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こぴかな時々あー++

女装烈佳女装理樹を佳奈多が愛でるお話

 

 

「理樹君、脱いで」

 

 小毬さんが僕に僕に服を脱げと要求してくる。僕は首を振った。そんな事は無駄だということはわかっている。周りは女の子達に取り囲まれている。後ろは壁。ここは敷地の片隅にある倉庫。殆ど人なんか通らないから、助けを呼んで無駄だということはわかっている。それでも僕は首を振った。

 

「仕方ないデスネ。今日も無理矢理脱がせるしか無いデスカ」

「本当はそれを期待しているのでは無いのか?」

「イヤア」

 

 そう言いながら、葉留佳さんと来ヶ谷さんが僕の両腕を掴む。僕は腕に力を入れて抵抗したけど、それが無駄だということもわかっていた。二人がかりじゃ僕程度の力ではどうしようも無い。

 クドが僕の制服のボタンを外し出す。小毬さんは、しゃがみ込んでズボンのベルトに手をかけていた。

 

「やめて…下はやめて…!」

「ふえ? でもそうしないとスカートがはけないよ?」

「だからスカートはかないから!」

「それはないな」

 

 ずっと外を見張っていた鈴が、僕の方に振り返って言い放った。それに呼応するかのように、西園さんが付け加える。

 

「直枝さんがちゃんと自分で着替えてくれればこんな事しなくてもいいんですよ?」

「だから着替えたくないんだってば!」

「だったら私らで着替えさせるしか無いじゃないデスカ」

「だな」

「だからそういう意味じゃ無くて!」

 

 一体何でこんな事になったんだろう。そう、女子寮の部屋の中に入るとこういう事をされるというのはもうわかっていた。だから部屋にはもう行かないようにしていた。そうしたら、家具部のストライキで倉庫が荒れてるから手伝って欲しいとか何とかで呼び出されて、来てみたら女の子達に取り囲まれて。

 何で僕はこんなに馬鹿なんだろう。

 

「理樹君ったら。またこんな、男の子-+みたいなパンツはいて…」

 

 ズボンを下ろした小毬さんが溜息交じりに言う。

 

「僕は男の子だよ!」

「娘と書いて『こ』と読むあれデスヨネ」

「違うよ!」

「次からは下着も用意した方がいいでしょうか?」

「だな」

「下着はかないから!」

「ほほう」

「違う、女物の下着ははかないから…」

「ふうん」

「まあいいや。今日はさっさとスカートはかせちゃうね。足上げて」

 

 僕は無駄な抵抗はせずに、大人しく足を上げた。僕のズボンはスカートと交換された。最近ではもう来ヶ谷さんの制服じゃ無くて、僕専用の服ということになってるらしい。

 

「スカートまで穿いちゃったんだから、上着で抵抗する理由は無いヨネ?」

「大人しくすると約束すれば腕を放してやってもいいぞ?」

 

 僕は無言で首を縦に振った。クドが胸襟をつかんで開き、肩から外して腕をすり抜けさせて、上着を脱がせてしまった。

 

「私も服脱がせる役やりたいナア」

「ならYシャツは葉留佳君が脱がせるといい」

「リキ、抵抗したりしないですよね?」

 

 僕は涙目で頷いた。葉留佳さんは嬉々として僕のYシャツのボタンを外していった。葉留佳さんがはだけた僕の胸に顔を近づけてくる。

 

「ふーっ」

「や、やめてよ葉留佳さん!」

「そうだぞ葉留佳君。それはルール違反だ」

「みんなやりたいの我慢してるんです!」

「やはは、ちょっと調子乗りすぎちゃいましたネ」

 

 そう言って葉留佳さんはYシャツを全部脱がせた。そして代わりに僕には女子用のブラウスが与えられた。

 

「リボンも付けようね」

「上着くらいは自分で着れるか? 着せてやってもいいが」

「頭にこれを付けましょう」

 

 胸のリボンと、女子用の上着と、頭にもリボンと。

 

「はい、鏡見て。かわいいよ」

「この頭の触覚みたいなリボンは何? 最近よくこれ付けるけど」

「うん、よくわからないんだけど」

「要望が多いのデスヨ」

「要望?」

「三枝さん」

「あ」

 

 西園さんに窘められて、葉留佳さんが気まずそうに顔をそむける。僕は葉留佳さんの方をじっと見ていた。それをフォローするように、来ヶ谷さんが口を開いた。

 

「知らない方がいいことだと思って黙っていたのだが、それでも知りたいか?」

「僕には知る権利があると思います」

「最近のデジカメはAndroidOS搭載で、Wifi経由ですぐに画像が転送できる。と、言えばわかるか?」

「共有、ともいいますね。いえ、画面にそう書いてあるだけです」

「シェアリングの時代ですからねえ」

「そんな!」

「ですが、ここで大切なことをお知らせしないといけません。その最新鋭デジカメを、部屋に忘れてきてしまいました」

「駄目じゃ無いか」

「使い方がいまいちわからないので、夕べ練習していて。そのまま机の上に置き忘れてしまったようです」

「なら取りに行きましょう」

「ついでに使い方をもう一度確認したいのですが」

「なら私と葉留佳さんも行きましょう」

「デスネ。Wifiの設定もついでに確認しておきまショウ」

 

 そう言って、西園さんとクドと葉留佳さんは倉庫を出て行った。まだ、来ヶ谷さんと小毬さんが残っている。入口には鈴。逃げられそうも無い。

 

「あの、僕、トイレに」

「うむ。行ってくるといい」

「うん。…え、いいの?」

「我慢させるプレイまでするつもりは無い。君はしたいのか?」

「そうじゃなくて。そのまま僕が逃げ出すとか、そういう事は考えないの?」

「その姿で逃げ出すだけの覚悟が君にはあるのかね?」

 

 僕は改めて自分が今来ている服を確認した。そんな覚悟は無かった。

 

「…すぐに戻って来ます」

「特別棟のトイレが近いぞ」

「うん、ありがとう…」

 

 

 

 授業が無いからか、特別棟には人通りは無かった。よかった、これなら誰にも見つからずにトイレに行ける。

 トイレの前にある男女区分のマークを見て、一瞬立ち止まって考え込む。周りを確認する。誰もいない。そして僕は男。なら迷うことは無い。男子トイレに入るべき。そう思って一歩足を踏み出したとき、後ろから声をかけられた。

 

「そっちは男子トイレよ」

 

 驚いて振り向くと、腰に片手を当てた二木さんが立っていた。

 

「えっ!? さっきまで誰もいなかったのに」

「埋伏は不埒な輩を捕らえる為の必須スキルよ」

「そんな、不埒な輩じゃないよ!」

「じゃあ何故男子トイレに入ろうとしていたの?」

「それは…」

 

 僕は口ごもって、顔を二木さんから背けた。言えるはずがない。僕は女装させられてるけど、本当は男です、だなんて。

 

「ふむ…」

 

 目線をずらして二木さんの方を見ると、二木さんは顎に手を当てて何かを考えていた。

 

「もしかして…女子トイレで何かされたのかしら」

「え? い、いやその」

 

 女子トイレじゃない場所でならされてるけど。

 

「まさか…いじめ!?」

「あ、いや、そういうわけじゃ」

「そういう事があるのなら言って。きちんと対処するわ」

「ここでそういうのは無いよ…」

「…そう? 前の学校での話かしら」

「…。」

「ごめんなさい。言いたくないことを訊いてしまったようね」

「ううん、こちらこそごめんなさい」

 

 そう言って僕は逃げ込むようにトイレに入ろうとした。その手を二木さんが掴んだ。

 

「だからといって男子トイレに入っていいという法は無いわ。こっちに来なさい」

 

 僕は二木さんに手を引かれて、そのまま連れて行かれてしまった。

 

 

 

 着たくなかったはずの女子寮に、僕は何故か連れてこられている。しかも、どういうわけか二木さんに。

 二木さんが扉を2回ノックする。

 

「クドリャフカ、いるかしら?」

 

 応答は無かった。たぶん西園さんの部屋に行っているからだ。

 

「いないようね。丁度いいわ」

 

 そう言って二木さんは部屋の扉を開けた。

 

「ここ、私の部屋だから。今ルームメイトいないから、ここのトイレ使っていいわよ」

「うん、ありがとう…」

 

 僕は大人しく二木さんの厚意に甘えることにした。

 

 

 用を済ませてトイレを出ると、二木さんに声をかけられた。

 

「こっちにいらっしゃい。お茶入れてあげるわ」

「え? でも」

「何か急ぎの用事でもあるの?」

「いや、無いけど」

「ならいいでしょう。少し話を聞きたいの」

 

 どういう事だろう。少し警戒しながら、部屋の奥に入っていった。

 

「そこ座って」

 

 促されるままベッドの上に腰掛けた。二木さんがお盆に載せたお茶と茶菓子を持ってくる。

 

「まだ名乗ってなかったわね。私は二木佳奈多。一応風紀委員会に所属しているけど、肩書きは、まあ何でもいいわ」

「う、うん」

「あなたは?」

「え、僕!?」

 

 思わず僕と言ってしまった。二木さんが少し怪訝そうな顔をする。

 

「あ、いや、私は…」

「ごめんなさい、別に普段通りの言い方でいいのよ」

「う、うん。その、僕は…」

 

 なんて名乗ろう。

 

「えっと…美樹さやか」

「どこかで聞いた名前の気がするのよね…」

「うん、よくそう言われるよ…」

「そう。で、美樹さんはその、この学校の生徒?」

「え?」

「顔に見覚えはあるのよ。でもどうしても思い当たる子がいない。一通り把握してはいるつもりだったんだけど」

「あ、そうか。ええと、提携校から見学に来ていて、それでこの学校の制服も着てみないかと言われて」

「そういうことね。私もあちらには何回か行ったことあるから、その時にでも見たのかしら」

「そうかもしれないね」

 

 よかった、何とか切り抜けられそうだ

 

「お茶。冷めないうちにどうぞ」

「あ、うん」

「もしかして猫舌だった?」

「ううん、大丈夫」

 

 僕は湯飲みを取って、一口口に含んだ。鼻の奥にお茶の香りが拡がる。いい茶葉を使っているなあ、二木さんの趣味なのか、クドの趣味なのか。そう思いながら横目で二木さんを見る。二木さんも湯飲みを取ってお茶をすすっていた。飲み方が綺麗だ。育ちがいい所為だろうか。普段あまり意識しないけど、この人ってお嬢様なんだよなあ。そう思いながら、自然と目線が全身に移っていた。特に考えも無しに、目線が胸元にいっていた。本当に綺麗だなあ。

 

「なあに? 胸が気になるの?」

 

 そう言われてはっとした。慌てて顔を背ける。自分でも顔が熱くなるのがわかる。

 

「別に気にしなくていいのよ。男の子でもあるまいし」

 

 いや、男の子だけど。

 

「男の子に見られるのはやっぱり嫌なんだ…」

「嫌というより…見るだけ見て逃げられるのが嫌、かしらね」

「そうなんだ」

「どうして逃げたりするのかしら」

「それは…何というか、罪悪感があるから、じゃないかな」

「罪悪感、ねえ。だったら最初から見なきゃいいのに」

「そう思うからこその罪悪感だと思うよ」

「めんどくさいわねえ」

「男の子はめんどくさいものなのです」

「だったら、有無を言わさず押し倒すしかないじゃない」

「捨てたりしないならそれもいいと思うよ」

「そうなの? まあ、捨てるつもりなんてはなから無いんだけどね」

「あはは…」

 

 ふと思った。二木さん、何の話してるんだろう。

 

「あなたはどうなの? 何か随分と男の子のことに詳しそうだけど」

「え? う、うん、男の友達が多いから」

「そうなの。いいわね」

「いいんだ」

「いいに決まってるでしょう。私なんて、家が厳しかったから男の子と遊んだ事なんて無いし…どう接していいかすらわからない」

「そうなんだ…」

 

 そうか、僕って恵まれた立場にいるんだなあ。

 

 いや、待て。今のおかしい。僕はそもそも男の子なんだから。だから恭介達と一緒にいるのなんて、むしろ普通じゃ無いか。

 そういう立場にいるのは、むしろ鈴になるのか。そうか、鈴ってそういう立ち位置なんだ。クラスの女子達が鈴を見るときの、何とも言えない目線を思い出す。

 

 佳奈多さんがずずっとお茶をすする。

 

「あなたはどうなのかしら?」

「え?」

「見たところ、ええ、私が見た限りだと、とっても可愛いと思うのだけど。男の子から見てあなたはどうなのかな、と思って」

「え? さ、さあ。どうなんだろう」

 

 恭介も謙吾も真人も僕を好きだと言ってくれるけど、それはあくまで男の友達としてだし。たぶん。

 

「あくまで友達かな、今のところ」

「そうなの…」

 

 はぁ、と佳奈多さんはため息をついた。

 

「なかなかうまく行かないものね」

「友達でも十分だよ」

「友達にするらなかなかなれないんだけどね、私は」

「あ、ごめん…」

「いいのよ。私がふがいないのが悪いの」

 

 二木さんは天井を見上げた。

 

「そこまで気にするって、誰か気になる人でもいるの?」

「えっ!?」

 

 佳奈多さんは動揺を露わにして、持っていた湯飲みを落としそうになった。

 

「ふぅ、あぶないあぶない」

「そこまで動揺しなくても」

「だってあなたが変な事訊くから」

「変じゃないよ。今までの話の流れじゃない」

「まあ、そうなんだけどね」

「で、誰なの?」

「まだ訊くの?」

「うん」

 

 自分でも何故そんなに知りたがっているのかわからなかった。

 

「ここの学校の人よ…だから言ってもあなたにはわからないわ」

「知ってる人かもしれないよ?」

「だったら尚更言いたくない」

「どうして」

「どうしても、よ」

「強情だなあ」

「ええ強情よ」

「知れば協力できるかもしれないのに」

「協力って…」

 

 二木さんは口ごもった。そしてしばらくして、何か言おうと口を開きかけたとき、扉が開く音がした。

 

「かなたさん、いますか? ちょっとWifiルータ取りに戻りました。あ、いま…す…ね」

 

 部屋に入ってきたクドが、ベッドに並んで座る僕達二人を見て固まっていた。

 

 重い時間が暫し流れたあと、クドが口を開いた。

 

「かなたさんなにしてるですか?」

「何って…二人でお茶してるだけよ? ああ、この人は提携校から来た、美樹さん」

「いいえその人は美樹さんではありません。リキです」

「え?」

「いいえその人は美樹さんではありません。リキです」

「いや、繰り返せという意味では無く。…え? りき、って。直枝理樹?」

「直枝理樹以外に誰かリキという人がいるのでしょうか」

 

 二木さんはばっとこっちに向き直り、両肩をつかんで僕の顔をまじまじと確認するように顔を近づけてきた。僕の心臓はいろんな意味で爆発しそうだった。それを見たクドは泣きながら部屋の外に駆け出していってしまった。

 

「うわぁ~ん! はるかさ~ん、かなたさんがリキを部屋に連れ込んでます!」

「なにぃ!?」

 

 廊下から聞こえてくる声をよそに、佳奈多さんは僕を詰問していた。

 

「ちょっと、どういう事よ」

「ごめんなさい…」

「理由を訊いてるんだけど」

「みんなが…クドとか小毬さんとか…無理矢理…無理矢理僕を女装させて…」

「あの子達ったら…」

 

 佳奈多さんがきっと外の方を見ると同時に、怒りの足音と共に葉留佳さんが部屋に入ってきた。

 

「このエロ姉! 理樹君に何をしたぁっ!?」

「はぁ!? まだいやらしいことはしてないわよ!」

「まだ? まだって言ったよね今! これからするつもりだったの!?」

「言葉尻を捉えないで! あなた達こそ直枝に何をしてるの!」

「えっ、それは…いやでもお姉ちゃんみたいにいやらしい事なんてしてない!」

「はるかはしてたけどな」

 

 いつの間にか入ってきていた鈴が後ろから突っ込みを入れていた。

 

「え、ちょ、ま、鈴ちゃん!」

「なんということなの…。わかったわ、直枝は私が保護します。あなた達には渡さない」

 

 そう言って佳奈多さんは僕の肩に手をかけて引き寄せ、守るように頭を抱きかかえてきた。そこに入ってきた西園さんが、持っていたデジカメで写真を一枚、僕と佳奈多さんの姿を撮った。

 

「えっ」

「…なるほど。こうやって撮るのですね」

「そうして撮った写真からここの共有ボタンを押して、Twitterを選択」

「なるほどそうやってコメントが書き込めるのですね。【速報】女装した直枝さん二木さんの自室で逢い引き中、と」

「待ちなさい!」

「ちょっと待って!」

「送信してしまいました」

 

 僕を抱きかかえる佳奈多さんの腕から力が抜け落ちるのがわかった。僕も絶望しそうだった。

 

「お、みおのツイートが来たぞ」

「じゃあねえ。この、矢印が入り組んだボタンを押すの」

「それってリツイートボタンだよね!?」

「やめなさい!」

「押してしまった…」

 

 佳奈多さんはもう真正面を見る気力も無いようだった。それでも、何かの義務感なのだろうか、僕の頭を撫でながら大丈夫よ、大丈夫よ、あなたのことは守ってあげるから、と呟いていた。

 僕はいろんな意味で情けなくなった。

 

 

 

 その後、僕はそのまま二木さんの見ている前でみんなに陵辱されたのだった。

 

「お姉ちゃんがこの部屋に連れ込んだんだから、問題無いよねえ?」

「連れ込んだなんて言い方しないで」

「かなちゃんもやろう? 楽しいよ」

 

 二木さんは僕の方をちらと見た。僕は救いを求めるように二木さんを見た。

 

「そんな縋るような目で見られても…」

「守ってくれるって言ったのに…」

「こうするのが一番いいと思ったのよ」

「そんな…」

「まあまあ。二木女史だって本当は一緒にやりたくて仕方が無いのだ。あまり残酷なことを言うな」

「そんな…」

「はい、もう一枚」

 

 ぱしゃり。

 

「こうしてみんなで撮れば、佳奈多さんの疑いは晴れますよねえ」

「僕にかかった疑いは?」

「うたがいのよちなどないな」

「そんな…!」

 

 僕は涙目になりながら女装した姿でみんなとのツーショット写真を強要され続けたのだった。

 

 

 

 その後、鈴のリツイートを見た恭介が凄まじい形相で僕を助けに突撃してきてくれたらしいんだけど、入口で女子寮自主警備隊に阻止されて寮長さんの部屋に連れて行かれて、何かされたらしい。

 

 

 

 おしまいにしてよ。

 

 

 

 

 


こぴかな時々あー++

ヤマもオチもイミもなく、佳奈多が理樹を押し倒すSS

 

 今日は佳奈多さんとデートだ。佳奈多さんが人に見られるのは恥ずかしいって言うから、出来るだけ人目に付かないコースを選んだ。佳奈多さんはいつもの地味な私服だ。デート前に「制服と私服どっちがいい?」と訊いてくるから私服がいいんじゃないかなと答えたら、あなたは制服が好きだと思ったのにとちょっと不満そうだった。…いや、確かに佳奈多さんの制服姿は凛としていて素敵だけどさ。

 目立たないということで、目的地までの経路は住宅街の裏道を通ることにした。佳奈多さんは白い目で見てため息付いたけど、それ以上は何も言わなかったからよしとしよう。

 結構狭い道だし、溝のふたもない。僕は佳奈多さんの手を取って、佳奈多さんが落ちないように気を使いながら狭い道を歩いた。佳奈多さんのこと大事にしてるアピールをするチャンスだ。僕だってそれなりの計算はある。

 

「別に、ここまでしてくれなくたって…。転んだりしないわよ」

「うん、でも万一ということもあるし」

「そうね。あなたが転ぶといけないから、手を握っていてあげるわ」

「はは、そういうことでいいや」

 

 しばらく歩くと、佳奈多さんがふと立ち止まって片足をとんとんと地面に突いた。もう疲れたのだろうか?

 

「大丈夫?」

 

 そう訊くと、大丈夫よと答えて、佳奈多さんは足を戻した。そしてそのまま、その足を僕の前の方に移動させた。

 

 …どういうつもりだろう?

 

 よくわからなかったけど、たぶん足の運動か何かだろう。そう思ってそのまま跨いで歩き出した。佳奈多さんは小さくはぁとため息を付いて、僕に手を引かれて歩き出した。…何か不満だったんだろうか。少し気になった。

 

 しばらく歩くと、佳奈多さんが今度はいきなり足を突き出してきた。直前で気づいた僕は、はたと立ち止まった。

 一体どういうつもりなんだろう。僕は振り返って佳奈多さんの顔を見た。佳奈多さんなぜか目を逸らす。恥ずかしそうに目を合わせようとしない。僕は目線を足下に戻した。佳奈多さんの足はまだ僕の足の前にある。つま先が僕のすねに当たりそうだ。

 

 …これって。まさか。佳奈多さん、僕のこと転ばせようとしてる…!?

 

 いやいやいや。まさか。まさか。だって、あの佳奈多さんだよ!? 真面目一貫、世間知らず。ちょっぴりあぶないお姉ちゃんとも言われてるけど。でも僕と付き合うようになってからは葉留佳さんに変な事しなくなったって聞くし。

 …葉留佳さんの代わりに僕に変な事しようとしてる!?

 いや考えすぎだ。いやでも。いやいやいや葉留佳さんじゃ無いんだし。いやでも目の前に佳奈多さんの足あるし。

 

 気づかなかったことにしよう。そう決めて佳奈多さんの足を跨いだ。後ろから、はぁ、とがっかりしたような溜息が聞こえる。きっと佳奈多さん疲れてるんだ。早く目的地に着いて、少し休ませてあげよう。

 

 僕は佳奈多さんの手を引いて、少し早足で歩きだした。慣れない道だし狭くて歩きづらい。ちょっと蹴躓いてしまった。そう、ほんのちょっと蹴躓いただけだった。はずだった。

 

「大丈夫、直枝!?」

 

 そう叫んだ佳奈多さんは僕の手をぐいと引っ張った。片手だから体が佳奈多さんの方に反り返ってしまう。佳奈多さんの顔が見える。佳奈多さんってやっぱりきれいだなあ、なんて馬鹿な事を考えている間に、佳奈多さんはもう片方の腕で僕を抱きかかえてきた。そして掴んでいた手は放されてしまう。僕は抱きかかえられたまま、体重を佳奈多さんに預けるしか無くなった。

 佳奈多さんは腕をゆっくりと降ろしていったので、僕の体はだんだん地面に近づいていった。

 

「あの、佳奈多さん? なんか押し倒されてるんだけど…」

「大丈夫。今は誰も見ていないから」

 

 

 

 

 

 目的地の公園に着いた。少し休もう。いや違う、佳奈多さんを休ませるんだった。

 

「座って待ってて。飲み物買ってくるよ」

「自分で行けるわよ」

「僕が行くよ。佳奈多さん疲れてるんだから」

「そこまで疲れてないわよ」

「佳奈多さんいつも忙しいんだし。ここに座ってて、ね?」

 

 佳奈多さんをベンチに座らせて、僕は飲み物を買いに行った。佳奈多さんは無糖のお茶がいいかな。緑茶と紅茶はどっちがいいだろう。両方買って好きな方選んで貰えばいいか。

 

 佳奈多さんはベンチで大人しく待っていてくれた。そりゃそうだよ、佳奈多さん落ち着いた人なんだから。僕なんかよりずっと大人なんだから。

 ベンチは佳奈多さんの向こう側が空いていたので、僕は佳奈多さんの前を通ってそっち側に座ろうと思った。通り過ぎるときに佳奈多さんが足を突き出してきた。不意だったので、止まることもできずそのまま引っかかってよろけてしまった。

 まただよ、と思ってる間に、佳奈多さんが僕の体を抱きかかえてきた。

 

「地面は危ないわ、ベンチで寝てなさい」

 

 そう言いながら佳奈多さんは、そのまま僕をベンチに引き込んで押し倒してきた。

 

「あの、佳奈多さん…」

「大丈夫。今は誰も見ていないから」

 

 

 

 

 

 お茶を飲ませたら佳奈多さんは落ち着いた。というか僕も落ち着こう。

 ベンチに座ってお茶の缶を持ちながら、目線の先にある池と林を二人で眺めている。いいなあ、こういう時間。

 

「ねえ。ボートに乗らない?」

 

 佳奈多さんが提案してきた。

 

「うん、いいね」

 

 二人で貸しボートに乗った。

 

「直枝、漕げるの?」

「大丈夫だよこれくらい」

 

 そう言って僕はボートを漕ぎだした。佳奈多さんはじっと僕を見ている。恥ずかしいのといいとこ見せようという気持ちが相まって、僕は力を入れてボートを漕いだ。

 

「直枝、倒れそうよ」

「え? いや、漕いでる反動だよ」

「でも危ないわ。私の手に掴まって」

「大丈夫だって」

「いいから。言うこと聞きなさい」

 

 そう言って佳奈多さんは僕ににじり寄ってきた。そして僕の体を引き戻すのでは無く、逆に押し倒してきた。いやいやいや佳奈多さん、ここ、池の上だし。

 

「この方が安定するし安全でしょう?」

「僕の心が不安定だよ…」

「大丈夫。今は誰も見ていないから」

 

 

 

 

 

 帰り道。なんかもう疲れたのでいつもの普通の道を通って帰ることにした。大きな道だからか、佳奈多さんは手を繋いでくれない。まあ、僕も恥ずかしいけど。

 

「直枝、車に気をつけなさい」

「うん。佳奈多さんも気をつけて」

「私は内側にいるからいいの。それともあなたが内側に来る?」

「僕が外側で大丈夫だよ」

「そう言ってるうちに車来たじゃ無いの、ほら」

 

 そう言って佳奈多さんは僕の体をぐいと引き寄せた。そして車が通り過ぎたらそのまま押し倒してきた。

 

「佳奈多さん、さすがにこんなところで…」

「大丈夫。今は誰も見ていないから」

 

 

 でも僕には確かに見えていた。押し倒されてる最中に視界に映った、クドや葉留佳さん達の姿が。

 

 

 

 

「わふ。佳奈多さんったら…」

「マッタクあの姉、人が見てないとほんとやりたい放題デスネ!」

「見なかったことにしよう。そうしてあげよう、ね?」

 

 

 

 

 


こぴかな時々あー++

保健室

 

「佳奈多さん、やめて…!」

 

 僕たち二人以外誰もいない保健室。ベッドの上で僕は佳奈多さんに押し倒されていた。腕に力を入れてはねのけようとする。でも佳奈多さんの押さえつける力の方が強かった。

「随分鍛えたみたいね。でもお生憎様…私があの家から求められていたのはこんな程度の力じゃないの。私はずっとそれに応えてきた。体も。頭も。心ですら、求められれば差し出してきた。従わなければ私たち姉妹は生き残れない、それ程までに大きな力。逆らいたいなら並大抵でない力が必要。今私が必要としているのは、そういう力。──あなたが逆らえるようなものじゃない」

 佳奈多さんは僕を押さえつけながら、耳元でそんな脅迫めいた言葉を言い続けた。僕は逆らえなかった。逆らってはいけないんじゃないか、むしろそんな風にすら思えた。

 僕の力が弱まったことを感じ取った佳奈多さんは、少しだけ優しい表情になって、後ろに手を伸ばした。僕と佳奈多さんの服が少しだけ脱がされ。佳奈多さんは僕を犯しはじめた。

 

 抵抗しないようにしよう。余計な事は何も考えないようにしよう。そう思って心を空っぽにした。僕の上に乗る佳奈多さんの感触と、それに合わせた佳奈多さんの息づかいは、なかなか消し去れなかった。

 むしろそれで心がいっぱいになってしまっていた。

 心が満たされていた。

 

 これは佳奈多さんに気づかれてはいけない、理由はよくわからないけどそう思った。そっと目を閉じた。そしてもう一度開いたとき、視界には満足そうにほほえむ佳奈多さんの顔が映っていた。気づかれている。そう悟った。

 自分の行いが裏目に出た悔しさと、そもそもなんでそんなことをする必要があるのかという自分のばからしさに、思わず顔を歪めてしまった。

 そんな僕の頭を佳奈多さんはそっと撫でながら語りかけてきた。

「馬鹿な子ね…本当に、馬鹿な子…」

 

 何か答えたかった。でももうそれすら出来なかった。身も心も、完全に佳奈多さんに支配されていた。もう、佳奈多さんに逆らうのは無理だ。

 僕が諦めるのを待っていたかのように、僕の下の方から佳奈多さんに子供を産ませたいよという合図が伝わってきた。

 

 いや、それは駄目だ。僕は快感を必死で振り払い、佳奈多さんに話しかけた。

 

「佳奈多さん…その…でちゃいそう…」

「そう」

 

 佳奈多さんは短く答えて、そのまま僕の上で動き続けた。伝わっていないのだろうか。僕が不安げに佳奈多さんを見ると、佳奈多さんはまた優しい表情になって答えた。

 

「大丈夫。大丈夫、だから」

 どう大丈夫なのか、その意味もわからないまま、僕は勝手に安心感に包まれていた。もう止められなかった。僕の幸せな思いを佳奈多さんに受け止めて欲しい、そう思った次の瞬間、僕は果てた。

 佳奈多さんもきっと幸せに感じてくれている。勝手にそう思っていた。

 

 暫く恍惚の時を過ごしたあと、我に返った僕は、薬棚に行くため起き上がろうとした。そんな僕を佳奈多さんが引き留めた。

「どこへ行くの?」

「薬棚。あとから飲む避妊薬があるかもしれないと思って」

「──必要無いわ」

「え? でも」

「大丈夫、って言ったじゃ無いの」

「そうなの?」

 佳奈多さんは無言で僕を引き寄せた。僕は佳奈多さんに従うことにした。

「こんな事訊いたら怒られるかもしれないけど…今日は安全日なの?」

「安全日? ああ、生理ね。そうね、そろそろかしら」

「えっ。じゃあ薬、あらかじめ飲んであったの?」

「そんなもの飲んでないわ」

 

 血の気が引いた。一気に頭が冷めて、そして熱くなった。混乱しそうだった。

「だって…さっき、大丈夫だって…」

「そうよ。大丈夫。ちゃんと──育てさせるから」

 佳奈多さんが何を言っているのかわからなかった。

 

 佳奈多さんは、僕に顔を近づけてきて、耳元で囁き始めた。

「私のあの家での役割は、尊い三枝の世継ぎを産むこと。勉強もスポーツも、結局はその尊さを証明するためだけのもの。いづれ私は、あの家の男のうち誰かの子供を産まされることになる…ううん、それはもう明日かもしれない」

 僕は言葉を発せなかった。佳奈多さんはそのまま続けた。

「私の産む子供は、三枝の世継ぎと決まっている。そうでなければならない。あいつらは一生懸命、私の産んだ子を育てるでしょうね。自分たちの優秀さを証明するために。でもその子供は三枝の子じゃ無い。私が愛して、私が選んだ男──直枝理樹、あなたの子。それをあいつらは自分たちの同類だと思って一生懸命育てるの。ねえ、それって最高におかしいと思わない?」

 そこまで言って佳奈多さんは、僕の胸に顔をうずめて、くっくっと声を上げた。泣いているのか笑っているのかさえわからなかった。僕は何も声をかけることが出来ず、ただ佳奈多さんをそっと抱きしめることしか出来なかった

 

 

 

 

 


こぴかな時々あー++

 僕が佳奈多さんと葉留佳さんと同居し始めて、もう何ヶ月経ったのだろう。

 僕は部屋で一人、求人用のフリーペーパーをを眺めていた。何か僕にも出来そうな仕事は無いだろうか。自宅でできる仕事でなくてはならない。発作が起きても迷惑をかけたりしない仕事でなくてはならない。佳奈多さんにそう言われているから。

 

 扉が開く音がして、佳奈多さんが部屋に入ってきた。3人で住むからと広めの部屋を借りたつもりの1LKだったけど、リビングは居室にはならないということは住んでみて初めてわかった。みんな自然に、寝室に使うはずの部屋に来てしまう。僕はこの部屋で、いつも二人を出迎えることになる。

 佳奈多さんは疲れた表情で部屋に入ってきて、はぁと溜息をつきながら自分の定位置に座った。

「おつかれさま」

「ええ、おつかれさまよ」

 そう言って佳奈多さんはタイを外し、襟元を緩めた。葉留佳さんならいざ知らず、佳奈多さんが外では絶対に見せない姿だ。僕の前でもこんなに気を緩めるようになったのは結構最近のことだ。

「本当はすぐにお風呂に入った方がいいのだけど、少し休みたい気分なのよ」

 何故か僕に言い訳するような口調で佳奈多さんは言った。今日は特に疲れたらしい、休むと言いつつ時折肩を動かしている。

「佳奈多さん、少し肩を揉もうか?」

「そうね──自分でするより直枝に揉んで貰った方が、回復は早いかもしれないわ」

 そう言って佳奈多さんは背中を僕の方に向けた。少し距離があったので、僕は佳奈多さんの側まで移動しようとした。足首に繋がった鎖がじゃらりと軽く音を立てて、佳奈多さんは一瞬だけ振り向いて音のした方を見た。しかし何事もなかったかのようにすぐ元の向きに戻ってしまった。そして両腕を床に付けて、少しだけ体を僕の方に移動させてくれた。

 僕は佳奈多さんの後ろに座って、肩から背中にかけてこりをほぐす為に指を押しつけて揉んだ。

 揉んでいるうちに、疲れで険しくなっていた佳奈多さんの表情がだんだん緩くなっていくのが、後ろ側からでもわかった。

「ふぅ」

 佳奈多さんは溜息をついて、だいぶ良くなったということを僕に教えてくれた。僕は佳奈多さんの肩に押さえつけていた手を放そうとした。その左手を佳奈多さんが自分の右手で押さえた。左手を押さえられてしまったので、右手の方も放したはいいものの完全にどけることも出来ず、そのまま宙に浮かせる恰好になってしまった。

「佳奈多さん?」

 僕が声をかけると、佳奈多さんは一瞬無言になった。そして僕の手を押さえたまま言った。

「肩を揉んでくれたお礼をしないと。ね」

 一瞬、鎖を外してくれるのかと思った。けれどもそれは無かった。代わりに佳奈多さんは、手を押さえたままその手の指を絡ませ始めた。僕は何も言わずさせるがままにしていたが、そのうち無意識的に自分の方からも指を絡ませ始めていた。

 どれだけの時間が経っただろうか。佳奈多さんが口を開いた。

「いやらしいのね」

「なっ。なんでそうなるのさっ」

「いやらしいことは微塵も考えていなかったと、断言できる?」

「そっ、それは…」

 全くの嘘だった。

「この分だと他にもいやらしいことを考えていそうね」

「考えてないよっ!」

「どうだか。肩を揉むとか言って、もっと先に手を伸ばそうとか思ってたんじゃないの?」

 肩のもっと先。僕は確かめるつもりで目線をそっちにやった。ブラウスが大きく膨れあがっている。さっき佳奈多さんが襟元を緩めたので、隙間から中が見えてしまいそうだ。

 気がつくと佳奈多さんが横目で僕の顔を見ていた。少しあきれ顔だった。

「ち、違うんだ! 違うんだよ!」

「何が違うの…」

 そう言って佳奈多さんは、押さえていた僕の左手を引いた。反射的に僕が抵抗したので、佳奈多さんは引っ張る力を強めた。強められた力に僕は一瞬驚いて、左手の力を抜いてしまった。体のバランスを崩して佳奈多さんにもたれかかってしまった。佳奈多さんは体をずらして半回転させ、僕の体が自分の前に来るようにした。左手は佳奈多さんに捕まれてしまっていた。佳奈多さんはその手を自分の胸元に持ってきて、触れる手前のところで止めた。

「ねえ。どうしたいの?」

「どうしたいって…」

 言わされてる。そう思った。でもここで嘘を言ってもあまりいいことはない、そうも思った。

「触りたい…」

「そう」

 佳奈多さんはそっと押すように僕の手を胸に当てた。初めての感覚に頭が真っ白になりそうだった。折角の佳奈多さんの好意だから、気絶なんかしたらいけない。僕は少しだけ頭を振って、そしてとりあえず姿勢をたて直そうと思った。起き上がろうとすると佳奈多さんがもう片方の手で支えてくれた。そして僕が体勢を直すと、そのまま抱きかかえるように自分の体に押しつけてきた。

「佳奈多さん!?」

 僕が思わず声を出すと、かなたさんの腕の力は弱まった。

「えっ。吸いたいんじゃないの!?」

「えっ!? あ、あの」

 違う、と一瞬言おうとした。でもここで僕が否定したら佳奈多さんに恥をかかせてしまう。そう思って言葉を飲み込んだ。代わりに、自分から佳奈多さんの胸に顔を押し当てた。佳奈多さんは何も言わず左手で僕の頭を支えてくれた。右手は僕の左手と繋がれていたが、それを放して胸元に手をやり、ボタンを外し始めた。ぼくはされるがままになっていた。吸い付いたときだけは、一瞬だけ亡くなった母親のことを思い出した。それ以外はなにも考えなかった。ただひたすら、夢中で吸っていた。

 佳奈多さんはずっと僕の頭を撫でてくれていた。そしてふと、こんなことを言った。

「こんなに夢中で吸っちゃって…。直枝ったら赤ちゃんみたい」

「!!!」

 さすがに恥ずかしすぎる。僕は顔を放そうとした。けれどもそれは出来なかった。佳奈多さんは両手でいしっかりと僕の頭を抱きかかえて自分の胸に押しつけていた。

「だめよ…離れてはだめ。離れないで…」

 そう言ったたきりずっと強く僕を抱きしめたままになってしまった。僕は暫くそのままの姿勢でじっとしていた。どうしたら佳奈多さんを安心させられるだろう。そんな事ばかり考えていた。考えて、正解かどうかわからなかったけど、空いていた両手を佳奈多さんの後ろに回して背中を抱きしめた。佳奈多さんはその力に押されたとでも言わんばかりに僕の方に倒れ込んできた。背中に床があたったとき、一瞬だけ足の鎖のことが頭をよぎったが、すぐにそんなものはどうでも良くなった。

 

 気を失っていた。その事に気づくのに、少しばかり時間がかかった。すぐ横に佳奈多さんの顔があった。佳奈多さんは僕の頭を抱えるようになで続けていた。

「直枝も…葉留佳も…私のもの。…ねえ、そうでしょう?」

「うん…そうだね」

 僕が頷くと、佳奈多さんはとても無邪気な表情で笑ってくれた。

 

 服を直しながら、佳奈多さんは言った。

「ねえ。この事…葉留佳には黙っていて欲しいの」

「う、うん」

「葉留佳がこんな事を知ってしまったらきっと傷つくと思うし…無意味に悲しませたりはしたくないのよ」

「わかった、葉留佳さんには内緒にするよ」

「…ありがと」

 そう言って佳奈多さんはもう一度僕を撫でてくれた。

 

 

 ……。

 

 

 僕は部屋で一人、求人用のフリーペーパーをを眺めていた。何か僕にも出来そうな仕事は無いだろうか。引っ越してすぐ始めたバイトは、仕事中に発作を起こして結局辞めることになってしまった。

 佳奈多さんも葉留佳さんも、外に働きに出ている。僕は親が残してくれた遺産があるから、何とか自分の生活費は出せている。佳奈多さんも葉留佳さんもそんなもの出さなくていいと言う。そんなはずはない。二人だけ働きに出して僕は何もしていないだなんて、そんな道理はない。二人には勝手に外に出るなと言われていたけど、外に出なくていい仕事なんてそうそうあるものじゃない。そう思った僕は、無断で外に出てしまった。

 そして発作を起こした。

 

 3人で部屋に戻ってくると、葉留佳さんは泣き顔になって何で外に出たのと僕を責め始めた。僕は何も言い返せなかった。佳奈多さんが葉留佳さんを取りなしてくれて、葉留佳さんは何とか落ち着いた。そして佳奈多さんは、僕に足を出すように言った。言われるがままに足を差し出すと、佳奈多さんはいつの間に買ってきたのか、鎖を付けるための輪を僕の足に付けた。鎖のもう一方の端は部屋で一番重そうな洋服入れに繋がれた。

「あなたが悪いのよ。勝手に外に出たりするから」

 僕はうなだれたままだった。確かに、一人で外に出ないということは二人と約束していて、僕はそれを破ってしまった。

「ねえ直枝。わかってるわよね? あなたはいつ発作を起こすかわからないんだし、それが誰もいない場所だったら助からない可能性だってある。もし誰かがいたとしても、人が倒れれば騒ぎになるし、大変な迷惑をかけることになるでしょう? 助けてくれた人にも、後で謝らないといけない私達にも」

「うん…」

「それに一切外に出るななんて言ってないでしょう? 私か葉留佳、どっちかと一緒なら、外に出てもいいって」

「うん、僕が悪かったよ」

「わかってくれてるのならいいわ。これからは外に出たいときはちゃんと言いなさい」

 そう言って佳奈多さんは二組の鍵を取り出し、そのうちの一つを葉留佳さんに渡した。

「二人で持っておきましょう」

「うん、そうだね」

 

 約束通り、二人のうちのどちらかに言えば、僕は自由に外出できた。葉留佳さんはむしろ好んで僕を外に連れ出したがって、そんなとき佳奈多さんは少し寂しそうな顔をしていた。

 

 

 

 

 

 僕は部屋で一人、求人用のフリーペーパーをを眺めていた。何か僕にも出来そうな仕事は無いだろうか。家でできる仕事は詐欺まがいのものが多いから勝手に決めずにちゃんと相談しなさい、佳奈多さんはそう言っていた。葉留佳さんではだめなの? と僕が意地悪心から訊くと、ぴしゃりと駄目よと言われた。自分で全部把握しておかないと気が済まないのだろう、僕はそう推測した。

 顔を上げて時計を見る。佳奈多さんが帰ってくるまでにはまだ時間がありそうだ。今日はむしろ葉留佳さんの方が早く帰ってくる日だっただろうか。僕は少し移動して、佳奈多さんお手製のスケジュール帳を取りに行った。市販の大学ノートの見開き2ページを使って1週間分の予定がきっちりと書き込まれている。僕の記憶通り、今日は佳奈多さんは少し遅くて、葉留佳さんは早く帰ってくる予定になっていた。

 

 扉が開く音がした。少し早いけど、きっと葉留佳さんだ。僕の予想通り、顔を覗かせたのは葉留佳さんだった。

「はるちんは残業はしたくないのデス」

 訊かれてもいないのにそんなことを言った。予定より早く帰ってきたことの説明なのだろうか。僕は敢えて何も言わなかった。それはいつものことなので、葉留佳さんも気に留めなかった。

「お姉ちゃんは今日帰り遅いんだよね…?」

 僕の手元の予定表を見ながら、葉留佳さんはそう言った。

「うん、かなり時間があるね。こういうときは先に食べてていいって佳奈多さんが言ってたよ」

「つまり作っとけって意味デスヨネそれって」

「まあ、そういうことになるね」

 暫く二人で苦笑した。

「部屋で理樹君と二人だけなんて、結構久しぶりだなー」

 そう言いながら僕の隣に座ってきた。

「そうだね。あ、何か食べる?」

 立ち上がろうとした僕を、葉留佳さんが制した。

「理樹君は台所まで行けないでしょ」

 そう言って僕の足に繋がれた鎖を見た。

「うん、だから葉留佳さんの鍵で外して貰って。あ、もちろん逃げたりしないよ。今だけだよ」

「ふううん…」

 葉留佳さんは何故か疑いを含んだ眼差しで僕の方を見つめていた。

「え…。何? どうかしたの?」

「理樹君。私、理樹君のこと、信じて、いいんだよね?」

「う、うん。もちろんだよ」

「じゃあ訊くけど。理樹君もお姉ちゃんも、私に隠し事なんてしてないよね?」

 隠し事。僕の脳裏に佳奈多さんとのあのことが蘇った。そして次の瞬間、しまったと思った。葉留佳さんは僕の表情を読み取って、少し落胆した表情になっていた。

「やっぱりね…。うん、ほんとは気づいてたんだ。二人で何やってるかも、ね」

「…。」

 僕は何も言えなかった。

「ひどいな。理樹君も、お姉ちゃんも。私だけのけ者にしたりして」

「違うんだ、葉留佳さん。そういうつもりじゃなくて」

「悪気がないってのはわかってるよ。だからそんなに慌てなくてもいい。ただね、私もちゃんと仲間に入れて欲しいな、って。それだけ。それだけだよ」

 そう言いながら葉留佳さんは顔も体も僕の方に近づけてきた。僕は反射的に後ずさりした。葉留佳さんは動ずる事無く、さらに体を近づけてきた。

「逃げなくてもいいんだよ。大丈夫。お姉ちゃんと同じ事するだけだから」

「ま、待って…」

 僕は足を動かして体を後ろにずらし、葉留佳さんから遠ざかろうとした。それでも葉留佳さんは追ってきた。僕はもっともっと後ろに行こうとした。ガチャリ、と音を立てて、鎖が僕の足の動きを封じた。その音に気づいた葉留佳さんが、僕の足に繋がれた鎖を見た。

「…鎖を付けようって言い出したのはお姉ちゃんだけど。正解だね。やっぱりお姉ちゃんにはかなわないや…」

 そう言ってまた僕の方を向き、また近づいて僕を押さえ込み始めた。僕はもうそれ以上逃げることは出来なかった。葉留佳さんにされるがままになった。

 

 

 葉留佳さんに犯されながら僕は、二人の父親である晶さんと初めて会ったときのことを思い出していた。

 

 

『──やめとけやめとけ。こいつらは怖いぞ。根っこの部分が腐ってやがる──』

 

(2013/10/13{はるかな誕生日}公開)

 

 


こぴかな時々あー++

愚痴的評論:佳理派白書をもう一度

 普段から自分は佳理派佳理派佳理佳理言ってるが、ふと佳理ってどれくらい認知されているのだろうかと思ってググってみたら、全然出てきやしねえ。

 

 なので、改めて「佳理」について説明する。

 

 一言で言うと、「佳奈多×理樹」の略である。理樹×佳奈多では無い。佳奈多×理樹だ。佳奈多が上で理樹が下。ここが一番重要。

 

 佳奈多はSです。ドSです。だがしかし、佳奈多のSはその異常な母性に由来するものなのです。だから無意識に母性を欲するオーラ出しまくりな理樹君を襲うのです。

 それが、かの有名な「葉留佳BAD」です。そう、「佳理」は原作にちゃんとあるのです。公式設定です。後付けやコミック、増してや二次創作設定では無いのです。そこんとこ勘違いしないように。

 

 その辺のとこを踏まえたTwitterのやりとりをちょっと引用しておこう。

(→→→)

 

 

 まあ、「友乙」とも少し似てるね。友利も母性がとか言われてるけど、あの子明らかにドSだし。

 

 

 

 ということで、

 

「S妹!ともりちゃん 前編」

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 佳理じゃ無く友乙になったし!



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