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【商業出版のお知らせ】

 今年の七月、『ゆりにん レズビアンカップル 妊活奮闘記』(江川広実 藤間紫苑 ぶんか社)を刊行しました!

 レズビアンカップルの妊活から不妊治療のハウツーまで、詳しいんだけど読みやすいコミックエッセイです。

 書店やアマゾンなどネット書店でお求めください。

一〇八〇円(税込み)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【本日の新刊 同人誌】

 文芸ジャンルの方、お久しぶりです。昔、少女帝国で小説を発表していた藤間紫苑です。『伊藤君と円先輩』(メディアックス ブログ連載→商業誌 BL)、『ゆりにん』(同人誌→商業誌百合漫画)とジャンルを移っていたのですが、文芸に戻って来ました。新刊は新宿・歌舞伎町で少女を拾った祭の観察日記(小説)です。

頒価三〇〇円

『新宿 少女観察日記』抜粋

「ハッピィバースデー、ゆきちゃーん、メリークリースマース、ゆきちゃーん」

 暗い部屋の中にふわりと光るサンタ型のローソクに照らされた少女・ゆきの肌は妙に色っぽく、白かった。

 ゆきという名は雪から取ったのかもしれないとその時、私は思った。

「さぁ、消して」

 少女は口を窄め、ふーっとローソクを消した。

 部屋が真っ暗になる。

 パチパチパチというゆきの無邪気な拍手が部屋に鳴り響く。

 そんなに私を信用してもいいの?

 そう、私は心の中で呟く。

 焦がれるような気持ちをこの幼い少女に抱きながら。

 

 ☆

「お先に失礼します」

 私が会社の予定表に『クライアントと会議。直帰』と書いていると、同僚が話しかけてきた。

「あ、四季さん、直帰? 今日飲み会があるけど、どうする?」

「んー、仕事片付いたら考えるわ。場所はいつものとこ?」

「そう。んふふー、今日はクリスマスだもんね。誰かと待ち合わせ?」

「いたらいいね、その誰か」

「暇だったら飲み会に来てね。じゃあ」

「じゃあ」

 私は鞄をぎゅっと肩に掛け、オフィスを出た。

 ビルを一歩出ると冷たい風が頬にあたる。今年もホワイトクリスマスにはならなかったな、と考える。

 誰かと待ち合わせか。誰もいないよね、そんな人。それはきっと私がレズビアンだからじゃない。仕事人間だからだ。

 帰りに新宿二丁目へ寄ってバーにでも行こうか。いい人との出会いなんかなくても、バーのママと話せる。

 三時間後。クライアントとの年内最後の打ち合わせを終えてシティホテルの喫茶店を出る。

 クリスマス当日ということもあり、ホテルには次から次へ客室に人が入っていった。

 そんな日も私は仕事。もちろんクライアントとはクリスマスも仕事なんてねーと二人で苦笑い。でも彼女はいつもより綺麗に着飾っていた。この後、誰かと会うのだろう。プライベートで。

 ふと映画が観たくなってトーホーシネマズ新宿へと向かう。こんな日は満席だろう。

 コンビニでホットゆずドリンクを買っていこうか……と思っていた時、私は少女に出会った。

 少女はコンビニの前で両足を投げ出し、地べたにぼーっと座っていた。

 少し服が汚れている。子供ホームレスだろうか。

 私は少女に声をかけようか躊躇した。その時、ふと彼女が顔を上げる。

 私の靴から膝から腰から胸へと彼女が視線を動かし、目が合う。

 表情がない。真っ暗な大きな瞳。

 なのにこの少女は、なんて愛らしいのだろう。

「どうしたの? 寒くない?」

 コートも羽織らず、少女はコンビニの前にいたのだ。この真冬の北風が冷たく吹く夜に。

「……さむい……?」

 少女は寒いのか寒くないのか、わからないようだった。

「良かったらうちに来ない? 夕食を一緒に食べよう」

 私は膝を曲げ、少女と同じ目線になり、彼女へ手を差し伸べた。

 一瞬少女は考え、それからゆっくりと私に手を伸ばしてきた。

 私は少女のがさがさになった手を取る。

「決まり。行こう」

 

 クリスマスの夜に私は少女を拾った。

 

 

 

【チラシ用 オマケ百合エッセイ】

 今年は日本のセクシャルマイノリティーにとって激動の一年でしたね! 渋谷区の男女平等条例はセクマイ業界にも衝撃的な内容でした。四月に行なわれた東京レインボープライドも凄く盛り上がりました。(来年 代々木公園 2016/05/08) 私はビアチカさん、コンチャスさんと一緒に出店し、その時はまだ同人誌だった『ゆりにん』を頒布していました。海外に比べてまだまだセクマイ解放運動が遅れている日本ですが、まずは第一歩という感じでしょうか。

 私は自分の体験を元に出したエッセイコミック同人誌が単行本化された年でもありました。『人形の筺~愛のディティール~』『伊藤君と円先輩』に続く、三作目の商業刊行物になります。『人形の筺』が出た2000年はまだサークル「少女帝国」で同人誌参加している時でした。

 今は個人活動に移り、「藤間紫苑.com(フジマシオン ドットコム)」で参加しています。

 本日持ってきた同人誌は今年五月に発行した『路上の百合』と本日新刊の『新宿 少女観察日記』です。

 『路上の百合』は短髪レズビアン達の恋愛を描いた短篇小説集です。短髪縛りという感じでしょうか。セレブと貧困層の恋愛。貧困層の恋愛や生活を描くのは私のテーマでもあります。

 『新宿 少女観察日記』は会社員の祭が仕事帰りに少女を拾う話です。ほぼ毎日ネット連載しており、私のサイトhttp://www.fujimashion.com に連載しています。アップデートした時はツイッターの@fujima77 に告知しますので、フォローをよろしくお願いします。

 セクマイはお金持ちと思われがちですが、結構皆貧乏です。カムアウトせずクローゼットのまま生きて、仕事に邁進する人もいますけど、多くはクローゼットだから、カムアウトしたから、メンタルを病み、体調を崩し、親元から離れ、または絶縁し、財産の継承をせず生きています。

 我が家はカノジョが仕事に邁進してますが、働き過ぎで体がボロボロです。私は家で主婦しながら原稿を書いてますが、体調はボロボロです。いつか健康になるのを夢見ながら、毎日原稿を書いています。

 今、ネットで連載している小説は、昔書いた「しらぎの娘」にちょっと似ています。しらぎの娘は新宿公園がホームレスの城みたいになっていて、そこからはぐれた娘を主人公が拾うがホテルに宿泊拒否される……という始まり方でした。あの作品を書いてから十年以上経って、やっと女性、また子供の貧困がメディアにクローズアップされるようになりました。ずーっと貧困家庭はあったのに長い間「国民総中流」という言葉で黙殺されていましたね。

 先日、ネットを読んでいたら「国民総下流」という言葉が書かれていて、あぁ、そういう時代になったんだなぁと思いました。今後どうなっていくんでしょうね。

 この国は。そして私は。           終わり

『路上の百合』一〇〇〇円 本文一部抜粋

 

  新宿二丁目。

 

 俺は裏路地で一人、立っていた。

 別に客を取るわけでもなく、クラブへ行くわけでもない。ましてやバーに入ろうとしているわけじゃない。

 生活ギリギリの給料でこの街は高すぎる。

 早く家へ帰ろうと思いつつ、週末だということもあり、足が自然に二丁目へと向かってしまった。

 年配のレズビアンカップルが目の前を通る。バーへ行くのか、クラブに行くのか。二人は腕を組んで楽しそうに笑っていた。

 俺もあんな風にパートナーが出来るのだろうか。

 俺もあんな風に歳を重ねることが出来るのだろうか。

 そんな考えが頭の中に渦巻く。

 渋谷区で『男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例』が可決するかしないかが話題になっていて……。

 で、結局あれってどうなったんだろう。

 分からない。

 セクシャルマイノリティーへの差別が無くなるのだろうか。でも俺は今まで誰にも自分のセクシャリティーを話した事がない。

 お金を持っていそうな貴婦人から、食事を奢って貰ったり、お小遣いを貰ったり……これってワリキリ? いや、そうじゃなくって……。そうじゃなくって……。

 俺はふぅ……と溜息を吐いた。

 学生の頃は良かった。なんて思わない。家は貧しくて、俺は奨学金を貰っていたのだが、その借金が未だに重い。

 女からお小遣いを貰うより、男と寝た方がもっとワリキレるのかもしれない。

 男と寝たらレズビアンじゃなくて、バイセクシャル? いや、心は高くレズビアン。

 だけど、俺は誰にもセクシャリティーを言えない。

「ねぇ、君ってトランス?」だとか「お前は男だろ。だって一人称が俺だから」だとか女達に言われた。別に俺は男でもトランスでもない。そう考えると男だとか女だとかトランスだとか……とか、あまり俺の人生には関係ない。

 毎日考えるのは金のコトだけだ。

「お金なんていくらあっても足りないよ」と澄まし顔で言うのは金持ちの台詞で、俺に必要なのは毎日の食費と生活費。

 そうだ。生活費を稼いでは知人を裏切ってきた。メールを作っては人を騙し、メールを変えては人を騙し……。

 そうしないと食っていけない。そうしないと生きていけない。

 俺の人生はまるで万華鏡の様にくるくると変わる。六ヶ月毎に変わるメアドと、人間関係。

 でも最初、騙す気はなかったんだ。その度毎に、メールを変える毎にいつも真っ当な人間になりたいと、この金で真っ当な人生を歩むのだと、俺は誓い、そして裏切る。

 もう何度人を裏切ってきたのか忘れてしまった。

 だって始まりは小学生だぜ?

 そう、公園で俺は××××××。

 公園で俺は?

 俺に何が起きたんだっけ?

 …………まぁ、いい。

 忘れっぽいのはいつものことだ。

(同人誌に続く)

 


この本の内容は以上です。


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