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宿毛市で発見されたプルトニュウム核爆弾の電子基板部分から、工場マネージャーの指紋が採取されたことにより、国家公安委員会の指示で、警察庁が逮捕状を直接請求、取得しました。

罪状は、日本に核兵器製造を規制する法律がないため、当面、放射線障害防止法違反と記載され、その他の罪状の立証を待って、再逮捕することとされました。

 のちの調査により、酸化・還元炉と称された化学反応炉は、プルトニュウム239生産のための黒鉛炉であり、地下工場の設備は、二酸化ウランから六フッ化ウランに転換、ガス化して遠心分離を行う一連のプラント(カスケード)だったと報告されます。カスケードでウラン235を濃縮し、副産物のウラン238を黒鉛炉に送って、プルトニュウム239を生産する全工程を、一切人の手を介することなく、全て自動で行なわれていました。

 

集中治療室で生死を彷徨っていた二人の工場スタッフが、障害も残さず回復し、その証言がマネージャーの罪状を更に補強しました。

当初のもくろみでは、二人の刑事を帰した後、自分たちの起爆で工場を破壊する予定だったのが、核兵器製造の事実を知る自分たちも含めて、この世から葬り去られるところだったと説明しました。

プラスチック爆弾で、黒鉛炉の粉塵爆発を誘発するアイデアは、爆発物の専門家であるマネージャーが考えたようです。

取引の相手は、国際的な闇の兵器仲介組織、文字通り死の商人です。あの漂着船と通勤ボートを使って、二酸化ウランを受け取り、代わりに完成品の核爆弾、またはプルトニュウム239・ウラン235の金属素材を送り返していました。

首謀者であるマネージャーが、取調官に語った事件の回想が、のちに公開されています。

「なぜ工場を爆破したのか?」という取調官の問いかけに対しマネージャーは、「製品と原材料の受け渡し方法が、少しでも発覚・露呈した場合、早急に設備を処分するのが当初からのプランだった、婦人刑事が工場の素性に疑いを持ってると思ったので、人間も含めて証拠を抹消する必要が出てきた。」

「どうして日本で?」という質疑に対しては、「調達できる工業製品・化学素材の品質・数量・種類の豊富さに於いて日本以外では不可能だった。最も好都合だったのは、都市部を越えてローカル地域にも浸透しつつある人々の地域社会への無関心さだ。高齢化・過疎という社会背景が、我々に味方した。」

 

 

 

事件の全容が明らかになるに伴い、政府は特定機密保護法適用を解除し、全世界に向けて、事件詳細の開示を行いました。これは内々に事件の経過を通知していた、同盟国政府からの強い要請を受けてのことでした。

日本政府のこの情報開示は、深刻な核テロ警報とも受け止められ、瞬時に世界を駆け巡って、各国政府・機関は直ちに対応を求められる事態となりました。

 


 「 退院したその足で、ホームセンターに行くんですよ先輩―――びっくりしちゃって。」

「同じメーカーの監視カメラ購入して、鑑識の若い子に頼んで細工して・・・・。」

「バーナーで焼いたり、黒い塗料で汚したり・・・・。」

「マネージャーの仕業だってどこで分かったんですか?」

見てたのよ、監視カメラが最初に破裂するのを―――。ストレージが直接インターネットに繋がっていて、ログインコードが工場長(マネージャー)の指紋だって、電気技師が言ってたじゃない。」

佐伯署の応接室で婦人刑事二人は、刑事部長と楽しく会話しています。

「ところで黒木、まだ答えを聞いてないんだが・・・・。」

「工場を見学した理由ですか?―――工場内部の放射線を計りたかったんです。」

と言いながら、ペン型の線量計を差し出した。

「密輸品が出て来てない段階で、専門的な強制捜査の令状を取るのは、それしか無いと思って・・・・。」

「私が、走り書き文字のアイソトープの件を電話したからか?」

「先輩は、その前から文字の意味が二酸化ウランだって見当つけてたんですよ!」

「―――確証は、無かったですけど。」

「その文字のことでね、白河君が撮影した写真には消えかかって写っていなかったようだが、続きがあるそうだ。―――800KG:JUL/9/2025―――というんだが、意味が分かるか?」

「―――2025年7月9日にイエローケーキ800Kg!原始的だけど確実な次回注文書だわ。」

 

一か月後、二人の婦人刑事は再びあの菩提寺を訪れていました。

好々爺の住職は、今日も本堂の板の間で、何事も無かったように煙管の煙草を燻らせています。

「そうかい、そげえな事があったかいのう・・・・。」

「人がおらんけえのう。目配り出来んけえのう・・・・。」

煙草の香りが、祭壇の線香の香りと混ざって、穏やかな時の流れを一層際立たせます。

「戦前は、お国の為ちゅうて砲台造らせちょったが、こんだ知らん士が誰んでん知らん間に、そげえなおじいもん造りよったかい。」

「ほんに、落ちとる葉っぱ一枚一枚にも気い使こうとかなあ、いかんわあ。何があるか、わからんわあ。」

 

 

 

漂着船が引き上げられた岸壁のボラードに腰を下ろして、黒木玲子が呟きます。

「ねえ笑ちゃん、あのガイドの二人どう思う?」

「どうって?」

「あの二人、私たちと同じじゃないかと思うの・・・・。」

「・・・・。」

「最初の爆発の後、耳の聞こえない私たちを、立坑まで引きずって行ったじゃない。」

「一緒に立坑に入るんだと思ったら、そのまま外から扉を閉めて・・・・。」

「自分たちが死ぬのを、他人に見られたくなかったんじゃないかしら、死ぬ時だけは二人だけで居たかったんじゃないかしら・・・・。」

目の前の水際で、猫が二匹じゃれ合っています。

「分かりました先輩!今晩は私が、使い古したあれで、ひいひい泣かせてあげます。大股開かせて、エビぞりにして責めてあげるわ、覚悟なさい!」

 

リアスの夕陽が、二人のシュルエットを紅く紅く染めていきました。

―――終わり。

 

 以上、全てフイックションです。

  


奥付



リアスの夕陽で泣かせてあげる!


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著者 : 南海部 覚悟
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