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婦長は、振り向くと、主治医にいやみを言った。「いつもの言い訳は、もういいわ。守る、守るって、いつまで待てばいいのよ。もう、10年も待っているのよ。女には、待てる限界があるの。男には、それが分からないんだわ。奥さんは、国会議員の娘でしょ。あなたは、奥さんと別れることができないのよ。もう、これ以上、待てないわ」主治医は、左手のブランデーグラスを置いて、すっと立ち上がった。「妻の死は近い。頼むから、もうしばらく待ってくれ。必ず、結婚する。信じてくれ、美佐子」

 

 

 

婦長は、顔を引きつらせ懇願する主治医にゆっくり近づき、震える唇に軽く右手の人差し指を押し当てた。「本当なの?奥さんの命は、いつまで?もう、これ以上は、無理よ」主治医は、婦長の耳元でつぶやいた。「あと1ヶ月だ。きわどい抗がん剤の実験をする。言ってる意味が、分かるだろ。もう少しの辛抱だ。愛している、美佐子」婦長に数々の弱みを握られている主治医は、婦長と結婚せざるを得なかった。二人の唇が静かに重なると、お互いの舌は、愛を確かめるように激しく絡み合った。

 


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