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こぴかな時々あー++

うさかな

 

 佳奈多さん、帰宅。

 

「ままー」

「あらかなたさんおかえりなさい」

「おかあさんおかえりなさいー」

 

 こちらは佳奈多と理樹の娘、理佳と理奈と理多。

 

「ただいま…パパは?」

「いない」

「どこか出かけたの? またコンビニかしら。しょうがないわね、娘を家に残して出かけるなんて…しょうがないわね」

「こんびにはなんでもあるからなあ」

「パパの真似しないの…」

「ままあそぼー」

「今帰ってきたばかりだから…」

「じゃあすぐできるのー」

「すぐ出来るのって?」

「うさちゃんやってー」

「うさちゃん!」

「うさちゃんやって!」

「…ちょっとそれは」

「うさちゃんー…」

「…しょうがないわね、ちょっとだけよ、帰ってこないうちに」

「やったー」

「ほーら。うさちゃんだぞー。ぴょーん。ぴょーん。ぴょーん」

「パパおきたー」

「えっ」

「ぱぱー」

「あ、あなた、なんでいるのっ!」

「いやいやいや、なんでいるのは酷くない?」

「だ、だってっ、出かけたって、あなた、だから、だからっ」

「具合悪くて隣で寝てただけだけど」

「いるなら言いなさいよっ!」

「だから寝てたんだって…そしたら、ぴょーんぴょーんって、佳奈多さんの声が」

 

 佳奈多さん顔真っ赤。

 

「ママ、かおまっかー」

「おさるさんのまねだー」

「違うわよ! ちょっとあっち行ってなさい!」

「そんな、理佳達に当たらなくても」

「そうよ! あなたが悪いの!」

「ええっ!?」

 

 佳奈多と理樹をよそに娘3人は部屋の隅で遊んでます。

 

「こんどはママのものまねするー」

「ちゃいていね…ちゃいてい」

 

「あれは止めなくていいの?」

「うるさいわね! 止めるわよ! …止めるわよ!!」

 

 

 

 

 

 


こぴかな時々あー++

リトバス世界名作劇場 おかしのいえ

 

 むかしむかしあるところに、理樹と小毬という兄妹がおりました。

 

 ほんとの兄妹ではないのですが、二人とも家族を亡くした経験とかまあいろいろ共通するところがあったので義兄弟のちぎりを交わした、とかまあそういう方向で。

 二人は、両親に捨てられたとか意地悪な継母にいじめられたとか特にそういう目にあったわけでもないのですが、それだと話が進まないのでとりあえず二人で森の中まで来ました。

 すると、森の小道の中に「おかしのいえ 500m」と書かれた看板を見つけました。

 

「なんだろうこれ…。ここ東海自然歩道に指定されてるし、環境省の新しい施策かな?」

「ううん、これはきっと、テーマパークです」

「テーマパークって愛知県犬山市にある博物館明治村が最初といわれるけど、明治村が出来た当時はテーマパークという言葉は無かったからあまりそう呼ばれることが少なくて、それでディズニーランドが最初のテーマパークだと思ってる人が多いよね」

「その辺の事情はよく知らないけど。その愛知県犬山市に、お菓子の城というテーマパークがあるのです」

「へぇ…よく知らないけど。じゃあ、このおかしのいえというのも、そのお菓子の城みたいなものだということ?」

「きっとそうです。幸せの待っている場所なのです」

「うん、じゃあとりあえず行ってみようか」

 

 理樹と小毬はおかしのいえに向かいました。

 

 

 

 二人が500m程歩くと、森の中に殺風景な家が建っていました。

 

「おかしいな。方角間違えたのかな?」

「そうでもないみたいだよ。ほら、戸口に『おかしのいえ』って、看板が掛かってる」

「うーん。でもこの家、あんまり可愛くないし。認めたくないなあ」

「プレハブ小屋に太陽電池が乗っかってるだけだし、確かにお菓子の家って感じはしないね」

「これは、私じゃ無くて、はるちゃんか探偵ナイトスクープが担当すべき案件かな」

「桂小枝卒業したし、葉留佳さんがいいと思うよ」

 

 すると、扉が開いて中から女の人が顔を出しました。

 

「あれ、二木さんだ。どうしたのこんなとこで」

「葉留佳の名前が聞こえた気がしたので」

「うん、確かに今葉留佳さんの名前は口にしたけど」

「でもはるちゃんはここにはいないよ?」

「…そう」

 

 佳奈多はちょっとがっかりした表情をしています。

 

「二木さん…もしかして、葉留佳さんをおびき寄せたくて、こんなよくわからない家を建てたの?」

「は!? 何を言ってるのかしらあなた、意味がわからないわ。なあに、最近環境問題に関心を示し始めた葉留佳の気を惹きたくて究極のエコ住宅を建てて葉留佳を待ち構えていたとでもいいたいの?」

「はるちゃん、環境問題に関心持ち出したんだ」

「でも葉留佳さん、この家のことは知らないんじゃ無いかなあ」

「だから。葉留佳をおびき寄せたいんじゃ無いって言ってるでしょ」

「葉留佳さんに、佳奈多さんここにいるって伝えておこうか?」

「やめて」

「はるちゃんこういうの喜ぶと思うけどなあ。あ、とりあえずメール出しておくね」

「やめてって言ってるでしょ…ッ!」

 

 佳奈多は大慌てで小毬を制止し、そのまま腕を引いて家の中に連れ込んでしまいました。理樹も後を追って中に入り、扉は閉まりました。

 

 

 

「…何が目当て? お金?」

 

 家の中に入った佳奈多は、猜疑心でいっぱいでした。

 

「そういうんじゃないんだけどなあ」

「そうだよ。僕たちはただ、葉留佳さんと佳奈多さんが幸せになるようにって思って。それで葉留佳さんにメールを」

「だからそれはやめてって言ってるでしょ」

「メール駄目。そうだ理樹君。メールで連絡するのがだめなら伝書鳩を使えばいいのでは」

「はぁ!? あなた一体何を言って」

「そうだねそういうの葉留佳さんが喜びそうだ」

「…あなた達、とんでもなく危険だわ。仕方ないわね、しばらくこの家にいて貰います」

 

 理樹と小毬は、佳奈多に家の中に閉じ込められてしまいました。

 

 

 

 二人は佳奈多に家の中のことを手伝うように言われました。しかししばらくして理樹は持病のナルコレプシーが発症してぶっ倒れたので、部屋の中で絶対安静を言い渡されてしまいました。

 

「大丈夫だよ二木さん、もう平気だから」

「何言ってるのあなたっ! どれだけ心配したと思って…」

「理樹君。倒れたのは事実だし、しばらくいうこときいといた方がいいと思うな。家の仕事は私一人で何とかなるから」

「そんな、悪いよ…」

「ううん、私一人にやらせて。かなちゃん、掃除や洗濯はいいんだけど、お料理がなんか栄養のことしか考えないものばっかり作るから」

「あ、そっちなんだ」

「…栄養は大事でしょ」

「味や見た目も大事だと思うな」

「そんなに酷い味じゃ無いと思うけど?」

「もっと良くなると思うのです。なので少し任せて欲しいのです」

「でも…」

「かなちゃんだって、今日一日ぐらい理樹君の看病をしていたいのではないですか?」

「はぁ!? ちょっとあなた何を言って」

「よぉし。私頑張るよぉ」

 

 小毬が出て行ってしまったので、佳奈多は仕方なく理樹の看病をしました。

 

 

 

 その後一日以上経った後も、理樹は部屋で寝かされたままでした。

 

「だいじょうぶだって二木さんほんとにもう大丈夫だから」

「何が大丈夫なのこんなほっそい腕して」

「腕の話じゃ無かった気がするんだけど…それに僕そんなに腕細くないよ」

「じゃあ見せてみなさい」

 

 理樹はお昼の残りのフライドチキンを突き出しました。

 

「…なによこれ」

「これが僕の腕。ほら、すごく肉付きいいでしょ?」

「かなり重症みたいね」

「わっ。待って、待って! これ冗談だから、それぐらいわかるよね!?」

「ええ、冗談だって事はわかるわ。でも、あなたがお昼のフライドチキンを残したのも、また事実」

「えっ」

「食欲があまりないみたいね…」

「いやこれはたまたま」

「もうしばらく様子を見るわ」

 

 その後も理樹は解放して貰えませんでした。

 

 

 

「ありゃりゃ。かなちゃんまた理樹君の部屋でお仕事してる」

「目を離した隙に逃げたりするといけないから。見張ってるの」

「そんな。僕、佳奈多さんに黙って勝手に逃げたりしないよ」

「どうだか」

「…そうなっちゃいましたか」

 

 

 

 ある日のこと。小毬は近所のショッピングセンターが割り引きデーということで外に出ていました。

 

「小毬さん、たくさん買い込んでくるって言ってたな…。荷物大丈夫かな?」

 

 理樹は窓の外を見ながらつぶやき、そして小毬の荷物持ちをしようと思い立って、服を着替え始めました。

 そこに佳奈多が入ってきました。

 

「…何をしてるの」

「えっと…着替え」

「何故着替える必要があるの?」

「服は着替えるものだし」

「朝着替えたばかりじゃ無い」

「えっと、小毬さんが買い物行ってるから。たくさんあるだろうから、荷物持とうと思って」

「外に出るつもりだったの? 私に黙って」

「着替えたら言うつもりだった」

「…だめよ。外に出るのはだめ」

「そんな。小毬さんの荷物は」

「それは私が行くわ。あなたはここにいなさい」

「いやでもたまには外に出たいし。服も着替えたことだし」

「まだ途中じゃないの」

「そういえば途中だった」

「とにかく。あなたはここにいなさい。服も着たらだめ!」

「ええっ。服くらい着させてよ!」

「えっ。あっ、違うの。外に出る為の服を着るなって意味であって。ああもう、うるさいわね、いいからそれ脱ぎなさい!」

 

 佳奈多は理樹に馬乗りになって理樹が着ようとしていた服を脱がせようとしました。

 

「え、ちょっと佳奈多さん落ち着いて。自分で脱げるから!」

 

 理樹が抵抗しているところに、小毬が帰ってきました。

 

「ただいま~たくさん買っちゃったけど最近は買ったもの家まで届けてくれるサービスがあるんだねえだから手ぶらでラクチンだったよぉ。って二人とも何してるの!?」

「…着替え」

「…の手伝い」

「そっかぁ。もうそこまでの関係に」

「…そうか。バレてるのならもう隠す必要も無い、か」

「いやいやいや、ちょっと待って違うから!」

「そうかあ、違うんだ。うん。じゃあ、私、何も見なかったことにして出ていくね」

「理解があって助かるわ」

「ええっ、なんでそうなるのっ!?」

「そうだ、今日は、お天気がいいし、洗濯物、全部、片付けちゃおう。うんそうしよう」

 

 小毬は部屋を出て行ってしまいました。

 

「ちょっと待って小毬さん。えっ、何。やめて! 佳奈多さんやめて!」

「大丈夫今は誰も見ていないから」

 

 

 理樹は佳奈多におかされてしまいました。

 

 

 めでたしめでたし。

 

 

 

 

 

 

 

 めでたいんだよ!

 

 

(2013/12/23公開)

 

 

 

 


こぴかな時々あー++

女装烈佳女装理樹を佳奈多が愛でるお話

 

 

「理樹君、脱いで」

 

 小毬さんが僕に僕に服を脱げと要求してくる。僕は首を振った。そんな事は無駄だということはわかっている。周りは女の子達に取り囲まれている。後ろは壁。ここは敷地の片隅にある倉庫。殆ど人なんか通らないから、助けを呼んで無駄だということはわかっている。それでも僕は首を振った。

 

「仕方ないデスネ。今日も無理矢理脱がせるしか無いデスカ」

「本当はそれを期待しているのでは無いのか?」

「イヤア」

 

 そう言いながら、葉留佳さんと来ヶ谷さんが僕の両腕を掴む。僕は腕に力を入れて抵抗したけど、それが無駄だということもわかっていた。二人がかりじゃ僕程度の力ではどうしようも無い。

 クドが僕の制服のボタンを外し出す。小毬さんは、しゃがみ込んでズボンのベルトに手をかけていた。

 

「やめて…下はやめて…!」

「ふえ? でもそうしないとスカートがはけないよ?」

「だからスカートはかないから!」

「それはないな」

 

 ずっと外を見張っていた鈴が、僕の方に振り返って言い放った。それに呼応するかのように、西園さんが付け加える。

 

「直枝さんがちゃんと自分で着替えてくれればこんな事しなくてもいいんですよ?」

「だから着替えたくないんだってば!」

「だったら私らで着替えさせるしか無いじゃないデスカ」

「だな」

「だからそういう意味じゃ無くて!」

 

 一体何でこんな事になったんだろう。そう、女子寮の部屋の中に入るとこういう事をされるというのはもうわかっていた。だから部屋にはもう行かないようにしていた。そうしたら、家具部のストライキで倉庫が荒れてるから手伝って欲しいとか何とかで呼び出されて、来てみたら女の子達に取り囲まれて。

 何で僕はこんなに馬鹿なんだろう。

 

「理樹君ったら。またこんな、男の子-+みたいなパンツはいて…」

 

 ズボンを下ろした小毬さんが溜息交じりに言う。

 

「僕は男の子だよ!」

「娘と書いて『こ』と読むあれデスヨネ」

「違うよ!」

「次からは下着も用意した方がいいでしょうか?」

「だな」

「下着はかないから!」

「ほほう」

「違う、女物の下着ははかないから…」

「ふうん」

「まあいいや。今日はさっさとスカートはかせちゃうね。足上げて」

 

 僕は無駄な抵抗はせずに、大人しく足を上げた。僕のズボンはスカートと交換された。最近ではもう来ヶ谷さんの制服じゃ無くて、僕専用の服ということになってるらしい。

 

「スカートまで穿いちゃったんだから、上着で抵抗する理由は無いヨネ?」

「大人しくすると約束すれば腕を放してやってもいいぞ?」

 

 僕は無言で首を縦に振った。クドが胸襟をつかんで開き、肩から外して腕をすり抜けさせて、上着を脱がせてしまった。

 

「私も服脱がせる役やりたいナア」

「ならYシャツは葉留佳君が脱がせるといい」

「リキ、抵抗したりしないですよね?」

 

 僕は涙目で頷いた。葉留佳さんは嬉々として僕のYシャツのボタンを外していった。葉留佳さんがはだけた僕の胸に顔を近づけてくる。

 

「ふーっ」

「や、やめてよ葉留佳さん!」

「そうだぞ葉留佳君。それはルール違反だ」

「みんなやりたいの我慢してるんです!」

「やはは、ちょっと調子乗りすぎちゃいましたネ」

 

 そう言って葉留佳さんはYシャツを全部脱がせた。そして代わりに僕には女子用のブラウスが与えられた。

 

「リボンも付けようね」

「上着くらいは自分で着れるか? 着せてやってもいいが」

「頭にこれを付けましょう」

 

 胸のリボンと、女子用の上着と、頭にもリボンと。

 

「はい、鏡見て。かわいいよ」

「この頭の触覚みたいなリボンは何? 最近よくこれ付けるけど」

「うん、よくわからないんだけど」

「要望が多いのデスヨ」

「要望?」

「三枝さん」

「あ」

 

 西園さんに窘められて、葉留佳さんが気まずそうに顔をそむける。僕は葉留佳さんの方をじっと見ていた。それをフォローするように、来ヶ谷さんが口を開いた。

 

「知らない方がいいことだと思って黙っていたのだが、それでも知りたいか?」

「僕には知る権利があると思います」

「最近のデジカメはAndroidOS搭載で、Wifi経由ですぐに画像が転送できる。と、言えばわかるか?」

「共有、ともいいますね。いえ、画面にそう書いてあるだけです」

「シェアリングの時代ですからねえ」

「そんな!」

「ですが、ここで大切なことをお知らせしないといけません。その最新鋭デジカメを、部屋に忘れてきてしまいました」

「駄目じゃ無いか」

「使い方がいまいちわからないので、夕べ練習していて。そのまま机の上に置き忘れてしまったようです」

「なら取りに行きましょう」

「ついでに使い方をもう一度確認したいのですが」

「なら私と葉留佳さんも行きましょう」

「デスネ。Wifiの設定もついでに確認しておきまショウ」

 

 そう言って、西園さんとクドと葉留佳さんは倉庫を出て行った。まだ、来ヶ谷さんと小毬さんが残っている。入口には鈴。逃げられそうも無い。

 

「あの、僕、トイレに」

「うむ。行ってくるといい」

「うん。…え、いいの?」

「我慢させるプレイまでするつもりは無い。君はしたいのか?」

「そうじゃなくて。そのまま僕が逃げ出すとか、そういう事は考えないの?」

「その姿で逃げ出すだけの覚悟が君にはあるのかね?」

 

 僕は改めて自分が今来ている服を確認した。そんな覚悟は無かった。

 

「…すぐに戻って来ます」

「特別棟のトイレが近いぞ」

「うん、ありがとう…」

 

 

 

 授業が無いからか、特別棟には人通りは無かった。よかった、これなら誰にも見つからずにトイレに行ける。

 トイレの前にある男女区分のマークを見て、一瞬立ち止まって考え込む。周りを確認する。誰もいない。そして僕は男。なら迷うことは無い。男子トイレに入るべき。そう思って一歩足を踏み出したとき、後ろから声をかけられた。

 

「そっちは男子トイレよ」

 

 驚いて振り向くと、腰に片手を当てた二木さんが立っていた。

 

「えっ!? さっきまで誰もいなかったのに」

「埋伏は不埒な輩を捕らえる為の必須スキルよ」

「そんな、不埒な輩じゃないよ!」

「じゃあ何故男子トイレに入ろうとしていたの?」

「それは…」

 

 僕は口ごもって、顔を二木さんから背けた。言えるはずがない。僕は女装させられてるけど、本当は男です、だなんて。

 

「ふむ…」

 

 目線をずらして二木さんの方を見ると、二木さんは顎に手を当てて何かを考えていた。

 

「もしかして…女子トイレで何かされたのかしら」

「え? い、いやその」

 

 女子トイレじゃない場所でならされてるけど。

 

「まさか…いじめ!?」

「あ、いや、そういうわけじゃ」

「そういう事があるのなら言って。きちんと対処するわ」

「ここでそういうのは無いよ…」

「…そう? 前の学校での話かしら」

「…。」

「ごめんなさい。言いたくないことを訊いてしまったようね」

「ううん、こちらこそごめんなさい」

 

 そう言って僕は逃げ込むようにトイレに入ろうとした。その手を二木さんが掴んだ。

 

「だからといって男子トイレに入っていいという法は無いわ。こっちに来なさい」

 

 僕は二木さんに手を引かれて、そのまま連れて行かれてしまった。

 

 

 

 着たくなかったはずの女子寮に、僕は何故か連れてこられている。しかも、どういうわけか二木さんに。

 二木さんが扉を2回ノックする。

 

「クドリャフカ、いるかしら?」

 

 応答は無かった。たぶん西園さんの部屋に行っているからだ。

 

「いないようね。丁度いいわ」

 

 そう言って二木さんは部屋の扉を開けた。

 

「ここ、私の部屋だから。今ルームメイトいないから、ここのトイレ使っていいわよ」

「うん、ありがとう…」

 

 僕は大人しく二木さんの厚意に甘えることにした。

 

 

 用を済ませてトイレを出ると、二木さんに声をかけられた。

 

「こっちにいらっしゃい。お茶入れてあげるわ」

「え? でも」

「何か急ぎの用事でもあるの?」

「いや、無いけど」

「ならいいでしょう。少し話を聞きたいの」

 

 どういう事だろう。少し警戒しながら、部屋の奥に入っていった。

 

「そこ座って」

 

 促されるままベッドの上に腰掛けた。二木さんがお盆に載せたお茶と茶菓子を持ってくる。

 

「まだ名乗ってなかったわね。私は二木佳奈多。一応風紀委員会に所属しているけど、肩書きは、まあ何でもいいわ」

「う、うん」

「あなたは?」

「え、僕!?」

 

 思わず僕と言ってしまった。二木さんが少し怪訝そうな顔をする。

 

「あ、いや、私は…」

「ごめんなさい、別に普段通りの言い方でいいのよ」

「う、うん。その、僕は…」

 

 なんて名乗ろう。

 

「えっと…美樹さやか」

「どこかで聞いた名前の気がするのよね…」

「うん、よくそう言われるよ…」

「そう。で、美樹さんはその、この学校の生徒?」

「え?」

「顔に見覚えはあるのよ。でもどうしても思い当たる子がいない。一通り把握してはいるつもりだったんだけど」

「あ、そうか。ええと、提携校から見学に来ていて、それでこの学校の制服も着てみないかと言われて」

「そういうことね。私もあちらには何回か行ったことあるから、その時にでも見たのかしら」

「そうかもしれないね」

 

 よかった、何とか切り抜けられそうだ

 

「お茶。冷めないうちにどうぞ」

「あ、うん」

「もしかして猫舌だった?」

「ううん、大丈夫」

 

 僕は湯飲みを取って、一口口に含んだ。鼻の奥にお茶の香りが拡がる。いい茶葉を使っているなあ、二木さんの趣味なのか、クドの趣味なのか。そう思いながら横目で二木さんを見る。二木さんも湯飲みを取ってお茶をすすっていた。飲み方が綺麗だ。育ちがいい所為だろうか。普段あまり意識しないけど、この人ってお嬢様なんだよなあ。そう思いながら、自然と目線が全身に移っていた。特に考えも無しに、目線が胸元にいっていた。本当に綺麗だなあ。

 

「なあに? 胸が気になるの?」

 

 そう言われてはっとした。慌てて顔を背ける。自分でも顔が熱くなるのがわかる。

 

「別に気にしなくていいのよ。男の子でもあるまいし」

 

 いや、男の子だけど。

 

「男の子に見られるのはやっぱり嫌なんだ…」

「嫌というより…見るだけ見て逃げられるのが嫌、かしらね」

「そうなんだ」

「どうして逃げたりするのかしら」

「それは…何というか、罪悪感があるから、じゃないかな」

「罪悪感、ねえ。だったら最初から見なきゃいいのに」

「そう思うからこその罪悪感だと思うよ」

「めんどくさいわねえ」

「男の子はめんどくさいものなのです」

「だったら、有無を言わさず押し倒すしかないじゃない」

「捨てたりしないならそれもいいと思うよ」

「そうなの? まあ、捨てるつもりなんてはなから無いんだけどね」

「あはは…」

 

 ふと思った。二木さん、何の話してるんだろう。

 

「あなたはどうなの? 何か随分と男の子のことに詳しそうだけど」

「え? う、うん、男の友達が多いから」

「そうなの。いいわね」

「いいんだ」

「いいに決まってるでしょう。私なんて、家が厳しかったから男の子と遊んだ事なんて無いし…どう接していいかすらわからない」

「そうなんだ…」

 

 そうか、僕って恵まれた立場にいるんだなあ。

 

 いや、待て。今のおかしい。僕はそもそも男の子なんだから。だから恭介達と一緒にいるのなんて、むしろ普通じゃ無いか。

 そういう立場にいるのは、むしろ鈴になるのか。そうか、鈴ってそういう立ち位置なんだ。クラスの女子達が鈴を見るときの、何とも言えない目線を思い出す。

 

 佳奈多さんがずずっとお茶をすする。

 

「あなたはどうなのかしら?」

「え?」

「見たところ、ええ、私が見た限りだと、とっても可愛いと思うのだけど。男の子から見てあなたはどうなのかな、と思って」

「え? さ、さあ。どうなんだろう」

 

 恭介も謙吾も真人も僕を好きだと言ってくれるけど、それはあくまで男の友達としてだし。たぶん。

 

「あくまで友達かな、今のところ」

「そうなの…」

 

 はぁ、と佳奈多さんはため息をついた。

 

「なかなかうまく行かないものね」

「友達でも十分だよ」

「友達にするらなかなかなれないんだけどね、私は」

「あ、ごめん…」

「いいのよ。私がふがいないのが悪いの」

 

 二木さんは天井を見上げた。

 

「そこまで気にするって、誰か気になる人でもいるの?」

「えっ!?」

 

 佳奈多さんは動揺を露わにして、持っていた湯飲みを落としそうになった。

 

「ふぅ、あぶないあぶない」

「そこまで動揺しなくても」

「だってあなたが変な事訊くから」

「変じゃないよ。今までの話の流れじゃない」

「まあ、そうなんだけどね」

「で、誰なの?」

「まだ訊くの?」

「うん」

 

 自分でも何故そんなに知りたがっているのかわからなかった。

 

「ここの学校の人よ…だから言ってもあなたにはわからないわ」

「知ってる人かもしれないよ?」

「だったら尚更言いたくない」

「どうして」

「どうしても、よ」

「強情だなあ」

「ええ強情よ」

「知れば協力できるかもしれないのに」

「協力って…」

 

 二木さんは口ごもった。そしてしばらくして、何か言おうと口を開きかけたとき、扉が開く音がした。

 

「かなたさん、いますか? ちょっとWifiルータ取りに戻りました。あ、いま…す…ね」

 

 部屋に入ってきたクドが、ベッドに並んで座る僕達二人を見て固まっていた。

 

 重い時間が暫し流れたあと、クドが口を開いた。

 

「かなたさんなにしてるですか?」

「何って…二人でお茶してるだけよ? ああ、この人は提携校から来た、美樹さん」

「いいえその人は美樹さんではありません。リキです」

「え?」

「いいえその人は美樹さんではありません。リキです」

「いや、繰り返せという意味では無く。…え? りき、って。直枝理樹?」

「直枝理樹以外に誰かリキという人がいるのでしょうか」

 

 二木さんはばっとこっちに向き直り、両肩をつかんで僕の顔をまじまじと確認するように顔を近づけてきた。僕の心臓はいろんな意味で爆発しそうだった。それを見たクドは泣きながら部屋の外に駆け出していってしまった。

 

「うわぁ~ん! はるかさ~ん、かなたさんがリキを部屋に連れ込んでます!」

「なにぃ!?」

 

 廊下から聞こえてくる声をよそに、佳奈多さんは僕を詰問していた。

 

「ちょっと、どういう事よ」

「ごめんなさい…」

「理由を訊いてるんだけど」

「みんなが…クドとか小毬さんとか…無理矢理…無理矢理僕を女装させて…」

「あの子達ったら…」

 

 佳奈多さんがきっと外の方を見ると同時に、怒りの足音と共に葉留佳さんが部屋に入ってきた。

 

「このエロ姉! 理樹君に何をしたぁっ!?」

「はぁ!? まだいやらしいことはしてないわよ!」

「まだ? まだって言ったよね今! これからするつもりだったの!?」

「言葉尻を捉えないで! あなた達こそ直枝に何をしてるの!」

「えっ、それは…いやでもお姉ちゃんみたいにいやらしい事なんてしてない!」

「はるかはしてたけどな」

 

 いつの間にか入ってきていた鈴が後ろから突っ込みを入れていた。

 

「え、ちょ、ま、鈴ちゃん!」

「なんということなの…。わかったわ、直枝は私が保護します。あなた達には渡さない」

 

 そう言って佳奈多さんは僕の肩に手をかけて引き寄せ、守るように頭を抱きかかえてきた。そこに入ってきた西園さんが、持っていたデジカメで写真を一枚、僕と佳奈多さんの姿を撮った。

 

「えっ」

「…なるほど。こうやって撮るのですね」

「そうして撮った写真からここの共有ボタンを押して、Twitterを選択」

「なるほどそうやってコメントが書き込めるのですね。【速報】女装した直枝さん二木さんの自室で逢い引き中、と」

「待ちなさい!」

「ちょっと待って!」

「送信してしまいました」

 

 僕を抱きかかえる佳奈多さんの腕から力が抜け落ちるのがわかった。僕も絶望しそうだった。

 

「お、みおのツイートが来たぞ」

「じゃあねえ。この、矢印が入り組んだボタンを押すの」

「それってリツイートボタンだよね!?」

「やめなさい!」

「押してしまった…」

 

 佳奈多さんはもう真正面を見る気力も無いようだった。それでも、何かの義務感なのだろうか、僕の頭を撫でながら大丈夫よ、大丈夫よ、あなたのことは守ってあげるから、と呟いていた。

 僕はいろんな意味で情けなくなった。

 

 

 

 その後、僕はそのまま二木さんの見ている前でみんなに陵辱されたのだった。

 

「お姉ちゃんがこの部屋に連れ込んだんだから、問題無いよねえ?」

「連れ込んだなんて言い方しないで」

「かなちゃんもやろう? 楽しいよ」

 

 二木さんは僕の方をちらと見た。僕は救いを求めるように二木さんを見た。

 

「そんな縋るような目で見られても…」

「守ってくれるって言ったのに…」

「こうするのが一番いいと思ったのよ」

「そんな…」

「まあまあ。二木女史だって本当は一緒にやりたくて仕方が無いのだ。あまり残酷なことを言うな」

「そんな…」

「はい、もう一枚」

 

 ぱしゃり。

 

「こうしてみんなで撮れば、佳奈多さんの疑いは晴れますよねえ」

「僕にかかった疑いは?」

「うたがいのよちなどないな」

「そんな…!」

 

 僕は涙目になりながら女装した姿でみんなとのツーショット写真を強要され続けたのだった。

 

 

 

 その後、鈴のリツイートを見た恭介が凄まじい形相で僕を助けに突撃してきてくれたらしいんだけど、入口で女子寮自主警備隊に阻止されて寮長さんの部屋に連れて行かれて、何かされたらしい。

 

 

 

 おしまいにしてよ。

 

 

 

 

 


こぴかな時々あー++

ヤマもオチもイミもなく、佳奈多が理樹を押し倒すSS

 

 今日は佳奈多さんとデートだ。佳奈多さんが人に見られるのは恥ずかしいって言うから、出来るだけ人目に付かないコースを選んだ。佳奈多さんはいつもの地味な私服だ。デート前に「制服と私服どっちがいい?」と訊いてくるから私服がいいんじゃないかなと答えたら、あなたは制服が好きだと思ったのにとちょっと不満そうだった。…いや、確かに佳奈多さんの制服姿は凛としていて素敵だけどさ。

 目立たないということで、目的地までの経路は住宅街の裏道を通ることにした。佳奈多さんは白い目で見てため息付いたけど、それ以上は何も言わなかったからよしとしよう。

 結構狭い道だし、溝のふたもない。僕は佳奈多さんの手を取って、佳奈多さんが落ちないように気を使いながら狭い道を歩いた。佳奈多さんのこと大事にしてるアピールをするチャンスだ。僕だってそれなりの計算はある。

 

「別に、ここまでしてくれなくたって…。転んだりしないわよ」

「うん、でも万一ということもあるし」

「そうね。あなたが転ぶといけないから、手を握っていてあげるわ」

「はは、そういうことでいいや」

 

 しばらく歩くと、佳奈多さんがふと立ち止まって片足をとんとんと地面に突いた。もう疲れたのだろうか?

 

「大丈夫?」

 

 そう訊くと、大丈夫よと答えて、佳奈多さんは足を戻した。そしてそのまま、その足を僕の前の方に移動させた。

 

 …どういうつもりだろう?

 

 よくわからなかったけど、たぶん足の運動か何かだろう。そう思ってそのまま跨いで歩き出した。佳奈多さんは小さくはぁとため息を付いて、僕に手を引かれて歩き出した。…何か不満だったんだろうか。少し気になった。

 

 しばらく歩くと、佳奈多さんが今度はいきなり足を突き出してきた。直前で気づいた僕は、はたと立ち止まった。

 一体どういうつもりなんだろう。僕は振り返って佳奈多さんの顔を見た。佳奈多さんなぜか目を逸らす。恥ずかしそうに目を合わせようとしない。僕は目線を足下に戻した。佳奈多さんの足はまだ僕の足の前にある。つま先が僕のすねに当たりそうだ。

 

 …これって。まさか。佳奈多さん、僕のこと転ばせようとしてる…!?

 

 いやいやいや。まさか。まさか。だって、あの佳奈多さんだよ!? 真面目一貫、世間知らず。ちょっぴりあぶないお姉ちゃんとも言われてるけど。でも僕と付き合うようになってからは葉留佳さんに変な事しなくなったって聞くし。

 …葉留佳さんの代わりに僕に変な事しようとしてる!?

 いや考えすぎだ。いやでも。いやいやいや葉留佳さんじゃ無いんだし。いやでも目の前に佳奈多さんの足あるし。

 

 気づかなかったことにしよう。そう決めて佳奈多さんの足を跨いだ。後ろから、はぁ、とがっかりしたような溜息が聞こえる。きっと佳奈多さん疲れてるんだ。早く目的地に着いて、少し休ませてあげよう。

 

 僕は佳奈多さんの手を引いて、少し早足で歩きだした。慣れない道だし狭くて歩きづらい。ちょっと蹴躓いてしまった。そう、ほんのちょっと蹴躓いただけだった。はずだった。

 

「大丈夫、直枝!?」

 

 そう叫んだ佳奈多さんは僕の手をぐいと引っ張った。片手だから体が佳奈多さんの方に反り返ってしまう。佳奈多さんの顔が見える。佳奈多さんってやっぱりきれいだなあ、なんて馬鹿な事を考えている間に、佳奈多さんはもう片方の腕で僕を抱きかかえてきた。そして掴んでいた手は放されてしまう。僕は抱きかかえられたまま、体重を佳奈多さんに預けるしか無くなった。

 佳奈多さんは腕をゆっくりと降ろしていったので、僕の体はだんだん地面に近づいていった。

 

「あの、佳奈多さん? なんか押し倒されてるんだけど…」

「大丈夫。今は誰も見ていないから」

 

 

 

 

 

 目的地の公園に着いた。少し休もう。いや違う、佳奈多さんを休ませるんだった。

 

「座って待ってて。飲み物買ってくるよ」

「自分で行けるわよ」

「僕が行くよ。佳奈多さん疲れてるんだから」

「そこまで疲れてないわよ」

「佳奈多さんいつも忙しいんだし。ここに座ってて、ね?」

 

 佳奈多さんをベンチに座らせて、僕は飲み物を買いに行った。佳奈多さんは無糖のお茶がいいかな。緑茶と紅茶はどっちがいいだろう。両方買って好きな方選んで貰えばいいか。

 

 佳奈多さんはベンチで大人しく待っていてくれた。そりゃそうだよ、佳奈多さん落ち着いた人なんだから。僕なんかよりずっと大人なんだから。

 ベンチは佳奈多さんの向こう側が空いていたので、僕は佳奈多さんの前を通ってそっち側に座ろうと思った。通り過ぎるときに佳奈多さんが足を突き出してきた。不意だったので、止まることもできずそのまま引っかかってよろけてしまった。

 まただよ、と思ってる間に、佳奈多さんが僕の体を抱きかかえてきた。

 

「地面は危ないわ、ベンチで寝てなさい」

 

 そう言いながら佳奈多さんは、そのまま僕をベンチに引き込んで押し倒してきた。

 

「あの、佳奈多さん…」

「大丈夫。今は誰も見ていないから」

 

 

 

 

 

 お茶を飲ませたら佳奈多さんは落ち着いた。というか僕も落ち着こう。

 ベンチに座ってお茶の缶を持ちながら、目線の先にある池と林を二人で眺めている。いいなあ、こういう時間。

 

「ねえ。ボートに乗らない?」

 

 佳奈多さんが提案してきた。

 

「うん、いいね」

 

 二人で貸しボートに乗った。

 

「直枝、漕げるの?」

「大丈夫だよこれくらい」

 

 そう言って僕はボートを漕ぎだした。佳奈多さんはじっと僕を見ている。恥ずかしいのといいとこ見せようという気持ちが相まって、僕は力を入れてボートを漕いだ。

 

「直枝、倒れそうよ」

「え? いや、漕いでる反動だよ」

「でも危ないわ。私の手に掴まって」

「大丈夫だって」

「いいから。言うこと聞きなさい」

 

 そう言って佳奈多さんは僕ににじり寄ってきた。そして僕の体を引き戻すのでは無く、逆に押し倒してきた。いやいやいや佳奈多さん、ここ、池の上だし。

 

「この方が安定するし安全でしょう?」

「僕の心が不安定だよ…」

「大丈夫。今は誰も見ていないから」

 

 

 

 

 

 帰り道。なんかもう疲れたのでいつもの普通の道を通って帰ることにした。大きな道だからか、佳奈多さんは手を繋いでくれない。まあ、僕も恥ずかしいけど。

 

「直枝、車に気をつけなさい」

「うん。佳奈多さんも気をつけて」

「私は内側にいるからいいの。それともあなたが内側に来る?」

「僕が外側で大丈夫だよ」

「そう言ってるうちに車来たじゃ無いの、ほら」

 

 そう言って佳奈多さんは僕の体をぐいと引き寄せた。そして車が通り過ぎたらそのまま押し倒してきた。

 

「佳奈多さん、さすがにこんなところで…」

「大丈夫。今は誰も見ていないから」

 

 

 でも僕には確かに見えていた。押し倒されてる最中に視界に映った、クドや葉留佳さん達の姿が。

 

 

 

 

「わふ。佳奈多さんったら…」

「マッタクあの姉、人が見てないとほんとやりたい放題デスネ!」

「見なかったことにしよう。そうしてあげよう、ね?」

 

 

 

 

 


こぴかな時々あー++

保健室

 

「佳奈多さん、やめて…!」

 

 僕たち二人以外誰もいない保健室。ベッドの上で僕は佳奈多さんに押し倒されていた。腕に力を入れてはねのけようとする。でも佳奈多さんの押さえつける力の方が強かった。

「随分鍛えたみたいね。でもお生憎様…私があの家から求められていたのはこんな程度の力じゃないの。私はずっとそれに応えてきた。体も。頭も。心ですら、求められれば差し出してきた。従わなければ私たち姉妹は生き残れない、それ程までに大きな力。逆らいたいなら並大抵でない力が必要。今私が必要としているのは、そういう力。──あなたが逆らえるようなものじゃない」

 佳奈多さんは僕を押さえつけながら、耳元でそんな脅迫めいた言葉を言い続けた。僕は逆らえなかった。逆らってはいけないんじゃないか、むしろそんな風にすら思えた。

 僕の力が弱まったことを感じ取った佳奈多さんは、少しだけ優しい表情になって、後ろに手を伸ばした。僕と佳奈多さんの服が少しだけ脱がされ。佳奈多さんは僕を犯しはじめた。

 

 抵抗しないようにしよう。余計な事は何も考えないようにしよう。そう思って心を空っぽにした。僕の上に乗る佳奈多さんの感触と、それに合わせた佳奈多さんの息づかいは、なかなか消し去れなかった。

 むしろそれで心がいっぱいになってしまっていた。

 心が満たされていた。

 

 これは佳奈多さんに気づかれてはいけない、理由はよくわからないけどそう思った。そっと目を閉じた。そしてもう一度開いたとき、視界には満足そうにほほえむ佳奈多さんの顔が映っていた。気づかれている。そう悟った。

 自分の行いが裏目に出た悔しさと、そもそもなんでそんなことをする必要があるのかという自分のばからしさに、思わず顔を歪めてしまった。

 そんな僕の頭を佳奈多さんはそっと撫でながら語りかけてきた。

「馬鹿な子ね…本当に、馬鹿な子…」

 

 何か答えたかった。でももうそれすら出来なかった。身も心も、完全に佳奈多さんに支配されていた。もう、佳奈多さんに逆らうのは無理だ。

 僕が諦めるのを待っていたかのように、僕の下の方から佳奈多さんに子供を産ませたいよという合図が伝わってきた。

 

 いや、それは駄目だ。僕は快感を必死で振り払い、佳奈多さんに話しかけた。

 

「佳奈多さん…その…でちゃいそう…」

「そう」

 

 佳奈多さんは短く答えて、そのまま僕の上で動き続けた。伝わっていないのだろうか。僕が不安げに佳奈多さんを見ると、佳奈多さんはまた優しい表情になって答えた。

 

「大丈夫。大丈夫、だから」

 どう大丈夫なのか、その意味もわからないまま、僕は勝手に安心感に包まれていた。もう止められなかった。僕の幸せな思いを佳奈多さんに受け止めて欲しい、そう思った次の瞬間、僕は果てた。

 佳奈多さんもきっと幸せに感じてくれている。勝手にそう思っていた。

 

 暫く恍惚の時を過ごしたあと、我に返った僕は、薬棚に行くため起き上がろうとした。そんな僕を佳奈多さんが引き留めた。

「どこへ行くの?」

「薬棚。あとから飲む避妊薬があるかもしれないと思って」

「──必要無いわ」

「え? でも」

「大丈夫、って言ったじゃ無いの」

「そうなの?」

 佳奈多さんは無言で僕を引き寄せた。僕は佳奈多さんに従うことにした。

「こんな事訊いたら怒られるかもしれないけど…今日は安全日なの?」

「安全日? ああ、生理ね。そうね、そろそろかしら」

「えっ。じゃあ薬、あらかじめ飲んであったの?」

「そんなもの飲んでないわ」

 

 血の気が引いた。一気に頭が冷めて、そして熱くなった。混乱しそうだった。

「だって…さっき、大丈夫だって…」

「そうよ。大丈夫。ちゃんと──育てさせるから」

 佳奈多さんが何を言っているのかわからなかった。

 

 佳奈多さんは、僕に顔を近づけてきて、耳元で囁き始めた。

「私のあの家での役割は、尊い三枝の世継ぎを産むこと。勉強もスポーツも、結局はその尊さを証明するためだけのもの。いづれ私は、あの家の男のうち誰かの子供を産まされることになる…ううん、それはもう明日かもしれない」

 僕は言葉を発せなかった。佳奈多さんはそのまま続けた。

「私の産む子供は、三枝の世継ぎと決まっている。そうでなければならない。あいつらは一生懸命、私の産んだ子を育てるでしょうね。自分たちの優秀さを証明するために。でもその子供は三枝の子じゃ無い。私が愛して、私が選んだ男──直枝理樹、あなたの子。それをあいつらは自分たちの同類だと思って一生懸命育てるの。ねえ、それって最高におかしいと思わない?」

 そこまで言って佳奈多さんは、僕の胸に顔をうずめて、くっくっと声を上げた。泣いているのか笑っているのかさえわからなかった。僕は何も声をかけることが出来ず、ただ佳奈多さんをそっと抱きしめることしか出来なかった

 

 

 

 

 



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