いの強い様子」を表す意味だそうです。「荒ぶる神々」や「神社」にかかる、枕詞なのですね

「ちはやふる」なのか「ちはやぶる」なのか、古い言葉や、短歌の言葉は、本当は厳密に使われるべきものでしょう。

 いにしえの貴族や歌人が、いまから一千年という遠い遠い昔に「うた」を詠みました。

その多くは恋の歌なんであります。

やはり、いつの時代でもラブレターは大切なのですね。

まぁ、当時の人にとっては、思いを寄せる人に宛てた「つぶやき、Twitter」にあたるのかもしれません。

ただ、その「つぶやき」は、今ネットに「垂れ流し」ている「コンテンツ・言葉」とは、まるで次元が違うような気がいたします。

いかに美しい言葉を厳選し、操り、使い切るか?

「五・七・五・七・七」その短い31文字の中に、どれだけの想いを込め、どれだけの言葉で「遊び」、さらには隠喩や暗喩を込めるのか?

そういったところも、短歌の楽しみなのでしょう。偉そうな事を申しましたが、実は私、「短歌」に関してはずぶの素人。無教養なのです。まあ、部外者の「戯れ言」と笑ってください。

さて、その短歌を扱った原作コミック「ちはやふる」

初めてTU●AYAさんの書棚で見かけたとき、その表紙絵の美しさ、可憐さに、心惹かれました。

と同時に「これはやばい!」と思いましたね。

というのも以前、コミックの「神の雫」にハマってしまい、四十数巻という長編を、ほぼ毎日1冊づつ借り続ける、という”ちょっと痛い”経験があったのです。

この「ちはやふる」も、もしかすると「だだハマり」してしまうんではないか? と言う恐れがあったのです。

それほど魅力的な原作漫画を映画化するのは、やはり映画好きとしては、どうしても気になりますね。しかも、主演は広瀬すずちゃん(う~む……カワイイ……おじさん陥落)

昨年、広瀬すずさんは、是枝監督の「海街diary」で、大へんな注目を集めましたね。

腹違いの三人の姉達に迎えられ、末っ子の四女として、一つの家族になってゆく。そのぎこちなさ、初々しさ。映画ファンのみならず、その演技は、私のようなスレっからしのオジサンをも、キュンキュンさせてくれました。

今回「ちはやふる」では「海街diary」と真逆のキャラクター、ハイテンションな女子高生を演じます。

作品の舞台となるのは男女共学の高校です。

主人公「綾瀬千早」は、瑞沢高校に入学。早速、以前から好きだった「かるた」に取り組もうとします。

かるた部がないので、自分たちで作ってしまえ、ということで、綾瀬千早は自分以外にも四名の部員をかき集めて「瑞沢高校かるた部」を新たに設立します。

そして彼女たちは、青春の熱い、アツい日々を部活動に打ち込んでいくのです。

「競技かるた」の世界というのは、オジサン初めて知りました。

それは恐るべき記憶力と瞬発力、判断力、運動神経、そして長丁場の試合に耐え抜く、強靭な体力が必要とされるそうです。

 そのため、彼女達「瑞沢高校かるた部」部員達は一見、体育会系のトレーニングとさえ思えるような特訓を始めます。まるで高校野球みたい。こうして体力と集中力を身につけて行くんですね。

 

本作で描かれる、高校生特有のノリの良さ、そして何事にも「不必要に全力疾走」というモチーフは、ある意味、ありがちな青春ストーリーに仕上がってしまう恐れがあります。

本作の監督は小泉徳宏監督です。

僕はこの人の作品タイヨウのうた」を映画館で観ました。

あの作品は、主役に抜擢されたシンガーソングライター、YUIちゃんのキャラクター、存在感、そしてなにより素晴らしい歌声。

YUIという稀有な才能が、作品全体に「華」として散りばめられているような、素晴らしい作品でした。彼女の魅力をうまく引き出した小泉監督の手腕は秀逸だと思います。

 さて、本作「ちはやふる」はどうでしょう?

 主人公の広瀬すずさんは、もちろん魅力的です。

ただ彼女たちは、なぜそんなに「競技かるた」に打ち込む必要があるのか? 

 その動機付けや、人物像の掘り下げが、スクリーンを通して観客に、いまいち伝わらない、もどかしさも、ちょっと感じられました。

 ただ1つの救いは、助演女優の上白石萌音さんの存在でしょう。

 彼女は以前、周防正行監督の「舞妓はレディ」と言う作品で主役を演じました。

ここまで混じりっ気なし、100%純粋な田舎者?

そんな女優さんなんて、イマドキいないでしょう?

とおもったら、彼女がそこにいたのです。

全くスレてない天然の女の子。不器用で、真剣で、まっすぐな意思の強い瞳。

彼女はそんな女優さんです。

その「素材」としての良さ、本作では非常によく生かされていますね。

なお、本作は「上の句、下の句」という2部構成。

そのため本来なら、作品の評価自体は2部作、両方を観てから判断することになるでしょう。

 なお、申し添えておきますが、私は原作と、それをもとに制作された映画作品を、比較しようと言う、不毛な議論に首を突っ込むつもりは毛頭ありません。

 小説や漫画、そして映画というのは、全く違うジャンルのものなのです。

同じ芸術という「人間の情熱の発露」でありながら、絵画と音楽が、全く違う表現行為であるのと同じでしょう。もちろん、原作の精神は尊重されるべきです。しかし、一旦「映画化された作品」として捉える場合、それはもう原作を離れ「映画としての命」を与えられているのです。

 熱烈な原作ファンは、どうしても「原作通りではない」と、不平不満をおっしゃる方が、未だに多く見受けられる気がします。

「映画はあくまで映画である」ということを、前もってご納得の上で、オープンな気持ちで鑑賞されてみてはいかがでしょうか。

**************

天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)

物語 ☆☆☆

配役 ☆☆☆☆

演出 ☆☆☆

美術 ☆☆☆

音楽 ☆☆☆

総合評価 ☆☆☆

**********

作品データ

監督   小泉徳宏

主演   広瀬すず、野村周平、上白石萌音

製作   2016年 

上映時間 111分

予告編映像はこちら

「ちはやふる 上の句」予告編

 

 


あやしい彼女

あやしい彼女

2016年4月1日鑑賞

オードリーか、多部ちゃんか、それが問題だ!

 

さて、いま劇場にいらっしゃる、シニアの皆様。そこのあなたですよ、あなた。

もし”映画の魔法”を「あなた自身に掛けることができる」としたらどうされますか?

1つの思考実験ですね。

仮にですよ……

もし仮にあなたが「多部未華子」のルックスと、その「はち切れんばかりの若さ」を手に入れられるとしたら……。

”イマジン”してみてください。

あなたは何をしますか?

本作はそういう映画なのです。

そんな「夢みたいなアホなこと」を”抜け抜けと”やってのけた作品なのです。

その思い切った脚本と、キレのいい演出で楽しませてくれます。

主人公は倍賞美津子さん演じる、瀬山カツさん。

イマドキの高齢者は、なんでこうも元気なんでしょうね?

カツおばあちゃんも、普段からMAXハイテンションです。

ちなみに御歳、73歳。

この人がある日、ちょっとレトロで、お洒落な写真館を見つけます。

その表に飾ってあったのが、あのオードリー・ヘプバーン様の「ご真影」

映画と言う芸術における、まさに”王女様”と言ってもいいですね。

カツおばあちゃんは、かつてオードリー主演の「ローマの休日」を観たことでしょう。

そして、どんなに、どんなに、オードリーに憧れたことでしょう。

ついフラフラと写真館に入ってしまいます。

「いらっしゃいませ」

と100万ドルの笑顔で出迎えてくれる店主。

これが「ぬっくん」こと、温水洋一さんなんですね。

この辺りのキャスティングもいいですね。

そして運命のシャッターが切られました。

パシャ!!

その時、まさに「映画の魔法」が、掛かってしまったのです。

彼女はなんと、20代の若さに戻ってしまいました。

……と、まあ、ここまでは、いわゆる「前フリ」ですな。

 

はて? いつもは痛い肩も、腰も、足も、全然だいじょうぶ。

なんだこりゃ?

カツおばあちゃん、びっくり。

体が軽いよ~、動くんだヨォォ~!

カツおばあちゃん、有頂天です。

もう、こうなったら、やりたい事、全部やり倒してやる!

まずは、このチリチリのオバはんパーマ。

この髪型をなんとかしよう。

二十歳に若返ったカツおばあちゃん。

いや、今や「カツお嬢さま」は、美容室に髪をカットしに行くんですね。

映画好きなら分かるでしょ?

オードリー・ヘップバーン演じる王女様が、こっそり街へ抜け出しましたね。

街をぶらついてローマ観光。

その時見つけたのが美容室。

美容師に髪を切ってもらう、あの名シーンの再現です。

「ローマの休日」のアン王女様は、ロングヘアがあまりお好みではありませんでした。

いちどは思いっきり、髪を短くしてみたかったのです。

ちょっとオネエっぽい美容師が、

「こんなキレイなお髪、本当に、ほんとうに、バッサリやっちゃって、よろしいのネ?」

と冷や汗をかきながら、美しいロングヘアーを

「OFF! OFF!バッサリ!!」と切り落としていくシーン。

オールドな映画ファンにとっては、もう胸が「キュンキュン」します。

その結果……。

オードリーのショートヘアーは、世界中の女性たちを虜にしました。

世界中の女性が、オードリーの髪型を真似しました。

本作でも、なんと多部未華子バージョンの「オードリー・ショートヘア」が見られるわけです。

多部ちゃんのファンとしては、これはもう、涙ものでしょう。

さて、カツおばあちゃん(いや、今やお嬢さん)には、幸恵(小林聡美)という娘がいます。

雑誌の編集やってます。仕事をバリバリやりすぎたのか、夫と別れ、シングルマザーです。

息子の「翼」(北村匠海)は、あんまり才能もないのに、バンドをやっている。

母の幸恵にとっては、我が子の将来が心配。

でも翼くん。そんな母に向かって

「シゴト? ん~、俺、やっぱ、バンドで生きていくから」

なんて夢みたいなことをほざいております。

さて、カツおばあちゃんです。

髪を切り、オードリー・ヘップバーンか? はたまた、多部未華子か? というルックスを手に入れました。

幼なじみの風呂屋の次郎さん(志賀廣太郎)の所へ、偽名を使って転がり込みます。

苦し紛れに考えた名前が「大鳥節子」(オードリーと原節子の合体?!)

この次郎おじいちゃん、若い(若く見える)カツさんを気に入って、風呂屋の二階に居候させることにします。

そんなある日のこと、商店街の「のど自慢大会」が開かれました。

次郎さんは、幼なじみとも知らないで、カツさんを、のど自慢大会に連れて行きます。

カツおばあちゃん、若返って青春を取り戻した気分です。

おもわずステージに上がり、懐かしの昭和歌謡を大熱唱。

その歌声を偶然聞いていたのが、音楽プロデューサーの小林拓人(要潤)。

高学歴、高身長、高収入

全部揃った音楽プロデューサー。

しかもイケメン。これはいけませんねぇ~。

何か危ない雰囲気がしますねぇ~。

映画のその後が気になります。

このイケメン音楽プロデューサー、若くて魅力的な「カツちゃん」が大いに気に入りました。

「存在感が素晴らしい! しかも歌がいい! これは売れる!!」と踏んだのです。

そこでカツさん、孫の翼くんたちと一緒にバンドを組み、デビューしよう、と言うお話になります。

まぁそんな訳でして、本作では多部未華子が「歌う!唄う!唱う!」

もう、たっぷりと楽しめますよ。

ロックバンドのボーカルとしての多部ちゃん。

昭和歌謡まで熱唱しちゃう多部ちゃん。

劇中歌をプロデュースしているのは小林武史さんです。

「Mr・Children」をデビューさせた人です。サザンオールスターズ、桑田佳祐さんとも関係が深い大ヒットメーカーですね。

こうなったら、多部ちゃん、デビューしちゃう?

さて本作は、オードリー・ヘップバーンという、世界的アイドル女優(もちろん実力も折紙つき)への敬愛の念が、たっぷり詰まった作品となりました。

もしあなたが「ローマの休日」という映画が好き、

あるいはバンドや、歌謡曲など、音楽好き。

なにより多部未華子ちゃんが大好き!

ならば、迷わず、映画館へ直行しなさい!!

損はしません。

エンターテイメント作品として、相当、満足度高いです。

何よりこの映画が「いいな」と僕が思う理由は、

「映画って、やっぱり魔法なんだ」ということです。

映画というのは、ほんの束の間、夢見るファンタジーでいいのだ、という事を再確認させてくれます。

フィクションとは「大嘘」です。

「うそ」丸出しです。

でも、その嘘が、とびきり魅力的な夢の世界を広げてくれるのだったら……。

スクリーンで、でっかい大嘘をついても「イイんです!」

その割り切り、開き直り。

本作の「キレの良さ」はそこから生まれたのでしょう。

久々に、映画館で楽しいひと時を過ごせました

多部ちゃんファンなら、間違いなくオススメです。

**************

天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)

物語 ☆☆☆☆

配役 ☆☆☆☆

演出 ☆☆☆☆

美術 ☆☆☆☆

音楽 ☆☆☆☆

総合評価 ☆☆☆☆

**********

作品データ

監督   水田伸生

主演   多部未華子、倍賞美津子、要潤、小林聡美

製作   2016年

上映時間 125分

「あやしい彼女」予告編映像はこちら