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星の子

 

 

 


星の子

            作/奥人






  ☆       ☆       ☆








星の世界にともだちを持ったことがあるかい。

星たちは、すいすいと夜空を泳ぎまわる。

まるで、みずすましのように、じっとした星の間をぬって、

ぶつからないように泳ぐんだ。


え?星がすいすい泳いだりしないって?


そんなことないよ。

ぼくは呼びかけてみた。

「君たちはだれなのか」と。

すると答えてくれた。

「星さ」と。


ぼくはふしぎに思って、もういちど呼びかけた。

「でも、星なら同じところにじっとしてるじゃない。

UFOさんじゃないの」と。


すると答えてくれた。

「そう言ってくれてもいいよ。でもほんとうは星さ。

星がじっとしてなければならない理由がどこにあるの」と。

それを聞いて、ぼくは、「へーえ」と思ったよ。


よく考えてみれば、ぼくらが空に星がある、あれは何万光年

はなれていて、大きさは直径何百万キロだよと言われても、

実感がわくかい?

だれかが見つけて、ああだこうだと計算して、こうなった

んだと、人が唱えて本に書いたものをみんな学んだ。

そう。学んだだけなんだ。


そこに行ってきたよ。その結果こうだったと

説明する人がいたのかね。

それとも君が確かめてきたのかい。

そう。けっきょく遠いところから推測するに過ぎないのさ。


だけど、ちがうよ。

星たちはちゃんと生きていたんだ。

生きて話しもするし、あちこち旅行して楽しんでいるんだ。

すいすい、すいすいと、自分の意志で、

あっち行ったり、こっち行ったりしているよ。


え?どうしてそんな考え方をするようになったのかって?

君はぼくが人のうけ売りでものを言っていると思っているんだね。

ならそれにあわせて、言ってあげよう。


それはね、だれだったか、著名な科学者が言ったらしいこと。

「公理を疑え」ってね。

そのけっか、逆にその人の唱えたことが公理になったとか。


だから、ぼくたちも公理を疑えば、公理をしのぐことが

できるかもしれないじゃない。

あ、笑ったな。そうさ、これは冗談さ。

今の公理はこおり砂糖のようにしっかりものだもんね。


でも、星が夜空を泳ぐというのはほんとうだ。


あれは二十年も前のことだった。

ぼくは、ある人たちとキャンプした。目的はなんだと思う?

夜空の天体観測?ちがうよ。UFO観測だったんだ。


その人たちは、UFOがこの世にいると信じていて、

中にはなんども目撃した人もいたし、撮影した人もいた。

ぼくなんかは、新米もいいとこだった。

「ほんとうに出てくるの」と首傾げながら言っていたんだから。


その夜も、みんな夜空を見上げて待っていた。

一眼レフカメラをつけた三脚立てたり、双眼鏡を持って。

こんなので写るのかな。見えるのかなって思ってた。


みんなねばり強く待ってたよ。

みんな想いを夜空に向けて集中していたみたいだった。

なにしろ、ようやく集まれたせっかくの機会なんだから、

見ずにはおくものかという感じだった。


はじめてから、2時間もたっただろうか。東のまっくらな空に、

オレンジ色の光が、しゅっ、しゅっと飛ぶようになった。

みんな、ああ来た来たと歓声を上げていた。

だけど、僕はまだ疑問で、流星じゃないの、って思ってた。


でもね、みんながあまり熱心なので、

じっくり見てやろうという気になったんだ。

頭を上げて無理な姿勢を続けても集中できないので、

持ってきていたネブクロに入って、

仰向けになって、星の大空と対峙するようにした。


体も暖かくなってここちよかったし、

大きな空は満面の星をたたえて、

ぼくを迎えてくれているかのようだった。


そのうち、ぼくは大宇宙に投げ出されているように思った。

ぼくは宇宙空間に浮かんでいるんだ。

あたり一面にある星ぼしとぼくは、

何ら変わらない存在のように思えた。それは錯覚じゃあない。


だけど、そう長くもおれなかった。みんながまた向こうの空に

飛んだよ、といった歓声を上げていたから、

ぼくの注意もそれたんだ。


それでぼくは、みんなの言うUFOがほんとうなら、

ともだちになってくれるよう祈ってみることにした。

みんな、UFOは精神的にすぐれた人々の乗る宇宙船だから、

宇宙人とは友好的にすべきだと考えていたからね。


それでぼくも、ほんとうのことにちがいないと思って、

テレパシーを送ってみたんだ。

だって、こんなにすがすがしく透き通る宇宙を飛びまわって

いるなんて、精神的にものすごく高尚にちがいないもんね。


心の中から、「ここに来ているUFOさん。

ぼくはまだいたらないところが多いけど、直すようにするから、

ともだちになってくれませんか」と、

星空に向かって思いを込めて語りかけたんだ。


すると、たったの2,3秒後だ。

ぼくの視野のど真ん中、つまり夜空のど真ん中に、

大きな三日月の形をしたオレンジ色の何かが横ぎった。

それは次の瞬間、同じ位置で

あの流星のような飛び方をして見せたんだ。

つまり、超低空飛行してきて、急上昇して去ったという感じだった。


あーあー。とうとう出ちゃったよ。


みんながさわいでいる様子はない。そりゃそうか。

みんなたくさん見えた東のほうを向いているんだから。

真上だよ、真上。

ま、いいさ。これはぼくのためだけに出てくれたんだから。


ぼくはそのまま宇宙に見入ることにした。

そして神秘の宇宙遊泳にひたることにした。

その後どうだったかって?どこで眠ったか忘れたよ。


ただ憶えていること。

翌朝家に帰るのに、車を見たらガス欠寸前だった。

オーマイゴーッド。それでも帰らなくてはならない。

こんなボンゴ車、だれかに牽引してくれとも言えないし。

こんなありさま内緒にするしかなく、やがて現地解散になったんだ。


おりしも日曜日、その頃はオイルショックの直後で、

スタンドが日曜営業してなかったんだ。

一級国道を通るから、どこか開いてるだろうと思ったけれど、

どこも静まりかえって、ロープが引いてある。

家まで100キロはあったから、絶望的だった。


<UFOさん、何とかして、頼みます>となんども祈ったよ。

一生懸命オイルセーブの努力をして走らせた。

すると、家までたどり着いてしまった。まさに奇跡だと思ったよ。


それから一月ほどした頃だった。

夢の中に満天の星空と、

その間をぶつからないようにすいすい

スラロームを描きながら泳ぐ白いUFOが3機編隊で出てきたんだ。

その後も、忘れかけた頃に出てきたよ。数はいつも複数だった。

でも、ぼくは彼らが星の子だとは知らなかった。


あるとき、UFOって何なのだろうと、

あれこれ考えていた矢先の夢に、いつもとちがう夜空が出てきた。

星数はまばら。そのとき右上のほうから、

すうーっと直線的に白い星が真ん中へんにやってくると、

そこにあった星にぶつかった。そのとたん、「ポッ」と音を出すと、

すうーっと右下方向に跳ねかえって行ってしまったんだ。

それは質量保存則の実験を思わせたね。


でも、よく考えてみたら、それはむかしあったテニスの

テレビゲームみたいじゃないか。


それで悟ったよ。UFOは映像の一種なんだって。

それはあのキャンプ場のときも、もしかしたらそうだった

かもしれない。なぜなら、なんの音もしなかったから。


でも、そんな映像を夜空に作ってみせるだれかがいることは

まちがいないことだ。

いや、夜空でなくとも、控え目に見て、

ぼくの網膜に写っただけとしよう。

--だって、夢の中にまでやってくるんだから。

とすれば、 視神経に作用したかも知れないわけだ。--

それでもすごいこととは思わないかい?


少なくとも、高度な科学技術であることはまちがいないだろう。

そうしただれかがきっといるにちがいない。


ところが、とうとう第三種接近遭遇をしてしまったのさ。

そう。とうとう出くわしちまったんだ。

それも、はちあわせだ。はちあわせ。

そのときの様子はこうだ。


ぼくはある晩、眠ろうとしていた。あおむけになって。

だけど眠れない。何もすることがなくて、

早寝しようとしていたものだから。


そんなときにあれこれ考えても、よけいに眠れないだろ。

だから、ただまぶたの裏をじっと見て横たわっていたんだ。

何も考えずに。

うす明かりがまぶたを通してきて、ピンク色のような色。

ただそれだけだった。


どれほどたったか。ふしぎなささやきが聞こえてきた。

おやっ、と思って目を開けようとしたけれど、

いやまてよ、と思いとどまってそのまま声のしている向きを

確かめようとした。


すると、その声は外から聞こえているんじゃなく、

ぼく自身の中からしていたんだ。


何を言ってたかって?

それは会話だった。少なくとも二人いた。

そのうちの一人はぼくだった。こんなこと、びっくりだ。


一人の声が、「ちょうどいい機会です。

私について知ってもらいましょう」と言った。

するとぼくが、「よろしくお願いします」と言っているんだ。


そのとき、ぼくにはその会話の光景が見えてきた。

一人というのは、あのUFOなんだ。

背景は何だったか忘れたけど、白く輝く光の玉が浮かんでるんだ。

そしてもう一人、ぼくというのは、ぼくだから、当然見えやしない。


そのUFOが次にこんなことを言うんだ。


「私はあなたの目の中に入りますから、

しっかり見ていてください」と。


すると、ぼくがこんなこと言い返しているんだ。

「あなたは映像だから、大丈夫ですね」って。

どういうことだと思う?

それはこの次に起きたことでわかる。


いきなり、その光は、ぼくの閉じてるはずの

まぶたの中に飛び込んできたんだ。

「じゃあ、見せてあげるよー」ってね。


そのしゅんかん、視野の真ん中から白くまぶしい光が

放射状に広がって、視野全体が光で包まれてしまったんだ。

ぼくは仰天して、

心の底から、「うわー」って叫んでたよ。

そして気持ちはパニックさ。そして思いっきり、目を開けた。


だけど、目を開けても視界がぜんぶ白い光だったもんだから、

ぼくはてっきり自分の気が狂ったと思って、

頭は振るわ、目はパチクリさせるわ、

正気を取り戻そうとてんやわんやだった。


するとやがて、おおっていた光が

ちぎれちぎれの雲のようになって消えていって、

元のうす暗い部屋の景色に戻ってしまったんだ。


それはいったい何だったのって?

それはぼくが聞きたいくらいだけど、きっとよく言う、

UFOとの第三種接近遭遇というやつじゃなかったのかな。

だけど、それは星の子だったんだ。

それがわかるまでには、ぼくはまだ何も知らなさすぎたのさ。


え?おかしな遭遇のしかただって?

そうだ。普通だったら、僕がUFOの中に

連れ込まれるわけだ。それが逆なんだからね。

ただし、ぼくが連れ込んだんじゃなく、

ぼくの中に勝手に入り込んできたんだ。おかしな具合だよ。


だけど、あんなにいやがったから、きっと気を悪くしただろう。

それ以来、ほんとうにたまにしか、

夢の中に出てこなくなったから。


でもしかたない。あんなに突発的だったから。

だれだって、アポを取ってからにしてもらいたいよ。

そうすれば、たとえ前代未聞のことでも、

少しはましな対処ができたかもしれない。

いやまてよ、あのときは別のぼくがOKを出してたんだ。

あのぼくって、いったいだれだったの?


後からわかったんだけど、

あれは夢の中で意識するぼくだったんだ。

それが現実の世界にまで橋かけしてくるなんて、

思っても見なかったことさ。


え?きもち悪いだって?

そんなことないでしょ。だれだってそうじゃない。

夢を見ているとき、君は現実のことが意識できるかい?

現実問題を夢の中に持ち越すことができるかい?むりでしょ?

つまり、ちがった意識が少なくとも二つはあるのに、

みんなごちゃまぜにしているのさ。


さて、とにかくUFOを、かなりがっかりさせたらしくて、

それ以後めったに、すいすいUFOプラス星空の夢は見なくなった。


でも、彼らはぼくときずなを作っていてくれた。

そしていつでも、ぼくが必要とするときに彼らが援助

するだろうことも、なんとなくわかるんだ。

きっともう一つの意識が知っているんだろうね。

あのときひょっとしたら、ぼくはだめだったけど、

もう一つのぼくは受け入れていたかもしれない。


ぼくとのきずなとは何かって?

それは、記念的な表象としてぼくが記憶しているものだ。

たとえば、あのUFOの形、色、動き方、

そして奇妙な考えのひらめき、そのシンクロ。こうしたものだ。


それがついに、現実世界にやってきたんだよ。

最近のテレビでUFOミステリーものをやっていたけど、

そのとき、イギリスでよく発生するミステリーサークルにUFOが

関与しているしゅんかんの実写ビデオが放映されていたろ?


なに、見ていない?なーんだ。

そうしたものを見ずに、UFOはいるかいないかわからない、

などと言っていたらはじまんないよ。もう。


実はこのときの白い発行体こそが、

ぼくの夢になんども出てきたものなんだ。

形、色、すいすい泳ぐような飛び方も同じだった。

そして彼らが描いた幾何学模様の中に、

ぼくが研究していた模様がそっくりそのまま

あったからおどろきだった。これは、ぼくと彼らの間で

心のパイプがつながっている証拠と思ったね。


でも、彼らはUFOではなく、星の子だったんだ。

それがわかったのは、さらに後になってからだった。


さっきの話の後、またいくつかのことがあったけど、

それはもういいにして、最後の結論の話しをしよう。

なぜ星の子だったかってこともわかるよ。


その後、ぼくは、比較的短い一生を閉じたんだ。

ぼくは、自分の体を抜け出して、大気圏を通り越して、宇宙へ出た。

青い地球が、一望のもとだった。うすい雲を通して、

ぼくが生きた国がうすい海岸線のりんかくを現わしていた。


ああ、この国どうなるんだろ。ああ、この星どうなるんだろ、

と思いにふけっていたときだ。

ふしぎな声が聞こえてきた。

それは心の中で行われているあのときの会話のようだった。


「成るようにしか成らないのさ。もっと気楽に、気楽に」


そのとき、ぼくがまた答えているんだ。

「そうだね。気楽にやるよ」って。


なんだこれは、ぼくが生きていたとき、

どうにもならない成り行きにあせり憤慨するたびに、

思いついて気を静めた言葉じゃないか。


ぼくは、その声のありかを心の中にたどるうち、

むこうのぼくの会話が聞こえる扉をみつけて、そっと開けたんだ。

そのとき、むこうのぼくが会話の声といっしよに、いっきに流れ込んできて

ぼくと結合したのさ。それと同時に、ぼくの心に

たくさんの情報が流れ込んできた。

すると、いままであったことはむろん、自分がいったい何者で、

どこに向かっていこうとしているのかも、悟ることができた。


ぼくは星の子だったんだ。

見上げれば、さっき会話していた仲間たちが、

みんな同じ光の体をして、ぐんじょう色の宇宙空間に浮かんでいた。


そして、みんなすいすいすいすい自由に泳ぎながら、

手を伸ばし、結びあって、一つの大きなネットワークを作っていた。

見えないその先はさらに高次元へと伸びていた。

そして高次元のはてには、創造主がおられることも

ひとりでにわかっていた。


ぼくは、あらゆることを知ることができた。

それによる充足感は、たとえようもないものだった。

この情報ネットワークにあるものすべてが、この恩恵を共有していた。


そう。だれでもみな同じ、星の子だったのさ。








よけい

 

 




    星は暗黒星雲から

    生まれてくるという。

    さしずめ星の子は、

    黒々としたかびの菌糸の

    もつれあうようなところの

    あわさいから、

    くびり出てくる胞子のようなもの。

    それも星だから、

    燃え上がるようにして。


    古事記には、むかしむかし浮かんでいる油のように

    ぷかぷかと暗がりが浮遊していたところに、

    生命力豊かに燃え上がるようにして

    出てきた葦かびのような、

    ウマシアシカビヒコヂの神の登場によって、

    星が作られていくことが書かれている。

    つづいて、星雲である豊雲野の神が

    登場するといった具合。


 
 
 
      --天地のはじめの時、・・・
 
 
 
         ・・次に國若く、浮かべる脂の如くして水母(暗気)なす
 
 
 
         漂へる時に、葦かびのごと萌え騰がる(燃え上がる)物に
 
 
 
         因りて成りませる神の名は、ウマシアシカビヒコヂの神。
 
 
 
         ・・・次に豊雲野の神。・・・・・(古事記・上つ巻)--
 
 
 


    古来日本には、月にまつわる話は多いが、

    星にまつわる話があまり見られない。

    あっても、中国の占星術からくるものだ。

    ところが、古事記には学術的に書かれていたりする。

    たぶん、古代人は直感的に知っていたのだろう。

    もしかすると、もっと大切なことも。


 

 

 

 


この本の内容は以上です。


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