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こぴかな時々あー++

魔法少女はるカ☆カなた

 

 この物語は、鬼の風紀委員長とは名ばかりのシスコンダメ姉な佳奈多ちゃんが、妹の葉留佳を守る為に空回り孤軍奮闘する涙の物語です。

 なんか似たような名前のSSが既にあったような気がしてなりませんが、たぶん気のせいでしょう。

 

 

 名ばかりとは言っても、鬼の風紀委員長としての名目は保っている佳奈多ちゃん。今日も職務に励んでいます。何故か今日は目の下のクマが異常に濃いですが。

「委員長。今日は特にお疲れの様子ですが、大丈夫ですか?」

「大丈夫よ、問題無いわ」

「そうですか。でも見るからにお疲れですし、今日の残作業は我々が引き受けますから、お休みになっては?」

「…そうね。今日はもう急ぎの案件も無いし。お言葉に甘えて引き上げさせて貰うとするわ。…あ、でも」

 佳奈多は一枚の書類を風紀委員に渡します。

「これだけは処理しといて」

「至急呼び出し、ですか。中庭ですか? ここじゃなくて?」

「ナイーブな問題なのよ、出来るだけ事を荒立てたくないの。だから行くのも私一人だけで十分よ」

「わかりました、すぐに放送部に手配をしておきます」

 

 

 

 そして佳奈多は、呼び出し場所の中庭に向かいました。中庭では真人が片腕立て伏せをしていました。佳奈多特に動じません。真人が、当の呼び出しをかけた相手だった為です。

 

「よぉ、遅かったじゃ無いか」

「その台詞は死亡フラグよ」

「あまり一般的では無いだろう。ちなみにオレはスイカを育てたりはしてねえぜ」

「代わりにマナカを育てたりしてないでしょうね」

「…やめようぜ、こういう話題。他人に聞かれたら俺たちがそういう人種だと思われる」

「…そうね。でも、今の話で確信できたわ。あなたが『Q』だということが」

「おいおい、今やめようぜって言ったばっかじゃねえか。だいたい公開は来年だぜ、Qが何なのかもわかんねえだろ」

「沖縄じゃまた桜坂劇場で再来年になりかねないけどね。…まあ、洋画偏重の国場を恨んでも仕方ないわ。だいたい、そっちのQのことじゃないし」

「さっき『今の話で確信できた』って言ったばっかじゃねえか」

「あなたがQに反応するという事実が大事なのよ、Q太郎」

「今度はQ太郎かよ。て言うかオレQ太郎て名前じゃねえし。井ノ原真人だよ。て言うかその名前で呼び出しかけてるだろ」

「そう。あなたはそうやって、人類を欺いているのよ」

 佳奈多ちゃん、なんだか電波炸裂状態です。真人大弱り。

「…なあ、手っ取り早く本題に入ってくれねえか?」

「わかったわQ太郎。…私は、あなたを抹殺する。葉留佳を魔法少女にさせない為に」

「は? いや、本気で意味不明だし。それにQ太郎じゃねえし」

「しらばくれても無駄よQ太郎、いえ、インキュベーター。」

「いや、インキュベーターでもねえし。て言うかなんだよそれ。何でオレがそんな呼ばれ方されなきゃならねえんだ?」

「あなたの名前。井ノ原真人と名乗っているわね。インキュベーターとそっくりじゃない」

「いや、全然似てねえし。『い』しか合ってねえし。言いがかりにすらなってねえし。あまりの理不尽さに怒る気にもなれねえぜ」

「そう。じゃあ『イノセンスハァト』とでも呼んで欲しいのかしら?」

「いや確かに字数増えたけどさ。その呼ばれ方かなり恥ずかしいし」

「そう。じゃあQ太郎でいいのね」

「いやそれもよくねえよ。だいたいなんでオレがQ太郎なんだ」

「あなたこの間、棗さんと肉球について激論していたでしょう。その肉球へのこだわりこそ、正にあなたがQ太郎である証拠よ」

「オレは筋肉専門なんだよっ! 肉球にこだわってたの鈴の方だぞ! 言いがかり付けるなら鈴にしてくれよっ!」

「あの子女の子よ。太郎呼ばわりは失礼でしょう」

「だったらQ子でいいだろっ! 何でそこまでしてオレをQ太郎にしたがるんだよ!」

「じゃあどう呼んで欲しいのよ」

「普通に真人と呼んでくれよ…」

「いきなり下の名前で呼べだ何て。よほどフレンドリーなのか、それとも私に気でもあるのか…どっちなの?」

「前者でいいよ…いいから早く用事済ませてくれよ」

「用事はさっき言ったとおりあなたの抹殺だけど、異議は無いのね」

「しまったぁ…! いや、抹殺は勘弁してくれ、せめて抹茶にしてくれ」

「あなたに茶の湯の心がわかるとでも言うの?」

「ぐ…残念だがオレにそんな教養はねえ…」

「ならこれ以上は問答無用ね。抹茶の代わりにこの赤マルソウ1.5リットルパックを一気飲みしなさい」

「赤マルソウって味噌と醤油どっち…ぐ、やはり醤油か…」

 真人は倒れてしまいました。醤油1.5リットル一気飲みさせられたら、普通は倒れますね。というか病院行った方がいいです。

「…Q太郎、やはり話の通じる相手じゃなかったわね…」

「いや、話通じないのどう考えてもおめ…ガクッ」

 

 

 

 数分後。倒れている真人の近くを葉留佳が通りかかりました。

「救急戦隊ゴーゴーファイブってどう考えても特警ウィンスペクターの焼き直しじゃんって思ってたの私だけですか? って真人君どうしたデスカ!?」

「…風紀委員長にやられた…とりあえず水をくれ…」

 葉留佳 は真人に目隠しをしました。

「…何がしたい」

「『見ず』。Don't show.英語合ってますカネ?」

「英語以前に日本語を勉強してくれ…無い知恵絞っていえば、オレが今欲しいのはH2Oだ。あ、先に言っておくとギャルゲーじゃないぞ」

「わかりました、阪神阪急ですネ。でも今年はもう中日が優勝しちゃいましたヨ?」

「チクショウ、最近の企業グループの名前意味わかんなさすぎだぜ! って違えよ! て言うかお前理系だろ、普通化学式連想するだろ!」

「数学が得意だからと言って化学も得意だとは限らないのデスヨ」

「いやもう変な理屈はいいから、水をくれ…マジ死ぬ」

「はるちんがいつも携帯しているポカリスエットとトマトジュースがありますが、どっちがいいですカ?」

「今のオレにはどっちもキツイが…背に腹は代えられん、ポカリをくれ」

「160円になりマス」

「微妙にボッタクりと言えないところが余計に腹立たしいぜ…金はポケットに入ってるから、早くポカリをくれ」

 ポカリを飲んだ真人は、やっと落ち着きました。

「で。一体何をしでかしたんデスカ」

「何もしてねえ…わけのわからん言いがかり付けられて…ああ、そう言えば何か、魔法少女がどうとか、お前を守るとか何とか言ってたな」

「あー…あのバカ姉、また暴走してますネ」

 はるちん、何か心当たりがあるようです。

「オレに非があるなら文句は言えねえ。けど、何もしてないのにこの仕打ちはあんまりだ。チクショウ、このままじゃ腹の虫が収まらねえ」

「ふむ…。では一つ、ぎゃふんと言わせてやりますカ」

「『ぎゃふん、これで気が済んだ?』、で終わりそうだが」

「確かにそう言いかねませんガ、別にぎゃふんという台詞にこだわってるわけではないデス。要は、はるちん自ら魔法少女になって、きゃつめを困らせてやろうというわけデス」

「なるほど…」

 何かがおかしい気がしますが、気にしちゃいけません。この二人ですから。

 

 

 

 そして葉留佳と真人は、恭介の部屋に行きました。

「そういうわけで魔法少女に詳しそうな棗先輩に相談に来マシタ」

「三枝。お前は俺という人間を誤解している」

「いいや、誤解してない。わかるぞ、はるか。上が馬鹿だと妹が苦労するんだよな、うんうん」

 一緒に居合わせた鈴が葉留佳の肩を叩きます。

「こんな事で鈴ちゃんと意気投合するとは思いませんでしたヨ」

「鈴はこんなとこで何してんだ?」

「フ。それは勿論、兄妹でいけない事をしていた」

「いけない事?」

「宿題がわからないから教えて貰っていた。丸写しじゃ無いんだからそんなに悪い事じゃないと私は思う」

「むしろいい事デスネ」

「だが恭介の一言で台無しだな」

「そうだ。だから私はこいつを馬鹿兄貴と呼ばざるを得ない」

 恭介四面楚歌。

「…まあ、いい。で、魔法少女がどうしたって?」

「魔法少女になって姉をぎゃふんといわせたいのデス」

「なんでそうなるのか話の筋がよくわからん」

「姉は優等生に見えますガ、実はかなり子供っぽいのデス。今はどうやら、私が騙されて魔法少女にされるのを阻止する、という設定にはまり込んでいるようなのデス」

「二木ってそんな奴なのか?」

「この間もタンスの奥に、俺の妹が~とかいうライトノベルとアニメを隠してあるのを見つけてしまいマシタ」

「三枝、いくら姉妹とは言え、他人のプライバシーを暴くような真似は感心しないぞ」

「わざとじゃないですヨ。また下着が無くなったのでどうせ姉の仕業だろうと思って探していたら偶然見つけてしまったのデス」

「なあ鈴。オレ、なんかいろいろ聞いちゃいけない話を聞いちまった気がするぜ…」

「安心しろ、私も同じ立場だ」

 仲間がいるって心強いですね。

「とにかく姉は異常なのデス。…あ、今は異常なのデス」

「だからまずはそのふざけた幻想をぶち壊してやろうってわけか…。いいぜ、乗ってやる」

「まずお前自身が既に幻想にとらわれていることに気づけ」

 鈴ちゃん容赦ないです。

「さて、魔法少女といってもいろいろあるが…。Key系だとまじかるさゆりんか藤林杏あたりになるが、そういうのか?」

「イエ。名前は言えませんが2011年ダントツの最高傑作といわれてる、アレデス」

「ああ。俺はアニプレックスが許せないからDVDは買ってないが、内容は把握している」

「素直に金が無いと言え」

「要するに、奇跡はそれを超える代償無しには得られないという、熱力学第二法則を解説するアニメだったな」

「まあ、そうとも言えますネ」

「なら何も魔法に固執する必要は無いわけだ。物理少女はるか☆フィジカ、何てどうだ?」

「いやー、個人的には悪くないデスガ、それで姉の鼻を明かせるかっていうとどうだか」

「『魔法少女』にはならずに済んだ、て解釈しちまう可能性はあるな」

「よし、ここは変な小細工はせずに、正攻法でいこう。まずは魔法少女になる仲間を集めるんだ」

「仲間デスカ。沖縄に行けばいいんデスカ?」

「そういう使い古されたネタはよせ」

「いやー、はるちん実際沖縄に行ってるんで、つい」

「麻枝が異常に嫌っている豚足は美味かったか?」

「それなりに。あと、ミミガーが安くて食べ応えがありましたヨ。有月さんに教えてあげたいデス」

「だがミミガーはカレーには向かないだろう…ってそんな話をしてる場合じゃない。三枝、お前に友達はいないのか?」

「ここにいるみんな友達デスヨ」

「チクショウ、嬉しい事言ってくれるじゃねえか…」

「うむ。だが俺が言いたいのは、一緒に魔法少女になってくれそうな友達のことだ。ここにいるのは野郎ばかりだろう」

「鈴ちゃんは女の子デスヨ?」

「確かにそうなんだが、鈴ではなんだか面白みが無い気がする」

「はるか、私は今馬鹿にされたのか?」

「よくわからないデスガ、とりあえず蹴っていいデスヨ」

 

 

 

 仲間を求めて彷徨っていた葉留佳達は、理樹と出会いました。

「そういうわけで、理樹。魔法少女になれ」

「…え?」

「なるほど。確かに理樹ならうってつけだな」

「いやいやいや」

「姉の罵倒も理樹君なら喜んで受け入れそうデスシ」

「ちょっとそれ酷い誤解」

「私も、私より理樹の方が魔法少女に相応しいと思う。それ以前に私はなりたくないが」

「いやいやいや、だからみんなちょっと待ってよ、根本的なところでおかしいでしょ!?」

「何がだ?」

「だから。少女ってのは、大人になる前の女性のことをいうんでしょ」

「それがどうした」

「僕、男だよ!?」

「え?」

「え?」

「え?」

「え?」

「ちょっと! 何その反応!!」

「理樹。現実逃避はよせ」

「それこっちの台詞!」

「諦めろ理樹、まともな理屈が通じる相手じゃ無い。それに理樹が断ると私が魔法少女にされかねない」

「何て身勝手な」

「しかし実際、理樹君には姉の目を覚まさせる力があるような気がしマス」

「違う方向に目覚めそうだけどな」

「だが適任だ」

「よし、決まりだ。次行くぞ」

「ちょっと! 僕の意志完全無視!?」

 

 

 

 そして一行は、寮事務室にやってきました。

「何故ここに?」

「例の魔法少女モノの中に、先輩キャラがいただろう。それを確保しなければならない。しかし俺らの周りで女の先輩キャラといったら、ここにいる寮長ぐらいだ」

「クドわふたーにフェルマーの定理を語れる科学部部長がいましたけどネ」

「だがあれは系列校の生徒だ。今すぐには確保出来ない。そういうわけで者ども、突入だ!」

「いや、普通に入ろうよ」

 ドアを開けた一行が部屋に入ると、中には女子寮長、通称あーちゃん先輩がいました。本名は不明です。

「なので仮に早坂アコとしておく」

「何意味不明な事言ってるのよ」

「アコ、三枝と一緒に魔法少女になってやってくれ」

「やーよ」

「うわ即答」

「廊下での会話、聞こえてたわよ。先輩魔法少女でしょ? 魔女に食べられて死んじゃう。いやよそんな役」

「…まあ、そうですヨネ…」

 一同しょぼくれます。その姿を見てあーちゃん先輩、にやつきながら言いました。

「…んー、でも…アタシが食べる側だったら、別にいいかな…。にゅっふっふ」

 独特な笑い方をしながら、あーちゃん先輩が恭介の方を見ます。恭介は逃避モードに移行します。

「あー、いや、その、なんだ。うむ、すっかり忘れていたが、俺は就職活動の為石垣島に行かねばならんのだった。そういうわけでさらばだ、アデューアディオス再見うわ何をするお前らこらやめ」

 葉留佳達は恭介を捕らえて、あーちゃん先輩に引き渡しました。

「どうぞ」

「あらやだぁ、そんなつもりじゃなかったのにぃ、でも折角の行為を無碍にするのもなんだしぃ」

「いやだから俺は今から石垣島に」

「石垣島は徒歩では行けないわよ。アンタ飛行機代出せるの?」

「船便で行くさ」

「残念。石垣航路は運行していた会社が倒産して、旅客便は今は無いのよ」

「くそ、抜かった…ッ!」

「にゅっふっふ~。さ~て、嘘付いたおしおきしないとね~」

「あの~、はるちん達、外に出ときますね」

「あらぁ、そんな気遣わなくていいのよぉ」

「いえいえ。どうぞごゆっくり」

 葉留佳達は寮事務室を後にしました。

 

 

 

「…あれでよかったのかな?」

「いいんじゃないデスカ? どのみち先輩魔法少女は3話で消えることになってますし」

「馬鹿な兄だったが、それなりにいいところもあった…」

「魔女と戦うって事がどういう事か、身を以て教えてくれたんだね」

 一行は勝手な事を言いながら廊下を歩いて行きました。

「さて、後は最後の一人を見つけるだけか」

「でも最後の一人っていきなり殺し合いになるんだよね? そんな人いるのかなあ?」

「伊吹風子なんてどうデスカ?」

「いや確かにある意味まんまだけど、俺らと作品違うし」

 そんな事を話しながら歩いていると廊下の先に佳奈多と小毬が話しているところを見つけました。

「…お姉ちゃん、何やってんデスカ」

「あら葉留佳。あなた、魔法少女になろうとしているようね。あれほど忠告したのに」

「いや、この件に関してはまだ何の忠告も警告もされていませんケド」

「でもお生憎様。この学校の魔法少女は、神北さんに任せることにしたから」

「…え?」

「そういうことなの。葉留佳ちゃんごめんね~」

「でも待って。確かに小毬さんはお菓子食べまくってるけど、他の魔法少女と殺し合いするような人じゃ無いよ」

「…直枝理樹。あなた、神北さんに死ぬほど恥ずかしい目に遭わされたそうね」

「…えっ!? 何故それを…」

「ん? 何だ、何の話だ?」

「う~ん。たぶんね、理樹君に私の服着せて写真撮りまくったことがあるんだけど、その時の話だと思うの」

「あー。あの恥ずかしい私服デスカ」

「お前が言うなよ」

「で、でも。僕と小毬さんは別にいがみ合ってるわけじゃ無いし」

「そうね。確か…最後は泣くほど仲良くなったのよね」

「いや、最初から仲いいから」

 理樹の抗議も無視して、佳奈多は蕩々と語り始めます。

「立場や生き方が違っても、手を取り合って戦うことは出来る。望んで魔法少女になった者なら、それはむしろ必要なこと。でも…」

 佳奈多は、葉留佳を指さして、続けます。

「葉留佳。あなただけは、魔法少女にはさせない。そんなの私が許さない」

「いいえお姉ちゃん、私は魔法少女になる。そう決めたの」

 いつになく真剣な表情の葉留佳。その気迫に来押されしたのか、佳奈多はへたり込んでしまいます。

「そんな…ッ! 葉留佳、どうしてあなたは…! そうやって自分を貶めて…。あなたのことを大事に思っている人のことを、少しは考えて!」

「…イエ、そんな自虐的な思考は持っていませんガ。そもそも誰の所為でこういう事態になってると思ってるんデスカ」

「とにかく、葉留佳 は魔法少女になんかなっちゃいけないの。ううん、ならないで!」

「まだ言いますカ。…仕方ないですね。問題を解決するにはやはり私が魔法少女にならなければいけないようね」

 葉留佳は普段と全く違う表情になり、真人の方に向き直って言いました。

「さあ、井ノ原Q太郎。私の願いを叶えて、魔法少女にして!」

「いやだからオレQ太郎じゃねえよ。お前までなんなんだよ」

「いいからこの場は合わせて下さい」

「…わかった。さあ三枝葉留佳、魔法少女になる代償に、お前は何を願う?」

「願い…? そうですね…。」

 葉留佳は、暫し考えて、そして言いました。

「私は、人を殺して奇跡を乱発する風潮を無くしたい。僻みで世界観を作ったり原案を改変してしまうライターや、中身も見ずに中傷する狂信者そのものを消し去りたい!」

「その祈りは…そんな祈りが叶うとすれば、それは作品批判なんてレベルじゃ無い。keyそのものに対する反逆だ! 三枝、お前は城桐を神にでもするつもりか!?」

「神様でも何でもかまわない。私は、keyの魂を信じて付いてきたみんなの願いを無駄にしたくない! さあ、かなえてよ井ノ原Q太郎!」

「ムリ」

 それまで真剣な表情で聞いていた佳奈多が、思い切り突っ伏して廊下に頭をぶつけてしまいました。結構いい音したので、小毬が少し慌てています。

「と言うか、姉の鼻を明かすという話から、えらく大きく飛躍したな」

「いやー、なんかつい調子に乗ってしまって。正直スマンカッタデス」

「でもちょっと本気入ってたよね」

「本気で遊ばなきゃ面白くないってもんですヨ」

 そう言った後、葉留佳は佳奈多に手をさしのべて、言いました。

「でしょ? お姉ちゃん」

「葉留佳…いえ、私は…」

「ずっと私の為に戦い続けてくれたから。いろいろごちゃ混ぜになっちゃったんだよね。これからは、羽目の外し方も覚えていこう」

「はるかは外しすぎない方法を覚えた方がいいと思う」

「鈴、あんまり突っ込みすぎると今度は自分に返ってくるよ」

「そうだよ鈴ちゃん、今はちょっといい所なんだから」

 周りが見守る中、葉留佳と佳奈多の会話は続いていました。

「葉留佳…こんな馬鹿な姉を許してくれるの?」

「馬鹿な姉なら許しマセン。でもお姉ちゃんは馬鹿じゃ無いはずデス」

「葉留佳は…葉留佳を妬んで葉留佳の変装をしたり逆に過保護に走ったりする私を、馬鹿じゃ無いと言ってくれるの?」

「馬鹿と言うつもりはありまセン。ケド…下着を盗むのはさすがに勘弁して欲しいですネ」

「盗んでないわ…交換してるだけよ」

「いや…それもっと嫌なんですケド」

「えーっと…そろそろ突っ込みどころなのかな?」

 小毬の言葉が締めになって、そのままこの場は解散になりました。

 

 

 結局、奇跡も魔法もありませんでしたが、彼女達にはそんなものは必要無かった、ということなのでしょう。

 これがめでたいかどうかは、これから長く続く人生の中で決まっていくことです。

 

 

 ちなみに、後日最大の被害者である真人の元に佳奈多から詫び状が届きましたが、生真面目な佳奈多の書いた長文の詫び状は、却って真人を苦しめることになるのでした。

 

 

 

 

 

「…というお話だそうです」

「そうですか。相変わらずはた迷惑だけど愉快な人達ですね」

「ところで、西園さんはこの手の話には絡んできやすそうに思うのですが、全然名前が出ませんでしたね」

「…能美さんは私をどういう人間だと思っているのですか?」

「はう…すみません」

「謝らなくてもいいですが…。そうですね、私は、美少年がたくさん出ないアニメには興味ありませんから」

「そうですか? でも、そもそもの発端は、西園さんが佳奈多さんにDVDを貸したのが始まりだと聞きましたけど」

「…。」

 

 

 

 

 

 

 

 


こぴかな時々あー++

半分÷半分の誕生日

 

「姉妹はいつでも半分こ。二木は昔、三枝にそう言ったらしいな」

 誕生日を前にした佳奈多を前に、突然恭介が切り出した。

「ええ。確かに昔、そんな事も言いましたね」

「だからお前達姉妹は、毎年同じ日に誕生会をやっていると」

「いえ、待って下さい。私達は誕生日が同じなので、それで同じ日になってしまうだけです。別に半分こしてるわけでは無いです」

「そうなのか。だが、三枝はそうは思っていないようだぞ」

「そうなんですか?」

「たまには自分一人でみんなに囲まれた誕生会をやりたいと」

「──そうですか。あの子がそんなことを」

「そこでだ。俺達は考えた。中途半端な半分こでは無く、もっときっちりけじめを付ければいいのでは無いかと」

「そうですか。何をなさるおつもりで?」

「10/13を午前と午後に分ける」

「単純ですが、確かにはっきりしてますね」

「職員室に体育館を丸一日借りる許可を貰ってきた。そこで、午前中に三枝の誕生会を、午後に二木の誕生会をやる。寮会生徒会文化部会の承諾も取り付けてある。あとは一応運動部会の承諾も貰いたいわけだが」

「何も体育館まで借りる必要は無かったんじゃ無いですか? それに私の分は結構ですよ」

「まあ、これも三枝の希望でな」

「そうですか。まあ、あの子がそう希望しているのなら」

 そう言って佳奈多は、手にしていた書類を束ねてとんと置いた。この話は終わり、了承。わかりやすい意思表示だった。

「意外とあっさり承諾したんだな」

「抵抗して何か得があるとでも?」

「いや、いいんだ。じゃあ当日の準備は俺達でやるから、二木は三枝の誕生会が始まるまでに来てくれればいい」

「そうですか。それは助かります」

 

 そして10月13日がやってきた。

 午後0時を挟む昼休みの1時間、それとその前後の数コマを休講またはずらすことで、三枝葉留佳と二木佳奈多の全校一斉誕生会の時間が確保されていた。午前中は三枝葉留佳の、そして午後0時になると同時に二木佳奈多の誕生会に切り替わる、と進行表ではそうなっていた。

 

「休講にしてまでこういう事をするのは感心しないのですけど」

 葉留佳の部が始まる直前にやってきた佳奈多は、呆れ気味に主催の恭介に話しかけた。

「先生方も勤め人である以上有給休暇を取りたいという事さ」

「それでですか。職員組合まで動かしたと聞いたときは何事かと思いましたが」

「職員組合だけではないさ。必要な関係諸機関には全て手回ししてある。消防とかな」

「どんな危険なことを企んでるんですか…」

「そんなおおげさな話じゃ無いさ。何かあったときの念のため、というだけだ」

「そうですか。ではひとまずその言葉を信じることにします」

「ああ、悪いようにはしないつもりだ。ほら、三枝の誕生会が始まるぞ」

 恭介が顔を上げて目線を前方にやる。壇上に設けられた特別席に葉留佳が座り、周りを選ばれた数名が取り囲んでいる。檀の下にも何名かが集まっている。

「ほら、二木も行ってやれ。三枝が一番来て欲しいのは二木、お前じゃ無いのか?」

「──そうですね。人の多いところは苦手なのですが、葉留佳の為というなら」

 そう言って佳奈多は、葉留佳とそれを囲む一団に近づいていった。

 

「よお。遅かったじゃ無いか」

 謙吾に声をかけられる。

「時間通りに来たつもりだけど?」

「いや、二木が来たらそう言ってくれと頼まれていてな」

「誰に。葉留佳? 棗先輩?」

「いや、西園だ」

「西園さん?」

 佳奈多は壇上にいる西園美魚をちらりと見た。葉留佳と何か詰めの打ち合わせでもしているようだ。

「何故西園さんが」

「そこは俺もよくわからん。お、何か始まるようだぞ」

 壇上では葉留佳を取り囲む一団が一斉に拍手を始めていた。それにつられるように、段下にいる生徒達も拍手を始める。佳奈多も合わせるように拍手をした。

「おめでとう」

「おめでとう」

「おめでとう」

「おめでとう」

「おめでとう」

「おめでとう」

「おめでとう」

「おめでとう」

「ワタシハココニイテイインダ!」

 葉留佳が天井を仰ぎながら何か叫んでいる。

 

「…なんなの、あれは?」

「いや、だから、俺にはよくわからん」

 佳奈多の心に、にわかに不安感が拡がり始めた。あれが何なのかよくわからないけど、もしかして同じ事を自分もやられるのでは無いだろうか。いや、あれと同じでは無いにしても、ああいう恥ずかしい思いをする何かをされるのではないだろうか。そもそも、この誕生会は葉留佳の希望したものなのだ。

 

 葉留佳が私にしたがること──。

 

 そう考えると、佳奈多の背筋には寒気が走った。どんな目に遭わされるかわかったものでは無い。しかも協力しているのはあの棗恭介だ。

 

 企画:三枝葉留佳、実行:棗恭介。佳奈多の目には悪夢しか見えなかった。

 何とかしてこの場から逃げ出さなくては。

 佳奈多は咄嗟に周囲を見渡した。出入り口は、受付と称して残された一つを除いて、全て封鎖されている。受付のある出入り口も、すぐに閉じられるよう両脇を生徒が固めている。さらに、その生徒を守るように、体育会系の生徒が警護している。封鎖されている出入り口も、やはり体育会系の生徒達によって守られている。

「(私が逃げ出すことは織り込み済み、か──)」

 他に逃げ出せる場所はないだろうか。窓なら上の方にもある。が、あそこから飛び降りるなど自殺行為だ。楽屋や倉庫から抜け出せるルートは無かっただろうか。佳奈多は必死に考えた。おそらくはそこにも人が配置されているだろう。通路はあってもとても狭い。数名いれば簡単にブロック出来るだろう。

「(緊急時の避難計画を見直した方が良さそうね…)」

 こんなときにでも、そんな事を考える余裕があった。否、むしろそんな事を考える程度にしか余裕が無かった。佳奈多は完全に追い詰められていた。

 佳奈多は壇上に目をやる。葉留佳を取り囲む中に、小毬や唯湖の姿もある。そういえばあの子達は、屋上や放送室と行った逃げ場を確保して、これまでを凌いできたのだったかしら。

 ──逃げ場所といえば、自分にもあるじゃないの。保健室が。

 気分が悪くなった、休みたい。保健室に行きたい。そう言って、堂々とここから出ればいいのだ。あとは、今回の誕生会に確保していた時間が過ぎるまで保健室で休んでいればいい。それ以降はちゃんと授業をやることになっているのだから。

 

 方針を決めた佳奈多は、身近にいた謙吾に話しかけようとした。

「宮沢、私、少し気分が──」

「うおっ、なんだあれは」

 佳奈多が話しかけたその時に、謙吾が声を上げる。その視線の先には、大道具用に確保された大きめの出入り口があった。先程まで閉鎖されていた扉が大きく開け放たれて、外から白色の大型車両がバックで入ってきていた。

「オーライ! オーライ! オーライ! オーライ! ストーップ!」

 高規格救急車だった。車の中から乗り込んでいた医師と看護師が降りてくる。

「ドクターカー!? 何故あんなものが…」

 唖然とする佳奈多の下に、恭介が歩み寄ってきた。

「恭介。なんだあれは?」

 呆然としたままの佳奈多の代わりに謙吾が尋ねる。

「ドクターカーだ」

「それくらいは俺も知っている。何故そんなものを呼んだ」

「折角の誕生会なのに、急病人が出て中座する人間がいては水を差すことになるからな」

「誕生会にドクターカーを呼ぶ方がよほど水を差す気がするのだが…」

「しかし三枝がしきりに二木の体調を気にかけていたからな。よく保健室通いをしていると」

 気づかれていたのか──。そう思うと、佳奈多の口元に何故か自然と笑みがこぼれた。しかし、今は笑っている場合では無い。

「なるほど。確かにドクターカーがあれば、体調を崩してもこの場で治療や休養が出来るな」

「ちょっと宮沢、何丸め込まれてるの!?」

「そういえば二木、さっき気分がどうとか言いかけていたような」

「気が晴れたわ。ええ、あまりにもサプライズ過ぎてもう、気が晴れたわ」

「そうか。それは良かった」

 全然よくない。これでもう完全に逃げ道は塞がれた。

 佳奈多は絶望感でいっぱいになった。

 

「おっ。そろそろ12時だな。お姫様の交代だ」

 前方に掲げられた時計を見ながら、恭介が言う。佳奈多には時間が無い。このままでは、自分は壇上に上げられて晒し者にされてワタシハココニイテイインダとか意味不明なことを叫ばされてしまう。

 壇上に上がっていた一団が、一旦下に降りてくる。クドが空欄の状態な名簿を差し出してくる。

「一緒に壇上に上がって欲しい人がいれば記入して下さい」

「やっぱり同じ事をするのね…」

「佳奈多さんから何かご希望があれば出来るだけそのようにしますが」

「そうね。今すぐここから逃げ出したい気分だわ」

「それはダメです。折角皆さん集まって下さっているのですから。好意を無駄にしてはいけません」

「葉留佳と棗先輩の悪意しか感じ無いんだけど」

「私達の善意も信じて欲しいのです」

「──そうね。信じたいところだけど」

 

 ふと、佳奈多の目に一人の男子生徒の姿がとまる。直枝理樹。彼ならもしかしたら何とかしてくれるのでは無いか。そんな期待が佳奈多の心をよぎった。

「ここに希望する名前を書けばいいのよね」

「はい。──え?」

 佳奈多がさっと書き込んだ名前を見てクドが戸惑っている間に、佳奈多は理樹の元に駆け寄って、有無を言わさず手首を掴んで詰め寄った。

「直枝。私と一緒に壇上に来て」

「えっ!? 僕が?」

「一緒に壇上に上がる希望者として名前は書いたわ。手続きはそれでいいんでしょう?」

「うん、手続きとかそんな大袈裟な話じゃ無いけど…」

「じゃあそれでいいのね。行きましょう」

「あの、佳奈多さん、他には? 他の方はいいのですか?」

 クドが必死に呼び止める。

「結構よ。どうしても人数が必要なら、じゃんけんでもバトルでも何でもして決めて頂戴」

「えっ、えっ、えっ」

 クドは戸惑い、謙吾と真人は早速じゃんけんから始まり実力行使に至るバトルを始め、そして佳奈多は理樹を連れてさっさと壇上に上がってしまった。

 壇上からだと馬鹿二人のバトルがよく見える。理樹と一緒に下を見ながら、佳奈多はそんな事を思った。

「謙吾と真人も壇上に上がりたいのかな? 今からでも二人とも指名してあげたら?」

「あの二人はただ闘いたいだけでしょう。それよりも直枝。あなたにお願いがあるの」

「僕に?」

「──私を連れてここから逃げて」

「えっ!?」

 突然の、しかも意味ありげな佳奈多の言葉に、理樹は戸惑った。

「逃げ出すって。誕生会はどうするの?」

「知らないわ。葉留佳の分が終わったんだから、もうそれで十分でしょう」

「折角みんな集まってるのに?」

「それなりに余興も楽しんでるようだし、それで十分じゃ無いかしら」

 いまだに続いている謙吾と真人のバトルとそれに群がる群衆を横目で見ながら、佳奈多は続けた。

「葉留佳はどうだか知らないけど、私はこういう騒がしいのは嫌。もっと静かに、心を許せる人と二人でいたい。そんな誕生日がいい」

「僕には心を許してくれると」

「──そうね。認めざるを得ないわ」

「わかったよ。そういう事なら、何とか考えてみる」

 理樹は片手を顎に当てて、暫く思案し始めた。そして、考えた結果を佳奈多に耳打ちした後、佳奈多の手を取って突然檀の端の方、楽屋に向かって走り始めた。

 クドがすぐにそれに気づいた。

「あっ、あっ、佳奈多さん、何リキ連れて逃げようとしてるですか!」

「なにぃ!?」

 クドの声に、葉留佳も事態に気づく。いや今は逆なんだけど、と佳奈多は心の中で突っ込んだ。

「この嘘つき姉! 私達3人、お姉ちゃんと私と四葉ちゃんとでまた来年も誕生会をしようね、って約束したのに!」

「あの、すみません葉留佳さん、私達そんな約束したでしょうか? 確か去年は、家に報告する為に形だけの誕生会しかしていないように記憶しているのですが」

「イヤ四葉ちゃんあのね、今はそういう事言わなくていいから…」

 

 葉留佳達が揉めている間に、佳奈多と理樹は奥に引っ込んで姿が見えなくなっていた。

「いかん。このままでは二人とも見失ってしまう。緊急配備だ、みんな、余興は中止だ!」

 無線機を手に指示を飛ばしながら、その合間に恭介は歯ぎしりしていた。

「おのれ二木佳奈多、俺の理樹を…!」

「何を言うのです恭介さん、私のリキです!」

「二人ともどさくさに紛れて何を口走ってるのデスカ! 人が遠慮してるのをいいことに!」

 追う側は全くまとまりが無かった。その証拠に、謙吾と真人のバトルはまだ続いていた。いい加減にしろと割って入った唯湖も結局巻き込まれて三つ巴の闘いになっている有様だった。

 

 それでも暫くすると何とか落ち着きを取り戻し、捜索部隊が編成された。

「無線機越しの報告では、二人ともどの出入り口からも出た様子は無い。──もっとも、二木に言いくるめられて虚偽の報告をしていなければだが」

「佳奈多さんがそこまでするでしょうか?」

「ああ、俺もそこまでするとは思っていない。だから、まだ体育館の中にいるか、或いは俺も知らない抜け道を使って外に出たか、だな」

「外を捜索する部隊も編成した方が良くは無いか?」

「だな。足の速いものを集めて、外側の捜索部隊を編成しよう。足の遅いもの体力の無い者は、引き続き内部の捜索と出入り口の警護を」

 

 そうして恭介ら生徒達が大騒ぎしている間。佳奈多と理樹は、楽屋奥の倉庫の片隅に身を潜めていた。

「──外の様子はどうなっているのかしら」

「まだ誰も探しに来ないし、意外と手間取ってるみたいだね」

「そうね。思ったより時間が稼げそうだわ」

 ふぅ、と佳奈多はため息をついた。

「でも、私一人では気がつかなかったわ。一人になりたいだけなら、何も体育館の外に出る必要は無い、って」

「一人じゃ無い、僕もいる。二人だよ」

「そうね。望んだとおりの、二人きりの静かな誕生日ね」

「お茶もお菓子も無いけどね」

「いいの。私にはこれで十分──」

 

 そう言って佳奈多は、自分の右手でそっと理樹の左手を握りしめた。

 

「か、佳奈多さん」

「しっ。静かに。でしょ?」

「う、うん…」

 

 そんな二人の様子を、扉の隙間からそっと観察していた一人の人物がいた。

「あーらら…あらまぁ」

 

 ひとしきり事態の推移を観察して楽しんだ後、あーちゃん先輩はそっと隙間から離れた。

「ま、みんなには黙っといてあげますか」

 そう言って扉から離れるあーちゃん先輩の元に、美魚が歩み寄ってきた。

「あーちゃん先輩。そちらには?」

「んん? まあ、見た限り、アタシにはよくわからなかったわねえ」

「──そうですか」

 何かを察した美魚は、そのまま踵を返して、人の集まる場所に向かって言った。

「おう西園、どうだった?」

「私は二人を見ていません」

「そうか。そっちにはいないかー」

 

 その場にいる殆どが、そう勝手に解釈した。結果、二人の捜索は困難を極めた。そして、佳奈多と理樹は、元々誕生会が予定されていた時間が終わるまで、ずっと二人きりの時間を過ごすのであった。

 

 その後どうなったかはいざ知らず。 

 

 

 

 

 


こぴかな時々あー++

いろいろすれ違いな姉妹のバースデイ

 

 

理樹「佳奈多さん、今日は葉留佳さんの誕生日だね」

佳奈多「そうね」

理樹「ということは、佳奈多さんの誕生日でもあるよね」

佳奈多「そうとも限らないわよ」

理樹「どうして? 二人は双子なんでしょ?」

佳奈多「双子だからって同じ誕生日とは限らないわ。特にKeyではね。藤林杏と藤林椋の誕生日が違ったのは有名な話よ」

理樹「でもあれは後で訂正されたよね?」

佳奈多「そうね。でも実際、双子が同じ日に生まれるとは限らないのよ。双子と言っても、普通分娩なら一度に出てくるわけではないし、帝王切開でも手間取れば0時を過ぎて誕生日の日付が変わってしまうという事はあり得るわ。wikipediaによると、アメリカのルイジアナ州で1994年から1995年にかけて、誕生日が95日離れた双子が生まれたらしいわ。異父二卵性双生児に比べれば、ずっとありふれた話よ」

理樹「そうなんだ。でもそのwikipediaに、佳奈多さんも葉留佳さんも誕生日は10月13日と書いてあるよね?」

佳奈多「…。」

理樹「どうしてそんな無駄な抵抗するのさ」

佳奈多「そ、それは…」

理樹「それは?」

佳奈多「あ、あの子と一緒の誕生日なんて、嫌だったからよ」

理樹「ホントに? て言うか、嘘でしょ」

佳奈多「…。」

理樹「なんでそんな嘘つくのさ。もうみんな真相は知ってるんだから、虚勢張らなくてもいいのに」

憂希「ではあたしが説明してみましょうか」

理樹「誰!?」

あーちゃん「クドわふたーに出てくる併設校の科学部部長で、クドのテヴア時代の先輩の、氷室憂希さん。主人公なら覚えときなさいね」

憂希「ちなみに城桐キャラよ」

佳奈多「クドわふたーで出てきたキャラなんだから基本的には城桐キャラに決まってるでしょう。何を言ってるのかしら」

憂希「そう? 食堂のおばちゃんって城桐キャラかしら…?」

佳奈多「そんなレベルで話されても…」

理樹「そんなことよりさっきの話説明してよ。城桐キャラは変人という事はよくわかったから」

憂希「…。」

佳奈多「…。」

あーちゃん「…。」

理樹「あ、有月姉妹はまとも、かな…?」

憂希「全然フォローになってないわ…」

理樹「そんな事より説明! 説明お願い! 話進まないから」

憂希「いつか追求するからね、忘れないでよ。で、さっきの話を解説すると。二木佳奈多の心情としては、自分が、自分自身が、妹の葉留佳の誕生日を祝いたいと」

佳奈多「!!!」

理樹「祝えばいいじゃない」

憂希「でも彼女も同じ誕生日なのよ? それなのに祝う立場になっちゃうのは変だと、考えたのじゃない?」

佳奈多「…。」

理樹「そうなのかなあ?」

あーちゃん「ま、例えば卒業生が送別会の幹事やってたら、それは変だしね」

理樹「うーん、それもそうか」

憂希「ま、でも誕生日が同じという現実は変えられないわ。この件に関してはあきらめる事ね」

佳奈多「…そうね…」

理樹「…いや、そういうことなら手はある」

佳奈多「え?」

憂希「無いわよ。戸籍上の名前や本籍を変える事は出来ても、誕生日を変える事は出来ないのよ。事実と違うという証明がされない限りはね」

理樹「いや、誕生日を変える必要はない。ただ、時間を変えてしまえばいいんだ」

佳奈多「…は?」

理樹「時間を入れ替えて、誕生日じゃない日の佳奈多さんが誕生日の葉留佳さんを祝えば良いんだよ」

佳奈多「ごめん何言ってるのかわからない。ううん正確に言うと、言ってる事が非現実的すぎて、理解したくない」

憂希「そうね、そんなできない提案をされてもねえ」

理樹「デキルヨ!」

あーちゃん「あんたは中津静流か」

佳奈多「で。いったいどうやるって言うの?」

理樹「僕は、時間を変える事が出来るんだ!」

佳奈多「…馬鹿じゃないの?」

憂希「なにそれ。あの、厨二って奴? それともデムパ?」

理樹「何言ってるの! リトルバスターズのラストそういう展開だったでしょ! 遺伝子まで書き換えちゃったんだよ! もう忘れちゃったの!?」

憂希「いや、あたしクドわふからのキャラだし…」

あーちゃん「あたしもリトバス時代は立ち絵無しだったし…」

佳奈多「私もリフレイン以降は絡んでないから…」

理樹「うわー。なんかそこはかとない僻みを感じるよー」

佳奈多「だって野球にも出してもらえなかったし…」

理樹「出たかったんだ」

佳奈多「べ、別に…ッ。ただ、ファンが…」

憂希「まあ、朱鷺戸沙耶は出てるのに二木佳奈多はスクリプトの都合で無理ですとか言われても、納得いかないわよねえ」

佳奈多「べ、別に良いのよ…野球なんて…本編に関係ないし…」

理樹「そう、その本編! 僕ちゃんと過去書き換えてるでしょ!? 出てる出てないとかは置いといて、この事実は認めてよ!」

憂希「でもクドわふだとあなた、ナルコレプシー治ってないのよ? つまり過去書き換えられてないのよ?」

佳奈多「それが本来の流れよね。そもそも過去書き換えなんて、そんな荒唐無稽な話あり得ないわ」

理樹「でも、リトバスってそういう話なんだよ!」

憂希「そう。じゃあもし仮にそれが可能だとして。でもあれは、あなたが虚構世界とかいうこの宇宙の物理現象を無視した特殊な空間にいたからこそ出来た次元跳躍的な行動だと考えるべきじゃないかしら。つまり、普通の空間にいる限りは、あなたは時間をいじる事なんて出来やしない。そう考えるのが妥当じゃない?」

理樹「それは…。じゃあわかった、虚構世界をもう一回作ってもらう! 恭介に頼んでみる!」

佳奈多「またそんな無茶苦茶を…。というかもう良いわよ、そこまでしなくても」

あーちゃん「まあ、そう言わず最後まで付き合ってみたら? 方向性はともかく、気持ちは真剣みたいだし」 

憂希「あたしも、ほんとに出来るのなら興味あるわね。ついていくわ」

 

 

 

恭介「風が気持ちいいぜ…。ここは屋上…。俺は片足を欄干にかけて一人でかっこつけながら、ちょっとした自己陶酔に浸っている…。今回筆者が地の文は書かないと決めやがったから、こんな事もいちいち声に出して言わないといけない…虚しいぜ」

理樹「恭介、ちょっといいかな?」

恭介「なんだ、理樹か。いいぞ、理樹のいう事なら大概の事は聞くぞ。性的な話も含めてな」

理樹「性的な事はどうでもいいけど、話を聞いてくれるのはうれしいよ。実は、恭介にもう一度虚構世界を作って欲しいんだ」

恭介「…理樹。確かに、作品を重ねるごとにお前がだんだん馬鹿になっていっている事はわかってる。わかってはいるが、だからと言って認めたくはないものだ」

理樹「ひどいよそんな言い方…。だいたい、クドわふではそんなに馬鹿じゃなかったでしょ」

恭介「俺出てなかったから知らない」

憂希「またここにも僻み根性の人が…」

あーちゃん「まあ、就職活動してたんだからこれは仕方ないんじゃない?」

恭介「まあそれは置いといて。虚構世界をもう一度作れというのは無理な話だ。あれは俺の、生死をかけた一生一度の大技だ。やれと言われて安易に出来るものじゃない」

理樹「でも、時間を動かしたいんだよ」

恭介「そういう話なら、尚更無理だ。SFの世界でも、時間絡みの話は大変に複雑で緻密な考察と理論設計が必要になる。安直に手を出していいものじゃない」

理樹「でもリトバスは特に深い説明とか無くそういう展開になってたのに」

恭介「あれは麻枝准だから許されるんだ。一介のSS書きがそんな事したら失笑を買うのがオチだ」

理樹「え? SS書き? 恭介の話じゃなくて?」

恭介「その辺は気にするな。とにかく、虚構世界は無理だ。何か別の案を考えるべきだな」

理樹「別の案と言っても…」

恭介「理樹、目的と手段を混同するな。お前が本当にやりたい事は一体何だ? まずそれを整理してみろ」

理樹「それは…佳奈多さんに喜んでもらいたい」

佳奈多「え…? ちょ、直枝、違うでしょ」

あーちゃん「違わないんでしょ。本当の目的はそういう事、って事でしょ。直枝君って、意外と素直なのね」

佳奈多「な…! な…! な…!」

恭介「ふむ。それで理樹は、どうしたいと思った?」

理樹「佳奈多さんは葉留佳さんの誕生日を祝いたかった。でも自分も同じ誕生日だから、直接お祝いするのはおかしいという話になった。」

恭介「だから時間をいじろうとしたわけか。だがそういう話なら、別の視点もあるんじゃないか?」

理樹「別の視点?」

恭介「つまり、二木佳奈多が二木佳奈多でなくなればいい。二木佳奈多以外の誰かが三枝葉留佳の誕生日を祝うのならば、何の問題もなくなる。そうだろう?」

憂希「それはそれですごい屁理屈っぽい気がするけど…具体的にはどうやるの?」

恭介「二木には自分を自分でなくする得意技があるだろう。三枝葉留佳に変身するという」

理樹「あ!」

恭介「シナリオによってはそれで理樹を犯しちゃうしな」

あーちゃん「へーーーーーーーーーーーー」

憂希「へーーーーーーーーーーーーーーー」

理樹「わーっ! わーっ! わーっ!」

佳奈多「嫌! やめて! その話はやめて!」

あーちゃん「ま、この件は後でゆっくり追求するとして。かなちゃん、はるちゃんに変身するのはすぐ出来るの?」

佳奈多「出来ますよ、いつでも準備してますから。あと、いつからはるちゃん呼ばわりするようになったんですか」

あーちゃん「NHKのニュースに冬将軍が出るようになった頃から、かしら」

恭介「結構前だよな、それ」

理樹「かなちゃん呼ばわりはもう許したんだね」

憂希「いつでも準備してる事には誰も突っ込まないのね…」

 

 

 

あーちゃん「そういうわけで、変身完了です!」

佳奈多「…。」

理樹「文字じゃ全然わからないけど、どこからどう見ても葉留佳さんです!」

あーちゃん「かなちゃん、『アヒョー!』とか『葉留佳ちんちん18禁』とか言ってみてよ」

佳奈多「葉留佳はそんな事言いません! 前半はともかく!」

憂希「前半は言うのね…」

恭介「そしてうまい具合に三枝葉留佳も呼び出した。事件の臭いがすると携帯電話で告げただけで、すぐ飛んできた」

葉留佳「その一言ではるちんは騙された事を理解しました! いやー、参りましたネ」

理樹「まあ、そう参る事もないよ。これからいいことがあるから」

葉留佳「?」

理樹「この人が、話があるって」

佳奈多「…。」

葉留佳「…誰デスカ?」

佳奈多「わ、わ、わ、…」

葉留佳「輪? 輪っか? 円デスカ? 円はあらゆる図形の中で最も性質がいいという、あれデスカ?」

憂希「好きなタイプだけど関わりたくない人が、こんなところにいたなんて…」

佳奈多「私は葉留佳! 三枝葉留佳!」

葉留佳「何言い出すんですカ突然? 確かに姿ははるちんにそっくりデスケド」

佳奈多「サイグサハルカハシンダ! サイグサハルカハシンダ!!!」

葉留佳「何て事言うんデスカ」

理樹「佳奈多さん落ち着いて、テンパらないで!」

葉留佳「お姉ちゃん?? まーた私の格好して遊んでるんですか? 何やってんでスカ。風紀委員と寮長と女子高生弁理士の仕事はどうしたんデスカ」

憂希「最後の、何…?」

佳奈多「遊びじゃないわよ! その…葉留佳、誕生日おめでとう」

葉留佳「…それを言うためにわざわざそんな格好を?」

あーちゃん「誕生日が同じかなちゃんが誕生日のお祝いを言うのは変だからという、彼女なりの理屈なのよ。察してあげて」

葉留佳「それで私の格好を?」

恭介「そうだ。これで二木は二木でなくなった。問題無い」

葉留佳「でもそれって、私が私におめでとうって言ってる事になりますヨネ? 余計変じゃないデスカ?」

理樹「あ」

あーちゃん「そうよねー」

恭介「フ、俺とした事が…」

憂希「私は気づいてたけど、敢えて黙ってた」

佳奈多「え、えっと、そ、その、その、その、…」

葉留佳「はあ…。まあいいデス。お姉ちゃんが変な事するのは、今に始まった事じゃないですカラ」

理樹「葉留佳さんには言われたくないと思うよ…」

あーちゃん「まあまあ。姉妹なんだし、その辺はお互い様という事で」

佳奈多「…。」

葉留佳「…まあ、いいデスケドネ」

恭介「では、これで一件落着という事で」

理樹「うん。じゃあ、僕たちからもおめでとうを言わせて」

あーちゃん「そうね。おめでとう」

憂希「ま、私もおめでとうと言っておくわ」

恭介「おめでとうな」

クド「おめでとうなのですー」

初「おめでとうございます」

椎菜「おめでとー」

真人「おめっとさん」

謙吾「おめでとう」

小毬「おめでとう~」

鈴「うん、めでたい」

唯湖「めでたいな」

美魚「おめでとうございます」

佐々美「おめでとうございますですわ」

沙耶「おめでとう」

佳奈多「ソウカ、ワタシハココニイテイインダ!」

葉留佳「だから、私の格好で変な事言うのやめてくださいヨ。て言うか軽くキャラ破壊デスヨ」

 

 

 

 

 

Fin

 

 

 

 

クド「ふう。私たち、なんとか最後で出してもらえましたねえ」

椎菜「おなじ城桐キャラなのにはぶられたらどうしようかとおもったよー」

初「筆者によると他意はなかったとの事ですが…。それよりも、一日遅れた事の方が問題ですね」

クド「城桐信者鞍替え宣言をしておきながら遅刻した筆者への抗議メールはこちら!」

http://kouyaxatosi.info/xlink/mail.php

 

初「yahooドメインからのメールは何故か届かないらしいので、ご注意を」

 

 

 

 

今度こそ 終わり

 

 

 

 

 

 


こぴかな時々あー++

変身マ女っ娘佳奈多ちゃんシリーズ

 

第1話 変身マ女っ娘佳奈多ちゃん

 

 むかしむかし・・・と言っても、1ナノ秒くらいの昔と思っておいてください。ある所に、二木佳奈多ちゃんというごくごく普通の女の子がいました。いえ、ごくごく普通と言うにはちょっと語弊があるかもしれません。しかし、一応世間で立派に通用する常識を備えていることだけは間違いありません。

 ただ、あまりにも常識的というか、もの凄く真面目な女の子なので、周りからは「マ女」と呼ばれていました。以前風紀委員長をやっていたときは鬼の委員長と呼ばれていたのですが、風紀委員は辞めてしまって今は寮会の仕事だけをやっています。

 寮会の仕事は、いわゆる事務仕事から生徒の相談事まで多岐にわたります。佳奈多はそれらの仕事を日々淡々と片付けていました。ある生徒が、相談に訪れるその日までは。

 

 その日佳奈多は、寮会室でいつものように書類整理をしていました。そこに、一人の女生徒が入ってきました。真面目天然の異名を持つ、西園美魚です。

美魚「・・・こんにちわ。相談したいことがあるのですが。」

佳奈多「なにかしら。あまり変な相談でなければ、取り次いでおくわよ。」

美魚「はい。・・・えっと、実は相談と言うよりは、個人的なお願いになるのですが。」

佳奈多「個人的なお願い?」

美魚「はい。極めて個人に特化されたお願いです。」

佳奈多「そういう事なら、その本人に直接言ってくれないかしら。寮会はあくまで生徒全体の利益に資するための組織だから。トラブルになりそうだから仲裁してくれと言うのなら、また話は別だけど。」

美魚「はい・・・。ですからこれは、二木佳奈多さん、あなた個人に直接お願いしたいことがあるということです。」

佳奈多「私に? 何の用かしら。」

美魚「はい、実は・・・。」

 そこで美魚は、一呼吸置きます。

美魚「あなたに、変身マ女っ娘をやって欲しいのです。」

佳奈多「・・・。」

美魚「・・・。」

佳奈多「ごめんなさい。よく聞こえなかったわ。もう一度言ってもらえる?」

美魚「あなたに、変身マ女っ娘をやって欲しいのです。」

佳奈多「・・・。」

美魚「・・・。」

佳奈多「それは何? 私にコスプレでもしろという意味かしら。それとも何かのイベントのバイトでも頼んでいるの?」

美魚「そのどちらでもありません。あなたには、本物のマ女っ娘になっていただきます。」

佳奈多「・・・。」

 佳奈多、しばらく黙って考えます。まじょっこ? 魔法少女のことかしら。Wikipediaによると「魔法少女(まほうしょうじょ)は、日本の漫画・アニメなどに登場するキャラクター類型のひとつで、魔法を使える少女である。」とあるわ。セーラームーンもこれに含まれるのね。ぴぴるぴるぴるぴぴるぴーとか言うのはあれは違うのかしら。と言うか私何でこんなの知ってるんだろう。とにかく、魔法少女よね。つまり魔法を使うのよね。魔法? 冗談じゃない、現代日本にそんなものが存在するわけ無いじゃない。だいたい魔法なんてものは、中世欧州において錬金術とともに自然科学に敗れ去ったのよ。あるとすれば、奇術・手品と呼ばれるトリックを使った類の遊びくらいなもの。それ以外はだいたい、カルト宗教が絡んだ詐欺行為みたいなものよ。つまり一般的に言って、魔法はあり得ない。だから魔法少女もあり得ない。

 つまり、この子の言ってることはおかしい。

佳奈多「・・・悪いけど私、魔法とか信じない性質だから。」

 佳奈多冷たく言い放ちますが、みおっち動じません。

美魚「・・・誰が魔法だと言いましたか?」

佳奈多「え? だって今あなた、魔女っ娘って。」

美魚「・・・魔女っ娘ではありません。マ女っ娘です。」

佳奈多「ごめんなさい。口で言われると違いがわからないんだけど。」

美魚「ですから。魔法の魔ではなく、カタカナのマです。」

佳奈多「カタカナのマって・・・なによそれ。私が真面目で堅物な女だからそれをからかいに来たというわけ? 知ってるわよ、私が真面目な女をもじってマ女と呼ばれてることくらい。でもそれをだしにわざわざそんなことを言いに来たのはあなたが初めてだわ。ずいぶんご苦労さまな事ね。」

美魚「・・・落ち着いてください。確かに私は、あなたがマのつく女だからこのことを頼みに来ました。でも、マで始まる言葉が真面目だとは限りませんよ?」

佳奈多「あら。じゃあ何だというの?」

美魚「そうですね・・・。例えば、マッスルとか。」

佳奈多「マッスル・・・。」

 その言葉を聞いて、佳奈多の脳裏に何かが蘇ります。悪夢とでも、トラウマとでも言ったらいいでしょうか。とにかくそう言った類の何かが、脳の奥からずんずんずんずんと佳奈多の表層意識に迫ってきます。

 

真人「ふっ、ふっ、・・・マッスル、マッスル・・・!」

クド「マッスルとは英語で筋肉のことなのですっ!」

理樹「マッスルマッスル~!」

恭介「マッスルいぇいいぇい~!」

鈴「マッスルいぇいいぇい~!」

佐々美「マッスルいぇいいぇい~!」

小毬「マッスルいぇいいぇい~!」

唯湖「マッスルいぇいいぇい~!」

謙吾「マッスルがうなる。うなりをあげる!こいつは・・・マッスル革命だぁ~!」

葉留佳「ほらお姉ちゃんも一緒に、マッスルマッスル!」

 

佳奈多「いやああああぁぁぁぁぁぁ~~~~ッッッッ!!!」

美魚「・・・。どうかされましたか?」

佳奈多「い、いえ別に。その・・・マッスルは勘弁してもらえないかしら。」

美魚「・・・ご心配なく。この場合の『マ』は、真面目のマですから。」

佳奈多「やっぱりそうなんじゃないのよ。」

美魚「素直にそうだと言ったら、あなたは引き受けてくれそうにありませんでしたから。」

佳奈多「そうね・・・。魔法だろうが真面目だろうが、余計なことには関わりたくないわね。」

美魚「でも、今のあなたはもう私の頼みを断れないはずです。」

 そう言うとみおっちは佳奈多に近づき、佳奈多の耳元でそっとささやきました。

美魚「・・・マッスルマッスル。」

佳奈多「いやあぁ! やめて!」

美魚「やめて欲しいのですか?」

佳奈多「・・・やめて。」

美魚「では私の頼みを聞いてくれますか?」

佳奈多「聞くわ、たいがいのことなら。だから、マッスルはやめて・・・!」

 

佳奈多「で。何をすればいいわけ?」

美魚「簡単なことです。この科学部が発明したっぽい超電磁っぽいバトンを使ってマ女っ娘に変身し、悪っぽいものと戦うっぽいことをしていただければそれで結構です。」

佳奈多「ぽいが多いわね。もっとはっきりできないの?」

美魚「それは無理です。なぜならこの世の中は非線形なもので溢れているからです。方程式を使って演繹的手法ではっきり確定した答えを出せる事例など、ほんのごくわずかに過ぎないのです。あとは全て、確率論やコンピュータシミュレーションを用いて答えを出す他ありません。これを自然科学の世界では複雑系とか複雑システムと呼びます。」

佳奈多「複雑系と日本語の『ぽい』を結びつけるのはちょっと強引な気もするけど・・・。とにかくはっきりさせる意志がないということだけは伝わったわ。」

美魚「理解が早くて助かります。」

佳奈多「でも。要するに科学部絡みなんでしょ? だったらそれはあなたの担当なんじゃないの?」

美魚「確かにそうなのですが・・・。実は私、当分の間週末は用事が立て込んでいまして。その間の代理を二木さんにお願いできないかと。」

佳奈多「そう・・・。用事って何?」

美魚「それは言えません・・・。ちなみに行き先は、来週が新潟で再来週は福岡です。」

佳奈多「そう、ずいぶん遠くまで行くのね。・・・もしかして同人誌即売会?」

美魚「・・・それは言えません。」

佳奈多「言わなきゃ引き受けないと言っても?」

美魚「そしたらまた耳元でマッスルマッスル言いますよ。」

佳奈多「・・・わかった。言わない。追求しない。それでいいわね。」

美魚「・・・はい。ではそういうわけですから、早速練習がてら変身してもらいましょうか。」

佳奈多「わかったわ。どうすればいいの?」

美魚「この超電磁っぽいバトンを両手でもってかざして・・・そうですね、メモを書くので、その内容を読んでください。」

佳奈多「え? 別に直接口で言ってくれても・・・。」

美魚「それは私が困るんです・・・さあ、これを読んでください。大声で。」

 そうしてみおっちは1枚の紙を佳奈多に渡しました。佳奈多は、そこに書かれていることを言われたとおり大声で叫びました。

佳奈多「リリカルヘリカルトカマクレーザー、未来を繋ぐ胸キュンドッキンエネルギー、素粒子ビームでみんなのハートを融合しちゃえ~!!! って何これ、何この恥ずかしい台詞!」

 そう言っている間にも、佳奈多の服装や髪が何かの光子のようなものに変化してゆき、そして再び別の服装や髪に定着してゆきました。

佳奈多「・・・って。これ、葉留佳の私服じゃないのよっ!」

美魚「ついでに言うと、あなた自身の姿も葉留佳さんのそれに変わっています。」

 そう言ってみおっちは鏡を持ってきました。佳奈多が自分の姿を確認すると、なるほど確かに佳奈多の双子の妹の三枝葉留佳の姿に変わっています。

佳奈多「って、変身ってこういう事なの!?」

美魚「はい。あなたの場合、変身=葉留佳さんに変装 というのが仕様だとお聞きしていましたが。何か?」

佳奈多「仕様って何よ・・・。」

美魚「・・・細かいことを気にしてはダメです。」

佳奈多「しかもこの服装なに。葉留佳の私服だと思うけど、あり得ないセンスだわ。」

美魚「・・・その辺はいたる先生に文句を言ってください。」

佳奈多「とにかく。いったん元に戻したいんだけど。どうすればいいの?」

美魚「・・・。」

佳奈多「まさか・・・。『元に戻る方法はない』なんて言わないわよね?」

美魚「いえ・・・ちょっと言ってみたかったですが、先手を打たれてしまいましたので・・・。」

佳奈多「・・・。」

美魚「元に戻るのは簡単です。その超電磁っぽいバトンのリセットボタンを押すだけですから。」

佳奈多「ああ、これね・・・。」

 佳奈多がリセットボタンを押すと、その姿はすぐに元に戻りました。

美魚「はい、練習は終わりです。では早速ですが実戦に移りましょう。」

佳奈多「え、実戦って?」

美魚「はい。タイトルは『いよかん星人の逆襲』です。」

佳奈多「逆襲って事は・・・すでに地球人側が彼らになんかやらかしたって事なのかしら?」

美魚「・・・細かいことを気にしてはダメです。」

佳奈多「はいはい。で、そのいよかん星人が何?」

美魚「実は・・・。最近、この界隈を『いよかん星人』なる侵略者が徘徊して地球の制服を狙っているという話なのです。・・・ちなみに制服であってます。決して誤植じゃありませんよ。」

佳奈多「いよかん星人・・・?」

美魚「はい。・・・もしかして、何かご存じですか?」

佳奈多「いいえ。何も知らないわ。」

美魚「そうですか・・・。ご存じなら解決は早いと思ったのですが。では仕方ありませんね。地道な探索から始めるしかありません。」

佳奈多「その探索も私の仕事という訳ね・・・。」

美魚「はい。すみませんがよろしくお願いします。」

 

 こうして佳奈多は、まずは「いよかん星人」の探索に出かけることにしました。

佳奈多「とは言っても・・・いよかん星人って言ったら、要するにアレよね・・・」

 とかぶつぶつ言っている間に、佳奈多の元に一人の少女が駆け寄ってきました。犬系ロリキャラの能美クドリャフカです。

クド「佳奈多さん。ぐっもーにんえぶりわんですっ。」

佳奈多「あらクドリャフカ。どうしたの?」

クド「はい。実はですね・・・。先ほど西園さんから、佳奈多さんが変身マ女っ娘になっていよかん星人の対策に乗り出すことになった、と聞いたものですから。」

佳奈多「あの子・・・おとなしそうに見えて意外とおしゃべりなのね。」

クド「あっあっ、西園さんを責めないで欲しいのです。私がいよかん星人の件で西園さんと話をしたら、そういう話になっただけですので。」

佳奈多「そう・・・。で、何かしら? いよかん星人に関する情報でも持ってきてくれたの?」

クド「はい。えとその。実はですね。私がいよかん星人なのですっ!」

佳奈多「は?」

クド「あ、えっと。正確に言うとですね。いよかん星人にバイトで雇われたと言いますか。」

佳奈多「バイト?」

クド「はい。詳しい話をするとですね。いよかん星人さんとしては、24時間365日地球での活動でを継続したいのだそうですが。しかし日本国の労働基準法では労働時間は一日8時間までかつ一週間に40時間以内と決められていまして、これを超える労働をさせるときは労働者の過半数を代表する労働組合または労働者代表と36協定というのを結ばなくてはいけないのですが、いよかん星人さんたちはこの36協定を未締結なので、一日8時間以上活動することができないのだそうです。なので、8時間を超える分については、地球人のバイトを雇って活動を継続させることにしたのだそうですっ。」

佳奈多「異星人がなんで日本の労働法制に拘束されるのよ・・・。」

クド「佳奈多さん。その考えは良くないと思います。異星人といえども、日本国内にいるからには日本の法律を守っていただかなければなりませんし、また同様に法律に基づいた保護もしなければなりません。これは、人道主義に基づいた現代民主国家で保障された基本的人権の一部あり且つそれを守ることが自立した主権国家であることの証明になると思うのです。」

佳奈多「とか言いつつ、在日米軍は日本の法律を全く守っていないけどね・・・。」

クド「とにかく。そういう訳で私はいよかん星人さんたちに雇われていろいろしないといけないのですっ。」

佳奈多「いろいろって・・・何をするつもり?」

クド「えと、それはその・・・とにかく、佳奈多さん勝負です、変身してくださいっ!」

佳奈多「脈絡無い上に強引ね・・・。」

クド「あうぅ・・・変身していただけないですか?」

 クドが縋り付くような視線で佳奈多を見ます。基本的に姉キャラの佳奈多、こういう視線にはとても弱いです。しかし、変身するためにはクドの前であの恥ずかしい台詞を言わなければなりません。それは真面目キャラとしての佳奈多のプライドが許しません。

 さんざん考えたあげく、佳奈多は妥協点を思いつきました。

佳奈多「・・・わかったわ。変身する。だけど変身するところは見られたくないから、そこの物陰に隠れてするわ。クドリャフカ、その間あなたはのぞき見したり、聞き耳を立てたりしては決して駄目よ。」

クド「わかりました。お待ちしてますのですー。」

 佳奈多はさっと植え込みの中に隠れ、クドから声が聞こえない場所まで移動して、そして叫びました。

佳奈多「リリカルヘリカルトカマクレーザー、未来を繋ぐ胸キュンドッキンエネルギー、素粒子ビームでみんなのハートを融合しちゃえ~!!!」

 佳奈多の体が光で包まれ、そして佳奈多はマ女っ娘かなたんに変身しました。

 変身が終わると佳奈多は、急いでクドの元に戻ろうとしました。と、そこには、クドの他にもう一人増えていました。

クド「はいー。いよかん星人さんのバイトをしているのですよー。」

葉留佳「バイトですか、そりゃ偉いことですネ。うんうん、働かざる者食うべからず、ですヨ。とかいいつつはるちん働いてないですけどネ。」

 どうやらもう一人は、佳奈多の妹の三枝葉留佳のようです。

佳奈多「(やばい・・・! かなりまずいことになったわ・・・。)」

 佳奈多が思案に暮れていると、葉留佳がこっちに気づきます。

葉留佳「およ? 植え込みの中に誰かいるみたいデスヨ?」

クド「ああ、きっと佳奈多さんです。変身が終わったみたいですねー。」

葉留佳「え、お姉ちゃん? 変身?」

 葉留佳がこっちに近づいてきます。佳奈多は逃げようと思い植え込みの中を移動しましたが、しかし行く先にクドに先回りされてしまいました。

クド「佳奈多さん。追いついたのですー。って、あれ、佳奈多さん・・・ですか?」

 クドがふんふんと鼻を鳴らしながら、確認しています。その間に葉留佳も接近してきました。

クド「あ、やっぱり佳奈多さんですー。でもなんでそんな格好してるですか?」

葉留佳「あ、お姉ちゃんそっちにいたのー? もう、なんで逃げるかナ。」

 そう言って近づいてきた葉留佳は、佳奈多の姿を見て静止してしまいます。

葉留佳「・・・。」

佳奈多「・・・。」

葉留佳「・・・何やってんですかお姉ちゃん。」

佳奈多「ち・・・違うのっ! これはっ! そうじゃないのっ!」

葉留佳「まだ何も言ってませんヨ。何やってんのか訊いてるだけじゃないデスカ。」

佳奈多「だから、これはっ・・・!」

クド「佳奈多さんは、マ女っ娘として変身したところなのですよ~。」

葉留佳「マ女っ娘・・・?」

 クドがわざわざ解説を入れてくれました。しかしそれが佳奈多の恥ずかしさをさらに加速させてしまいます。佳奈多はいたたまれなくなり、超電磁っぽいバトンのリセットスイッチを押してしまいました。

葉留佳「あーあ、戻しちゃった。」

クド「佳奈多さん・・・?」

佳奈多「な、何かしらクドリャフカ。」

クド「どうして変身解いてしまったですか?」

佳奈多「ど、どうしてって・・・。だって恥ずかしいじゃないのよッ、葉留佳の前で!」

葉留佳「え? なになに? 何が恥ずかしいって言うの?」

佳奈多「うるさいわね! あなたは気にしなくていいの!」

葉留佳「えー。なにそれー。私だけ仲間はずれみたいでなんか感じわるー。」

佳奈多「そ、そうじゃ無いのよ葉留佳。ただこれはね。」

葉留佳「じゃあ何が恥ずかしいって言うんですカ。」

佳奈多「だ、だって・・・。葉留佳の前でマ女っ娘とか・・・。普通に考えて恥ずかしいでしょう!」

葉留佳「クド公の前では変身したのに?」

佳奈多「それは・・・クドリャフカに頼まれたから・・・。」

葉留佳「じゃあ私もお願いする。もっかい変身して。」

佳奈多「お願いされる理由がないわ。」

葉留佳「えー、なんでー。クド公には理由があるって言うの?」

佳奈多「クドリャフカはいよかん星人に雇われてるからいいのよ。」

葉留佳「・・・。」

 葉留佳がちょっと心配そうな顔をして、そして左手を佳奈多の額に当ててきました。

葉留佳「うーん、熱はなさそうですネ。」

佳奈多「・・・いっそあってくれた方が助かったわ。」

葉留佳「で。そのいよかん星人ってのはいったい何なんですカ?」

佳奈多「・・・私も詳しいことは知らないわ。」

 本当はちょっとだけ知ってるけど、と佳奈多は心の中でつぶやきました。

葉留佳「クド公はそのいよかん星人から雇われたんでしょ? なら知ってるよね?」

クド「いえ・・・実は私も、人を介して依頼されただけで、いよかん星人さんとは直接お会いしてはいないし、詳しいことも聞かされていないのです。」

佳奈多「クドリャフカ・・・あなたそんなので、よくバイト引き受ける気になったわね。」

クド「困ったときはお互い様なのですー。」

佳奈多「ねえクドリャフカ。仕事というのは、そういう甘い考えで引き受けるものじゃないわ。詐欺まがいのものだって世の中にはいっぱいあるんだから。」

クド「そなのですか。次からは気をつけます。」

葉留佳「でもそうなると、いよかん星人の手がかりは、クド公に仕事を依頼したという人物を当たる他なさそうですネ。」

佳奈多「そうね、それ以外なさそうだわ。・・・って、葉留佳、あなたはなんでこんなに熱心になってるの?」

葉留佳「え? そりゃぁもちろん、可愛いお姉ちゃんのために出来た妹が一肌脱ごうと奮闘するという努力友情勝利のストーリーが。」

佳奈多「・・・『出来た妹』という部分を無下に否定する気はないけど、『可愛いお姉ちゃん』というのは撤回してくれる?」

葉留佳「え? なんで?」

佳奈多「撤 回 し て く れ る ?」

葉留佳「わかりましたヨ。ちぇー。可愛いお姉ちゃんって結構萌え要素だと思うのになー。」

佳奈多「萌えとか言わないで。」

 そんな会話をしつつも、とりあえずクドに仕事を紹介したという人物に会いに行くことにしました。

 

 

唯湖「・・・。」

佳奈多「やっぱりあなただったんですね。」

唯湖「うむ。」

佳奈多「うむ、じゃないです。クドリャフカにまでこんな馬鹿な真似をさせようとして、いったいどういうつもりなんですか?」

唯湖「馬鹿な真似、か。君の目にはそう映るのかな?」

佳奈多「あなたの目にはどう映っているんですか?」

唯湖「果てしなく馬鹿な真似、だ。」

佳奈多「自覚はあるんですね・・・。」

 やれやれ、といった表情で佳奈多は肩をすくめます。

佳奈多「ま、とりあえずこの件は一件落着という訳ね。クドリャフカ、ご苦労様。バイト代を当てにしていたのなら申し訳ないのだけど。」

唯湖「待て。勝手に一件落着にされては困るぞ。」

佳奈多「まだ何か?」

唯湖「君はまだ、変身して戦って私を倒していない。それなのに一件落着とは、いったいどういう了見だ。」

佳奈多「そんなことをして何になると?」

唯湖「もちろん、私が楽しいからだ。」

佳奈多「・・・そんなに私と戦いたいんですか?」

唯湖「いや。戦いの方はむしろどうでもいい。」

佳奈多「?」

唯湖「変身だ。今すぐ私の目の前で変身して見せろ。佳奈多君が恥じらいつつも変身の台詞を叫ぶと今着ている服装が光だかなんだかよくわからないものに変化して佳奈多君自身は全裸だか半裸だかよくわからない状態になっていく、その様を見ながらうへうへかなたん激萌えっすもっとよく見せろはぁはぁとか言わせろ。」

佳奈多「・・・。」

 冗談じゃない、付き合ってられない、と佳奈多は思いました。

佳奈多「話はそれだけですか? でしたら帰りますけど。」

唯湖「まあ待て。君が変身をしたくないという気持ちはよくわかった。だが、これを見てもまだそんなことが言えるかな?」

 そう言って唯湖が指を鳴らすと、一人の少年が縛られた格好で連れてこられました。連れてきたのは美魚です。

唯湖「ご苦労だったな、西園女史。」

美魚「いえ・・・。直枝さんを縛るのは、結構ドキドキものでしたから。むしろ役得という気分です。」

理樹「役得って・・・。」

唯湖「さあ二木女史。愛する理樹君を助けたかったら、今すぐこの場で変身するんだ。」

佳奈多「えっ・・・?」

唯湖「変身したら理樹少年を解放してやろうと言ってるんだ。」

佳奈多「な・・・! 何を言ってるんですかッ!!」

 冗談じゃない。ただでさえ変身するのは恥ずかしいっていうのに、そのうえ直枝の目の前であの恥ずかしい台詞を叫び変身させられるなんて。

佳奈多「だいたい西園さんっ! あなた、そもそも私の味方じゃなかったの!? そもそも私は、あなたの代わりにこういう事を・・・!」

美魚「信じていた仲間の突然の裏切り・・・折り返し地点の24話としてはありがちな話ですね。」

佳奈多「24話って、これまだ1話だし! そもそも続くかどうかすらわからないし!!」

美魚「・・・スポンサーを見つけられなかったということですか? 商業資本主義は悲しいですね。」

佳奈多「そういう話じゃなくてっ!」

唯湖「まあ、要するに私と西園女史は最初からグルだったというわけだ。普段の冷静な君ならすぐ気づきそうなものだが・・・。まあ、仕方ないか。」

佳奈多「・・・。」

唯湖「さあ、どうする? 早く決断しないと、私たちが理樹少年にいろいろするぞ。そうだな、理樹少年の肌はすべすべで気持ちよさそうだ、全身をくまなく触ってみたい気分になる。」

理樹「ちょ、ちょっと、やめてよっ!」

美魚「敏感な部分を見つけたら、集中的に責めてみましょうか。」

葉留佳「おお、いいですねー。理樹君のあえぐ声は可愛いだろうなー。」

理樹「な、なにいってんのさっ! て言うかなんでいつの間にか葉留佳さんまで加わってるの!? ねえ二木さん、助けて・・・。」

 助けて。その理樹の言葉が佳奈多の耳に届きます。助けて。直枝が私に、助けを求めている。助けてって言ってる。

 恥ずかしがってる場合じゃない。

 佳奈多はきっと顔を上げ、そして宣告します。

佳奈多「あなた達、今すぐ直枝から離れなさい! でないとこの・・・このマ女っ娘かなたんが、成敗してくれます!」

 そう言うと佳奈多は一呼吸置き、すうっと息を吸い込んで、叫びました。

佳奈多「リリカルヘリカルトカマクレーザー、未来を繋ぐ胸キュンドッキンエネルギー、素粒子ビームでみんなのハートを融合しちゃえ~!!!」

唯湖「おっ。」

 佳奈多の体が光で包まれ、服装と髪型が素粒子化して、そして再構成されていきます。

唯湖「あれはどういう原理なんだ?」

美魚「なんでも、高位体常温核融合という技術を使っているらしいです。詳しいことはよくわかりませんが・・・。」

クド「なるほど、それでヘリカル・トカマク・レーザー、なのですね。リリカルというのがよくわかりませんが・・・。」

葉留佳「はるちん全部わかんないっス! でも実は理系志望だったりしマス!」

 彼女たちがそんな会話をしている間に、佳奈多の変身が終了しました。

佳奈多「・・・これで満足かしら?」

唯湖「・・・話に夢中になっていてよく見えなかったな。もう一度やってくれないか?」

佳奈多「~~~!」

葉留佳「大丈夫っス姉御! こんな所に何故か、放送用機材並の高性能なビデオカメラが据え付けてあってどうやら一部始終を録画していたようデス!」

唯湖「・・・おまえは少し空気読め。」

葉留佳「え~!? 今のははるちん、高得点だと思ったのにぃ~!」

 唯湖と葉留佳が言い争っている間に、佳奈多は理樹の元に駆け寄ります。

佳奈多「直枝、大丈夫!?」

理樹「えっと、二木さん、何だよね? 僕を助けるために、わざわざそんな格好に・・・。」

佳奈多「そうよ。あなたを助けたくて私、恥ずかしいの我慢してこんな格好に・・・。」

葉留佳「ちょっとちょっとちょっと! 黙って聞いてればそんな格好とかこんな格好とか! それはるちんの姿デスヨ! まるで私の姿が恥ずべきものみたいな言い方じゃないデスカ!」

佳奈多「葉留佳・・・。悪いけど、この服装はいくら何でもあり得ないわ。」

葉留佳「が~ん! ちくしょぉ~、いたる先生に言いつけてやる!」

 葉留佳が泣きながら走り去っている間に、佳奈多は理樹を縛っていた縄を解きました。そして、超電磁っぽいバトンのリセットスイッチを押して、元の姿に戻りました。

佳奈多「約束よ。直枝は返してもらうわ。」

唯湖「ふむ・・・。返すという約束までした覚えはないが・・・しかしキミがそうしたいというのなら、私は一向にかまわんよ。」

佳奈多「え・・・?」

唯湖「理樹少年はキミに返そうといっているんだ。」

クド「りき いず りたーんど かなた なのですっ!」

美魚「直枝さんは二木さんのものになってしまったということですね・・・。ちょっと嫉妬してしまいます。」

佳奈多「え? あ、あのこれは。」

唯湖「まあまあ、いいじゃないか。さて、お邪魔虫どもは退散するとしようか。」

 そう言って、唯湖と美魚とクドは、立ち去ってしまいました。

 

 

 

佳奈多「あ、あの、直枝・・・。」

理樹「二木さん。助けてもらって、僕うれしいよ。」

佳奈多「直枝・・・。と、当然のことをしたまでよ。」

理樹「そうかな。そうかもね。でも僕は、二木さんに助けてもらったことは凄く嬉しかった。他の誰でもない、二木さんに。その事実は変わらないから。」

佳奈多「――!」

理樹「二木さん。何かお礼がしたいな。何がいい? 何でも言ってよ。」

佳奈多「そうね――。じゃあ、さっきのこと忘れて。」

理樹「・・・え?」

佳奈多「あんな恥ずかしい変身をしたことを忘れてって言ってるの。」

理樹「それは・・・出来ないよ。せっかく二木さんが僕を助けてくれた、大切な思い出なのに。」

佳奈多「直枝・・・な、何言ってるのよ。」

理樹「ごめんね。ちょっと恥ずかしいこと言っちゃったかな。でも、こんな恥ずかしいことでも、僕にとってはとても大切なことなんだ。僕と二木さんの、二人で過ごした時間、その一つ一つの記録なんだから。」

佳奈多「~~~!!!」

 佳奈多は何も言えなくなってしまいました。

理樹「とりあえず・・・どっか行こうか。こんな所に突っ立ってても何だし。」

佳奈多「そ、そうね。」

理樹「行きたいとこ、ある?」

佳奈多「特に・・・直枝に任せるわ。」

理樹「うん。じゃあ、とりあえず街にでも出てみようか。」

 そう言って二人は、並んで歩き出しました。端から見るとそれは初々しく、しかし仲睦まじく見えるように。

 

 そして。そんな二人を陰から見ている一人の人物がいました。

恭介「俺の・・・理樹を・・・!」

 

 

 とりあえず 完 

 

 

 

 

変身マ女っ娘佳奈多ちゃん2

 

 むかしむかし・・・と言っても、1ナノ秒くらいの昔と思っておいてください。ある所に、二木佳奈多ちゃんというとっても真面目な女の子がいました。あまりにも真面目な為に「マ女」という称号をつけられたあげく、「マ女っ娘に変身する」という、なんだかよくわからない羞恥プレイまでさせられる羽目になりました。

 でもそのおかげで密かに思いを寄せていた直枝理樹と結果的に結ばれることが出来たので、佳奈多自身にとってもきっと良いことだったと言えなくもないでしょう。

 

 しかし。この結果を全く歓迎していない一人の人物がいました。

恭介「俺の理樹を…横取りしやがって!」

 棗恭介君は、理樹君のことが大好きでした。そして、理樹も自分のことが好きだと信じて疑っていませんでした。それが、突然現れたくそ真面目女に理樹君をかっさらわれたものですから、おもしろいはずがありません。

恭介「俺は…二木佳奈多に復讐する!」

 佳奈多の新たな災難が始まろうとしていました。

 

 

 その日佳奈多は、クド・美魚と一緒に、街に買い出しに行こうとしていました。

クド「佳奈多さん。いよかん星人との勝負は、いつしていただけるですか?」

佳奈多「クドリャフカ…。あなた、まだいよかん星人やってたの?」

クド「はい。解雇された覚えはないので。任を解かれていない以上、最後まで職責を全うするのが人としてのあり方だと思います。」

佳奈多「クドリャフカ。あなたのその律儀な性格はとってもいいものだと思うけど。もう少し目の前の事実を疑い検証することも覚えた方がいいわ。」

クド「あの、それはどういう意味ですか?」

美魚「単刀直入に言ってしまえば、能美さんは来ヶ谷さんにだまされていたということです。」

クド「ガーン!」

 そんな会話をしている彼女たちの前に、突如一人の怪しい男が現れました。

???「はりゃほれうまうー。」

佳奈多「…。」

クド「…。」

美魚「…。」

???「二木佳奈多。俺と勝負しろ!」

佳奈多「…西園さん、今日買うものはなんだったかしら?」

美魚「ガスボンベです。」

佳奈多「そうね。ガスボンベね。ガスボンベ。」

クド「ガスボンベなのですっ!」

 三人とも目の前にある現実を無視することに決めたようです。

 しかし、男は食い下がってきます。

???「無視するなぁっ! 二木佳奈多、俺と戦って勝つまで、ここは通さないぞ! そして俺が勝ったら理樹を返してもらう。」

佳奈多「…。」

 佳奈多、はぁとため息をつきます。なんか変なのに目つけられちゃったなあ。風紀委員長とかやってた関係かしら。なんにしろ逆恨みなんだろうけど。でも、無視が通じる相手ではなさそうだし。何とか手っ取り早く片付ける方法はないかしら。

 佳奈多、少し考えた後、クドに言いました。

佳奈多「クドリャフカ、醤油取って。」

クド「どぞです。」

 クドから醤油を受け取った佳奈多は、その中身を勢いよく、怪しい男の顔面にぶちまけました。

???「目があぁ~!」

クド「百万ですかっ!?」

恭介「違うっ…! 目が…目が痛てぇんだよ…ッ! ちくしょう…わけわかんねえよ…なんでこんな理不尽なんだよ…ッ! 俺だって…俺だってなあ…!」

 怪しい男の正体であった恭介さんは、ちょっと錯乱しているのかいろいろうわごとのようなことを言い続けています。

恭介「チクショウ…話くらい聞いてくれたっていいじゃねえかよ…ッ! 俺だって、俺だって理樹のことがなあ…好きなんだよ…ッ!」

 その言葉に、美魚がびくんと反応します。

美魚「二木さん。恭介さんの話を聞いてあげませんか?」

佳奈多「…まあ、話だけなら。」

 佳奈多はあきらめたように言い放ちました。その言葉を受けて、恭介は語り始めました。

恭介「俺と理樹は愛し合っていた。そう、碇シンジと渚カヲルの如く。」

美魚「!!!」

恭介「だがそれを、二木佳奈多、お前は引き裂いた…!」

佳奈多「いや…愛し合ってたとか引き裂いたとか…ちょっと待ってよ。」

恭介「いや待たない。これから、俺と理樹がどんなに愛し合っていたか、それを語る。」

美魚「どうぞ。」

佳奈多「いや…ちょっと勝手に許可しないでよ。」

 美魚と佳奈多が言い争っている間に、恭介は語り始めていました。

恭介「俺と理樹は、毎晩のようにベッドをともにしていた。俺と理樹は寮の部屋が違うから、そうすることはあまり簡単なことではなかった。だが、俺の同居者がいない時を見計らったり、理樹の同居者の真人に頼み込んで少しの間出て行ってもらって、そうして一緒の時間を過ごした。もちろん、唇も体も重ね合わせた。『理樹は本当に可愛いなあ』そう言いながら俺は理樹の股間に手を伸ばす。そういうそぶりを見せるだけで、理樹は身をすくめてしまう。俺はそんな理樹の頭を撫でて落ち着かせてから、そっと理樹の下着の中に手を入れる。理樹は『うっ』と軽い声を上げて、また身をすくめてしまう。『理樹は本当に感じやすいなあ。タマ筋に出てるぜ。』そう言って俺は理樹のものを愛撫し続ける。理樹の息が荒くなってゆく。次は穴だ。理樹が十分に快感を味わったところで、俺は手をもっと下にのばしていく。そこにある穴の周りを、優しく優しくなぞっていく。『気持ち悪いよ』理樹がそう言う。『すぐに良くなるさ』俺は答える。『でも、汚いよ。こんな所を触ったら』『理樹の体が汚いはずが無いじゃないか』そう言って俺は理樹の足を持ち上げ、ズボンとトランクスを引き上げて脱がした。理樹の秘部が俺からはよく見える。『恥ずかしいよこんな格好』理樹は抵抗するが俺はそれを無視して、自分の顔を理樹のそこに近づけた。『ちょ、ちょっと恭介』俺は舌を出して、理樹の穴の周りを舐め始めた。『ほら。理樹の体が汚いはずがないんだ。』『うう、余計に恥ずかしいよ』理樹の体は羞恥心で真っ赤に火照っている。『なあ、入れてもいいか?』俺が理樹に訊くと、理樹はやっとの思いという感じで首を縦に振った。俺は半立ちになり、自分のズボンを」

佳奈多「待った!ストップ!ストップ!」

美魚「…何故止めるのですか?」

佳奈多「何故って…いや、ヤバすぎでしょ。これは。いろんな方面で。」

美魚「きっとこれからがいいところなんですよ?」

佳奈多「よくない。とにかくこれ以上はダメ。禁止。」

クド「わふ~・・・。」

 クドはすっかりのぼせ上がってしまっています。

恭介「…まあ、いいだろう。俺たちがいかに愛し合っていたかと言うことは、これで十分に伝わったはずだ。」

佳奈多「それ、あなたの妄想でしょ?」

恭介「…。」

佳奈多「直枝がそんな、男同士で愛し合うなんて聞いたことない。そんな趣味があるとも思えない。」

恭介「何故そんなことが言える! お前に理樹の何がわかるって言うんだ!」

佳奈多「わかるわよ。だって、その…直枝はその…少なくとも今は、」

 佳奈多、そこで少し口ごもってしまいます。

佳奈多「今は、私のことが…好きなんだから。」

 佳奈多は顔を真っ赤にして、恭介に言ってやりました。恭介は、苦痛に顔を歪ませています。

恭介「くそぉ…ジェラスイイィィッッッ!!!」

佳奈多「そういうわけだから。あなたの馬鹿な話にこれ以上付き合っている理由はないわ。」

 そう言って佳奈多、立ち去ろうとします。それを恭介呼び止めます。

恭介「待て。俺と戦え二木佳奈多!」

佳奈多「戦わない。あなたの話はちゃんと聞いた。これ以上馬鹿なことに付き合ってられない。」

恭介「ふふ…そうか? そんなことを言っていいのか?」

佳奈多「? 何よ。」

恭介「理樹は今、俺の手下の監視下にある。」

佳奈多「!?」

恭介「井ノ原真人を知っているだろう。あいつが今、理樹を監視しているはずだ。もしお前がここで俺を倒さなかった場合…。」

美魚「すぐにでも恭介さんが直枝さんの元に向かい、そして直枝さんと、あんな…ああこれ以上は言えません。」

佳奈多「ちょっと、何変な想像してるのよ。」

恭介「いや、あながち間違いでもないぜ。」

佳奈多「な…!」

恭介「何故なら俺と理樹は愛し合っているはずだからな。俺が理樹の元に向かえば、自然とそういう流れになるはずだ。」

佳奈多「この人…頭大丈夫かしら?」

クド「佳奈多さん。なんにしろ、勝負しないと棗さんはここを通してくれないと思うのです。」

美魚「ですね。」

佳奈多「…。」

 佳奈多少し考えます。勝負ってことは、また例のあのマ女っ娘とかいうのに変身しなきゃならないのかしら。やだなあ。私、あれあんまりやりたくないんだけど。誰か代わりにやってくれないかしら。

 佳奈多、少しだけ救いを求めるように美魚の方を見ます。美魚、すすっと引いていきます。

美魚「…申し訳ないのですが。今回私、中立の立場を取らせていただきます。」

佳奈多「え?」

美魚「筋からいえば、私はマ女っ娘仲間である二木さんを支援するべきなのでしょうけど。ただ今回、私極めて個人的な感情から恭介さんを応援したいという心境があるのです。両者の葛藤の結果、今回は中立の立場を取ることに決めました。」

佳奈多「個人的な感情って…何?」

美魚「それは言えません。」

佳奈多「どうしても聞かせてといったら?」

美魚「そうしたら私、恭介さんの味方をしますよ?」

佳奈多「…わかった。あなたはあんまり敵に回したくないわ。」

 はぁ、と佳奈多はため息をつきます。

恭介「話は終わったか? では、いくぞ。」

 恭介、またあの変な仮面をかぶります。

恭介「はりゃほれうまうー!」

美魚「さあ佳奈多さん。あなたも変身しないと、負けますよ?」

クド「そうです。今恭介さんがつけているマスクは、全ての能力値が+50になる、とっても強力な武器なのです。生身で勝つのは無理だと思います。」

佳奈多「詳しいのね、クドリャフカ。」

クド「情報戦の時代ですので。」

美魚「そういうわけですから、さっさと変身した方がいいですよ。ほら、恭介さん準備運動なのか、さっきからなんか怪しい動きしてます。」

佳奈多「でも…この場で変身するのは恥ずかしいわ。どこか物陰に隠れてしたいんだけど。」

美魚「そんなことをしている余裕はないと思いますよ。…いいじゃないですか、別に見られたって、変身シーン中で裸になるわけでもないですし。」

恭介「なにっ! 裸にならないのかっ!?」

佳奈多「…。」

クド「…。」

美魚「…。」

 三人が一斉に、恭介を白い目で見ます。

美魚「あなたは…直枝さん一筋なのではなかったのですか?」

恭介「も、もちろん理樹一筋だ。何を言うのかねキミは。」

美魚「では何故、そんな女人の裸に興味を示すかのような発言を…?」

恭介「そ、それは、俺だって男だし、普通に女性に興味を示すことくらいあって当然…。」

美魚「…恭介さん。私、あなたには失望しました。」

恭介「そ、そんな…。」

美魚「そういうわけですから。私、中立はやめて二木さんに肩入れしたいと思います。」

佳奈多「肩入れと言わず、出来れば代わりに戦って欲しいんだけど。」

美魚「それは…ちょっと気が乗らないですね。」

佳奈多「どうして。」

美魚「多くの方がお察しの通り、私が変身した場合は美鳥の姿になるのですが…。でも、美鳥の立ち絵って少なすぎるんですもの。」

佳奈多「…それが理由?」

美魚「いけませんか?」

佳奈多「そう開き直られると、ダメとも言いづらいわね。…わかった。私が変身するから。」

美魚「ご理解いただけて幸いです。では私は、二木さんを援護する為に恭介さんを蹴り続けることにします。その間に二木さん、あなたは変身してください。」

 そう言うと美魚は、恭介の元に近づいてゆき、こう言いました。

美魚「恭介兄さん。私、前からあなたのこと蹴りたかったの…。」

恭介「兄さん…!」

 「兄さん」という言葉に恭介が感動している間に、美魚は恭介の足をげしげしと蹴り始めました。

佳奈多「なんか、あれだけでも十分勝てそうな気がしないでもないけど…。」

 そう言いつつも佳奈多は、変身の為の準備に入ります。目を閉じ、自己暗示をかけ、そして大声で叫びます。

佳奈多「リリカルヘリカルトカマクレーザー、未来を繋ぐ胸キュンドッキンエネルギー、素粒子ビームでみんなのハートを融合しちゃえ~!!!」

 佳奈多の体が光で包まれ、そして佳奈多はマ女っ娘かなたんに変身しました。

恭介「って、三枝の姿じゃねえか。」

佳奈多「そのことには突っ込まないで。仕様らしいから。」

 変身した佳奈多は体勢を整え、恭介に向かっていこうとします。と、そこにクドが何かを手渡してきました。

クド「佳奈多さん。今の佳奈多さんなら、これが使えるはずです。」

 そういってクドは、ラッパを手渡してきました。

佳奈多「これは…?」

クド「葉留佳さんからもらった、『突撃ラッパ』です。使うとステータスがあがりますよ。」

佳奈多「で、でも…。」

クド「佳奈多さん。ここは腹をくくって、葉留佳さんになりきることが大事だと思います。そうしないと、恭介さんに勝つ事なんて出来ませんよ? 佳奈多さんなら出来ます。」

佳奈多「そ、そうね。そういうものかしら。」

 佳奈多は突撃ラッパを受け取り、それを高らかに吹き鳴らしました。

 ぱぱらぱっぱぱぱー!

佳奈多「とーつーげーきーーーー!」

 佳奈多は万歳しながら、恭介に向かって突進していきました。美魚がまだ恭介のことを蹴っていましたが、佳奈多が突撃してくるのを見ると、すすっと離れていきます。

恭介「うわ!? な、なんだ。来るな!来るな!!」

 恭介は逃げようとしますが、さっきまで美魚に蹴られていたので足が思うように動きません。そのまま、突撃してきた佳奈多に体当たりされてしまいました。

恭介「うわあああぁぁぁーーーっっっ!!!」

 恭介はそのまま吹き飛び、変な仮面も取れてしまいました。そして美魚が取れた仮面の元に歩み寄り、それを手にとって、恭介の頭をぽかりと殴りました。

美魚「恭介さん…正座しなさい。」

恭介「はい…。」

美魚「二木さん…さあ、今のうちに直枝さんの元へ。」

佳奈多「え?」

美魚「直枝さんが監視されている…とさっき恭介さんが言っていたでしょう。探しに行った方がいいと思いますよ。」

佳奈多「…わかった。とりあえず心当たりを当たってみる。」

美魚「私も、恭介さんから場所を聞き出してお説教が済んだら、そちらに向かいますので…。」

クド「私も探してみるのですっ!」

 佳奈多とクドは、手分けして理樹の居場所を探しに行きました。残った美魚は、恭介への説教を延々と続けていました。

美魚「恭介さん。そもそも、あなたのその緑川ボイスは何の為にあるとお思いですか?」

恭介「はい、はい…、すんません、おっしゃるとおりです…、はい、ほんとすいませんでした…はい、もう堪忍してください…、はい、はい、…、申し訳ございませんでした…。」

 

 

 

 場所は変わって、理樹と真人の部屋。

真人「筋肉筋肉~♪」

理樹「筋肉筋肉~♪」

真人「筋肉筋肉~♪」

理樹「筋肉筋肉~♪」

真人「筋肉筋肉~♪」

理樹「筋肉筋肉~♪」

真人「筋肉筋肉~♪」

理樹「筋肉筋肉~♪」

真人「筋肉筋肉~♪」

佳奈多「直枝っ! 大丈夫!?」

理樹「筋肉筋肉~、って、え?」

佳奈多「…。」

理樹「…。」

真人「…。」

佳奈多「…何をしていたの?」

理樹「え? えーっと…。 筋肉筋肉~♪」

佳奈多「そうじゃなくて。あなた、井ノ原真人に監視されてたんじゃなかったの?」

理樹「監視?」

真人「あー…。そういや恭介から、そんなこと依頼されてたっけなあ。でも監視ったってようするに見てるだけだろ? だったら、どうせ同じ部屋だし、ただ見てるだけでいいなら何にもしなくていいかなと。」

佳奈多「…。」

理樹「ま、まあそういうことらしいよ?」

佳奈多「で。さっきの筋肉は、いったい何なの?」

真人「そりゃおめえ。あれはいつもの、理樹と俺との筋肉コミュニズムよ。」

理樹「暇だったから…。それと真人、コミュニケーションね。」

佳奈多「…。」

理樹「あれ? どうしたの佳奈多さん?」

佳奈多「人が心配して駆けつけてみれば…何が筋肉筋肉よ!」

真人「何だと聞き捨てならねえな。あたしは毎日毎日理樹といちゃいちゃしたいのにいっつもこの筋肉バカが邪魔します、おまけに筋肉筋肉とかいって変な遊びして悪い洗脳でもしてるんじゃないかと心配です、あー、この筋肉どっかに消えてくれないかしらー、とでも言いたげだなあ、ああん?」

佳奈多「その通りよ!」

真人「え。」

佳奈多「何よ! 直枝のバカ…ッ!」

 そう言って佳奈多は、部屋を飛び出していってしまいました。

理樹「ま、待ってよ佳奈多さん!」

 理樹も、佳奈多の後を追って部屋を出て行ってしまいました。

 後に残された真人は呆然としています。

真人「俺は…どうすれば。」

クド「いつも通りにしていればいいと思います。」

真人「クド公…。 いつも通りっていうと、筋肉でもいいのか?」

クド「はい。筋肉でもかまわないと思います。」

真人「よっしゃぁ! 筋肉筋肉~!」

クド「まっする いず のっと えぼりゅーしょん。いっつ れぼりゅーしょん! なのですっ。」

 

 

 

美魚「いいですか恭介さん。そもそもBLというのはですね。」

恭介「はい…、あの、俺、今、何の件で怒られてんですか?」

 

 そんな様子を、陰から見守る一人の少女の姿がありました。

鈴「馬鹿な兄貴だが…敵は取らねばなるまい。」

 

 

とりあえず 完

 

 

 

 

 

 

変身マ女っ娘佳奈多ちゃん~完結編~

 

 むかしむかし…まあ、だいたいリトバスが発売された頃くらいの昔と思ってください。あるところに、二木佳奈多ちゃんというちょっぴり危ないお姉ちゃんキャラな女の子がいました。どう危ないかというと、妹コスプレが趣味だったりします。そこにつけこまれて、妹に変身する「マ女」なんてのをやらされたりしていました。

 

「しかし最近は平穏な生活を送っています。最大最強の敵、棗恭介を倒してしまったからです。佳奈多ちゃんにかかれば例えこの世界のマスターといえども敵ではないのです。つよいやかなちゃん!すごいやかなちゃん!ゆけゆけぼくらのすーぱーかなちゃん!」

「…葉留佳、仕事の邪魔だから静かにしてくれる?」

 佳奈多は寮会室でお仕事中です。次期寮長に指名されてしまったので、最近ちょっと忙しいようです。それを知ってか知らずか、妹の葉留佳が後ろで騒いでます。寮長のあーちゃん先輩から「かなちゃん」という呼び方を教えられて、ちょっとテンション上がっているようです。

「かなちゃん! はるちん暇なので遊んでくだサイ!」

「私は暇じゃないの。見てわからない葉留佳じゃないでしょう。あと、かなちゃんって呼ばないで」

「わかりました、デハ、後ろで両手に扇子振りかざしながら応援することにしマス」

「うるさいだけだからやめて。手伝う気がないなら外に出てなさい」

「私が手伝うと一瞬で終わってしまいますヨ? そんな人生つまらないと思いませんカ?」

「…いいから外に出てなさい」

「ワカリマシタヨ。外で、他人に迷惑かけながら遊ぶことにしマス」

「待ちなさい! 他人様に迷惑かけてはだめよ!」

 佳奈多は慌てて葉留佳を追いました。葉留佳がヒャホーゥと言いながら走って逃げたので、佳奈多もそれを追って外に出る羽目になりました。

 

 

 

 

「あれが二木佳奈多か…」

 葉留佳を見失って外で探し回る佳奈多、それを物陰から見つめる一人の陰がありました。棗鈴、棗恭介の妹です。

「彼女に恨みはないが、兄が倒された以上かたきをとらなければならない。兄のことなどどうでもいいが、しかし私はそうするものだと兄に教えられて生きてきた。…ん、何か言ってることがおかしいような…」

「それは、あなたが本当はお兄さんのことを大好きだからですよ」

 鈴の後ろからそっと囁くもう一つの陰がありました。

「うわあっ、み、みお!? いつからそこにっ」

「つい今さっきです。それより鈴さん、鈴さんみたいな人のことをなんて言うか、ご存じですか?」

「な、なんだ…」

「ブラコン…っていうんですよ。うふふ…」

「な! なにをいうんだ、私は、ブラコンなんて…知らない、そんな言葉は知らない、だから私はブラコンじゃない!」

「意地を張る鈴さん、かわいいですね…なるほど、恭介さんが溺愛するわけです」

「な、何を言うんだ…」

「で、そんな恭介さんの仇を鈴さんはとるのですか? それともやめますか?」

「うん、それはちゃんとやる。それは私に課せられた使命だからな」

「ですが、彼女は手強いですよ?」

「わかってる。何しろ、あの兄を倒した女だからな」

「ええ。それはもう、爽快なまでに凶悪に倒しました」

 実際には美魚が半分くらい手を貸しているのですが、そういう事実は無視のようです。

「本気で彼女に挑むのなら…このくらいの準備は必要ですよ」

 そういって美魚は、鈴の手に小さな機械を手渡しました。

「そ、そうか。ありがとう」

「それと…作戦も必要ですね」

 

 

 

 

 さて。佳奈多はまだ葉留佳を探して外を歩き回っていました。そこに物陰から、佳奈多の目の前に飛び込むように鈴が現れました。

「二木佳奈多、たたかえっ」

「たたかわない。じゃ」

 佳奈多冷たく言い捨てて立ち去ろうとします。

「なにぃ…いや、待ってくれそれは困る」

「私は困らない。じゃ」

 佳奈多あくまで冷たい態度を貫きます。鈴は困惑した表情でもごもごしてしまいましたが、何とか言葉を絞り出しました。

「かなたは…困ってる人を見捨てて立ち去る奴なのか」

「……」

 佳奈多は立ち止まり、少し考えてから返答を返しました。

「いきなりたたかえなんて言ってくる人に、困ってるから助けろと言われてもね。いろいろ順番が違うんじゃない?」

「うん、それもそうだな」

 鈴は少し考えてから言いました。

「じゃあ順番に説明しよう。おまえはうちの兄に屈辱を与えて倒した。ロクデナシだがしかし大事な兄だ。かたきをとらねばならない。そこで私は理樹を人質にとってねこねこの刑にした。どちらかが倒れるまで解放されない。だからたたかえ」

「直枝を…え、何? ねこねこの刑?」

「うん、ねこねこの刑だ。理樹を言うこと聞かないドラ猫と一緒に部屋に閉じこめた。かなり凶暴だから、理樹がどうなるかあたしも保証できない」

「……」

「早く助けに行かないと、理樹の身が危ない、かもしれない」

「だったらさっさと直枝の居場所を教えなさいよ」

「あたしとたたかって、勝ったら教えてやる。あたしが勝ったらあたしが助けに行く。…だが、たたかわないということだと、どっちも理樹を助けにいけない。それは困る」

「……」

 佳奈多、それはちょっと納得行かないとでも言いたげな表情をします。しかし、しばらく考えた後、鈴に返しました。

「わかったわ。勝っても負けても、戦えば直枝は助かるのね」

「そういうことになるな」

「だったらお望み通りにしてあげるわ。…さっさとかかってきなさい」

「いや、変身しろ」

「…は?」

「あたしは卑怯な手を使ってたたかいに持ち込んだし、変身するぐらいのハンデは与えていいと思う。それに馬鹿兄貴も変身したおまえに倒された、変身したおまえを倒さないと意味がない」

「いや、あのね。気遣ってくれてるつもりなのかもしれないけど、私は変身したくないの」

「変身しないとたたかわない」

「……」

「どうした。はやくしないと理樹があぶないぞ」

 佳奈多、理不尽なものを振り払いたいかのように首を振ります。

「どうしてこっちが戦いたがってるみたいな流れになってるのよ…」

 しかし、理樹が人質に取られている以上、あまり強気の態度もとれません。意を決した佳奈多は、超電磁っぽいバトンを取り出します。

「出来れば向こうを向いていてくれるとありがたいのだけど」

「んー。まあ、あたしは別にかまわないが」

 鈴が向こうを向いたのをしっかり確認してから、佳奈多は超電磁っぽいバトンをかざしながら叫びました。

「リリカルヘリカルトカマクレーザー、未来を繋ぐ胸キュンドッキンエネルギー、素粒子ビームでみんなのハートを融合しちゃえ~!!!」

 佳奈多の体が光に包まれ、そして長い髪が二つ止めのお下げにまとめられたマ女っ娘かなたんの姿になりました。

「ほんとにはるかの姿になるんだな…」

 再び佳奈多の方に向き直った鈴が言いました。

「ええそうよ。さあさっさと済ませましょう、かかってきなさい」

「うん、でもその前に一ついいか?」

「なによ。まだなにかあるの?」

「さっきからクドは、あそこで何をしているんだ?」

 鈴の視線は佳奈多の後ろに向いています。佳奈多が振り返ると、そこにはビデオカメラを持ったクドの姿がありました。

 佳奈多はクドに歩み寄り、そして訊きます。

「クドリャフカ、それは何なのかしら?」

「これですか? これはですねえ、ビデオカメラって言うんですよー」

「そんなのは見ればわかるわ。私はそれの使途を訊いているの」

「これは放送委員会の備品です。かけがえのない青春の1ページを保存する為のすばらしい道具だと、来ヶ谷さんが言っていました」

「……」

「編集したらDVDに焼いてみんなに配ってくれるそうですよ。楽しみですねえ」

 佳奈多はそれには答えず、無言で手を伸ばしてビデオカメラを奪い取ろうとします。クドはビデオカメラを持った手をぶんぶんと上にしたり横にしたりして、それをかわします。

「だめですっ。これはお渡しできませんっ」

 佳奈多はがっくりと地に両手をついてうなだれてしまいます。それを見ていた鈴はしばらくどうしたものかと考えていましたが、やがてゆっくりと佳奈多の方に向かって歩き始めました。

「かわいそうだが…たたかいには時に非常さも必要…と、みおが言っていた」

 そんな鈴の行く手を阻むように、突如上から人が舞い降りてきます。膝を突いて地上に降り立つと、2つに結んだおさげを左手でさっと払いながら立ち上がります。

「は、はるかっ!?」

「はい、正義の味方はるちんデスヨ」

 その声に、佳奈多が顔を上げます。

「葉留佳…どうしてここに…?」

「それはもちろん! 姉がこんなにおもしろそうなことやってるのに黙って見てるなんて我慢できなかったから!」

「え?」

「…姉妹愛の精神に基づいて姉を助けに来た、という意味デスヨ?」

「……」

 佳奈多、思い切り疑った表情をしています。

「…自分の姉に信用して貰えない妹…。結構辛いものがありますヨ」

 その言葉に佳奈多ははっとします。

「ごめんなさい葉留佳、疑った私が悪かったわ。あなたは私にかこつけて棗さんと乱闘して遊び倒した挙げ句私の仕事の邪魔をしたことをチャラにしたいわけでは無く、純粋に私の事を助けたくて事態を平和的解決に導くべく仲裁に現れたのよね」

「スミマセンただ鈴ちゃんとじゃれ合って遊びたかっただけデス。…あ、でも姉妹愛が全く無いわけでは無いのでそこは疑わないで下サイ」

 その佳奈多と葉留佳のやりとりを見ながら、鈴が困った顔で呟きました。

「2人がかりだなんて卑怯だ…」

「確かに卑怯だとは思うけど。でもそもそもあなたから挑んできた勝負だし、多少の理不尽は受け入れてもいいと思うけど。それとも勝負自体やめる?」

「…いや、勝負はやめない。そうだ、みおからこんな時に援軍を呼べるコードを設定して貰っていたんだった」

 そう言って鈴は、携帯電話を取り出します。

「呼んでいいか?」

「まあ、こっちに援軍がいるのにあなたに呼ぶな何てのは理不尽すぎるわね。誰を呼ぶの?」

「わからん。誰が来るのか知らされていない。…だが、私のキャラクターを考えて、きっと猫だろう。うん、猫に違いない」

 そういって鈴は、携帯にコードを打ち込みます。

 次の瞬間、さっと一陣の風が吹き抜けたような感覚をその場にいた全員が感じました。そして、上から長身の男がすたっと降り立ってきました。

「猫よりかっこいいお兄様の登場だ」

 鈴の兄の棗恭介でした。

「…」

「…」

「…」

「…」

 みんな絶句してしまっています。特に鈴は、あからさまにがっかりした顔になってしまっています。

 そんな面々をよそに、恭介は語り始めます。

「二木佳奈多。前回は油断して不覚を取ったが、今日はそうはいかない。…うん、西園はいないな。なら俺に勝ち目はある。そちらは姉妹でタッグか、いいだろう、相手にとって不足は無い。東アジア最強と言われた棗兄妹のコンビネーション、貴様らの眼にしっかりと焼き付けるがいい!」

「私に倒されたくせに何言ってるんですか」

 恭介の口上を聞いていなかったかのように、佳奈多が冷たく返しました。恭介、しかし強気で佳奈多に返します。

「俺を押し倒していいのは理樹だけだ!」

「…あっそ。じゃあいっそあーちゃん先輩も呼んで今の台詞聞かせた上で3人がかりで挑みましょうか?」

「いや、あいつはやめてくれ、勘弁してくれ。2人まで、2人までだ」

「私とあーちゃん先輩ですね」

「はるちんお役御免!?」

「いやそうでは無くて…二木と三枝の2人にしてくれ。それなら勝てそうなのでそれでお願いします」

 佳奈多は、ふんと鼻を鳴らして答えます。

「見くびられたものね…どこからその自信が出てくるんだか」

「いやだから、それはさっき説明しただろう。西園いないし、鈴もいるし、東アジア最強だし。だから勝てる」

「うん。で、その鈴ちゃんはどこにいるデスカ?」

「え? いや鈴はここに…」

 葉留佳の言葉に恭介が傍らを見ると、さっきまでそこにいた鈴がいません。辺りを見渡して探してみると、植え込みの影で猫と遊んでいる鈴がいました。

「♪ねーこ ねーこ うたうー」

「あー。あれは完全に、やる気無くしちゃってますネ」

「何故だ鈴、兄が助けに来て形勢は逆転したというのに、なぜ戦いを放棄する!」

「そりゃぁあなた、元々兄のかたきを取る為に私に戦いを挑んできたのに、その兄が助けに来てたら、戦う意味自体が無くなるでしょう」

「そ、そういうものか?」

「サアどうします恭介さん。大人しく降伏しますカ? それとも1対2で戦いますカ?」

 恭介を前に葉留佳は身構えます。恭介は神妙な顔でそれに応じます。

「降伏などしない。だがあまりふざけていると本当に足下をすくわれかねないからな。本気で行くぞ」

 そう言って恭介は、以前佳奈多と戦ったときに使用した変な仮面を取り出しました。が、恭介が葉留佳に気を取られている隙を見て、佳奈多が忍び寄っていて、懐に飛び込んで仮面を奪い取りました。

「でかしたお姉ちゃんっ。そのまま抱きついてっ」

「え?」

 葉留佳の言葉に戸惑いながらも、佳奈多は恭介に抱きつきます。勢いで恭介は後ろに倒れ込みました。そして葉留佳も恭介に突進してきて、2人一緒に抱きつきました。

「な…何をする、何のつもりだ」

 戸惑う恭介に、葉留佳が甘えた声で語りかけます。

「たまにはこうさせてよ、お兄ちゃん」

「な…!」

「…ほら、お姉ちゃんも。早く早く」

 佳奈多はさすがにためらっていましたが、やがて意を決して言葉を発しました。

「もう争うのはやめましょう…お兄様」

「ぐはっ」

 これは少し来たようです。しかし何とか冷静さを取り戻した恭介は、2人に言いました。

「お前らは…俺の妹じゃ無い…」

「えー。ひどいなあお兄ちゃん」

「お兄様。あなたは直枝理樹にとって兄のような存在だと聞いています。そして私は今直枝と付き合ってます。つまり、私にとってもあなたは兄も同然。そして葉留佳は私の妹だから、あなたにとっても妹になる。違いますか?」

「…いろいろ納得出来ない点が多すぎるぜ」

「だがお兄ちゃんが美人の妹二人に抱きつかれて大喜びしてるのは事実! あそこでクド公が証拠の映像も取ってますしネ!」

「ぐ…」

 恭介が苦悶の表情を浮かべます。が、すぐに思いついたように含み笑いを始めました。

「ふ…ふっ、ふはははは! そうさ、俺は今最高にハッピーだぜ! 双子の妹二人に甘えられてこんな嬉しいことがあるか! だがそれがなんだ? それがどうした? 俺は全く動じていないし、敗北感も無い。これが戦いだというのならそう、この妹天国を心の底から楽しんでいる俺こそがむしろ勝者、人生の勝者だ!!!」

「…いつまでそんな強気を言っていられるかしら?」

「いつまで? いつまでもだ! この世に妹がいて俺を愛してくれる限り、永遠にだ!」

「…」

 佳奈多は無言で頭をずらし、恭介の視界を開けます。その先には、目を光らせんばかりの鬼の形相で立ちすくんでいる、鈴の姿がありました。

「り、鈴…」

「……」

「ま、待て。話を聞け。お前はたぶん誤解している。だいたいだな、そもそもだな、これは元々お前の戦いであって俺はそれを助ける為にやってきたわけで」

「…ド変態」

「うわああぁぁぁ………」

 鈴が冷たく言い放ち、恭介は叫び声と共に魂が抜け落ちた状態になってしまいました。佳奈多は恭介に抱きついていた手を放し、起き上がりながら言いました。

「勝った…の?」

「んー。鈴ちゃん次第だと思いますガ」

「ん? あたしか?」

 んー、と暫し考える仕草をしてから、鈴は言いました。

「かなたの勝ちでいいんじゃ無いか。そもそもこの馬鹿兄貴が全て悪い」

「だそうですヨ」

「そう…」

 佳奈多は立ち上がって服の埃を払いながら、溜息をつきました。そして、はっと気づいたように言いました。

「そうだ、直枝っ。直枝はどこにいるの!?」

「おー、そうだった。女子寮の…」

 

 

 

 

 

 女子寮の一室。その扉の前に駆け込んできた佳奈多は、勢いよく扉を開けて叫びました。

「直枝っ! 直枝はいるの、無事なのっ!?」

「あ、佳奈多さん! 良かった助けに来てくれて…」

「無事で良かった…って、なによその恰好」

 佳奈多の視界に入った理樹は、なにやらフリルでいっぱいの白黒の衣装を着せられていました。

「これは…その…小毬さんが無理矢理…」

 理樹が言いよどんでいると、小毬が姿を見せました。

「あー、かなちゃん。いらっしゃ~い」

「え? 急いでたから良く確認してなかったけど、ここって神北さんの部屋なの?」

「そうですよ~」

「でも棗さんは、直枝を言うこと聞かないドラ猫と一緒に閉じ込めたって…」

「そうそう。鈴ちゃんが来てね、ドア開けたと思ったら『ねこねこの刑だっ』って言って理樹君を放り込んできて…。さーちゃんが怒っちゃって、もう大変だったんだよ…」

「当たり前ですわっ。あの子ったら、人のことを、言うこと聞かないドラ猫扱いして…。一体どっちが…」

 佐々美がぶつくさ言っている間に、佳奈多は理樹に駆け寄り、理樹をひしと抱きしめました。

「え、佳奈多さん…?」

「無事で…良かった…」

「うん…写真撮られたりしたけど、それ以上のことはされてないよ…」

「そう…これからはもうこんな事が無いように、もっと側にいるようにするわ」

「でも佳奈多さん忙しいのに」

「それでも時間を作る…だから直枝も、簡単に他の子に付いていくことが無いようにして」

「うん、気をつけるよ」

「直枝…」

 佳奈多が理樹を抱きしめていると、後ろの扉の方から声がかけられました。

「あらあら、これはこれは」

 声に気づいた佳奈多が振り向くと、ドア口には女子寮生達が大量に集結していました。

「みんなの前で見せつけてくれるわねえ。いくら公認の仲だからって」

「あーちゃん先輩!」

 その後ろで携帯電話を片手に話していた女生徒が、あーちゃん先輩に耳打ちしました。

「へえ。ねえかなちゃん、それにみんなも。男子寮側から提案があったらしいんだけど。これから食堂で、二人をだしに祭としゃれ込もうでは無いか、とのことよ」

 それを聞いた女生徒達の間から歓声があがります。

「ほほう、いわゆる二人の門出を祝う式、という奴かな?」

「やったー、結婚式だー」

「結婚式なのですー」

「たーんたーんたたんたんたんたん♪」

「やめなさい! 何、なんなのあなた達、小学生なのっ!?」

 歓声と佳奈多の怒号が響くなか、そっとその場から超電磁っぽいバトンを回収した美魚が廊下を歩いていました。

「…佳奈多さんはもう、これを使うことは無いでしょうね。さて、どうしたものでしょう…」

 そう呟く美魚の前に、一人の女生徒が立ちました。

「西園さん…」

「あら、古式さん。ごきげんよう」

「ごきげんよう…。あの、そのバトンなのですが」

「はい」

「先ほどまで二木さんが使ってらしたものですよね?」

「ええ。でももう、使われないと思いますので…どうしたものかと」

「そうですか…。あの、使う宛てが無いと言うことでしたら、そのバトン、私に譲ってはいただけないでしょうか」

「古式さんが、このバトンをですか?」

「はい。私、宮沢さんに言われるんです。いい加減新しい趣味を探せ、新しい自分を見つけろと。…そんなもの簡単に見つかるはずが無いと思っていましたが、そのバトンを手に入れれば、もしかしたらと…」

「…確かに、人生変わっちゃうかもしれませんね…」

「そういうわけですので…もしよろしければ…」

「…わかりました。古式さんなら大切に使ってくれそうです。…使い方はわかりますか?」

 

 こうして、佳奈多が理樹との絆をいっそう深めている間に、超電磁っぽいバトンは新たにそれを必要とする人の手に移りました。

 超電磁っぽいバトンで変身するようになった古式みゆきとそれに頭を抱える謙吾の話は…まあ皆さんのご想像にお任せするということで。

 

 

 

 完

 

 

 

 


こぴかな時々あー++

泣いた赤鬼

 

 

 むかしむかし、まあリトバスが発売された頃の昔と思って下さい。

 あるところに、鬼の風紀委員長と呼ばれる佳奈多ちゃんがいました。赤い髪留めをつけていたので赤鬼とも一部で呼ばれていました。

 

 佳奈多ちゃんは、最初目の敵にしていた理樹君がだんだん可愛くなって、妹に変装して仲間に入り込んで理樹君に接近しようとしていましたが、嫉妬した妹と恭介さんに蹴り出されてしまいました。

 そこで、変装せずにちゃんと仲間になりたいと考えました。

 

 しかし、今までが今までというか、今でもアレな子だったので、なかなか仲間に入ることが出来ませんでした。

 

 

 そんな様子を見て、数少ないお友達の青鬼さんが相談に乗りました。

 

「直枝さんと恭介さんの絆は断ち切れないのであきらめた方がいいですよ?」

「な、何言ってるの!? 私は別に…そんなんじゃ…そう、葉留佳。葉留佳の近くにいたいだけよ」

「三枝さんお姉さんの愛情が重いと、この間言っていましたが…」

「そんな、葉留佳がそんなことを…。というかあなた、相談に乗ってくれてるんじゃないの?」

「はい。もちろんです。ですから私に一つ案があります」

「聞かせてくれる?」

「はい。まず私が、みなさんの中に入っていって、嫌がらせをします」

「えっ。そんな事して大丈夫なの?」

「大丈夫です、その辺は考えがあります」

「ならいいけど。で、どうするの?」

「嫌がらせをする私を、二木さんが止めて下さい。そうすればみんな二木さんに感謝し、二木さんを見直して是非仲間になりたいと思うでしょう」

「なんだか姑息な手段な気もするけど」

「姑息なのがおいやでしたら、他の手段もありますけど」

「あら。あるんじゃない」

「二木さんが素直に頭を下げて、直枝さんのことが好きでそばにいたいから仲間に入れてくださいと頼めば。恭介さんさえ何とかすれば他の人は断らないと思いますよ」

「え!? ちょ、ちょっと待って、そんなこと言えるわけ無いじゃない!」

「では姑息な方の手段を使うしか無いですね」

 

 こうして、佳奈多ちゃんと美魚ちゃんは二人で姑息なことを始めるのでした。

 

 

 

 美魚ちゃんは佳奈多ちゃんを教室の外に待たせると、机から一冊の本を取り出して理樹君に見せました。

「西園さん今度は何の本?」

「お。また俺と理樹が愛し合っている本か?」

「ちょっと恭介ったら…」

 

 理樹君と恭介さんは、中身をよく見ようと美魚ちゃんの持っている本を覗き込みました。

 佳奈多ちゃんが保健室で理樹君を押し倒して無理矢理事に及んでいる内容でした。

 

「え!? こ、これは…」

「西園。この本は良くない。今すぐ本を焚き火にくべて、描いた奴は穴に放り込め」

「人類の歴史は表現規制との闘いの歴史だったというわけですね…」

「俺はむしろ今二木と闘わなくてはならない」

 

 教室の外にいた佳奈多ちゃん、突然自分の名前が出てきたので、中でなにが起きているのかと神経を集中して聞き耳を立てだします。

 

「恭介さん落ち着いて下さい、話がややこしくなりますし」

「これが落ち着いてられるかっ! こんな、二木が俺の理樹を手篭めにするような内容…!」

「恭介興奮しないで」

 

 佳奈多ちゃん、はぁ!? と声を上げそうになるのを必死で押さえます。しかし冷静に考えても、やっぱり本の内容は一体どういうものなのか、気になります。確認しておかないといけません。

 佳奈多ちゃん、意を決して教室に踏み込みます。声をかけ損なった葉留佳ちゃんも無視して、真っ直ぐに美魚ちゃんの所へ進んでいって、本を取り上げました。そして中を確認します。

 佳奈多ちゃんが保健室で理樹君を押し倒して無理矢理事に及んでいる内容でした。

 

 佳奈多ちゃん顔真っ赤。

 

 その後ろから葉留佳ちゃんが覗き込んできます。葉留佳ちゃんも本の内容把握。

 

「おー。いつもお姉ちゃんがやりたがっていることではないデスカ」

「は、葉留佳!? 何を言い出すの!」

「この間も寝言で理樹君襲ってたじゃないデスカ。どさくさに紛れてこっちのベッドに移ってきて犯されたらかなわんと思ってその日は床で寝たら朝四葉ちゃんに白い目で見られたので、よく覚えてますヨ」

「何やってんだこの姉妹、と思ったでしょうね」

 

 佳奈多ちゃん、もうとにかくいろいろなんか言いたそうでいっぺんに全部言えずに口ごもっていましたが、深呼吸して少し落ち着きを取り戻してから、美魚ちゃんに言いました。

 

「とにかく。この本は没収です。教室に持ち込んでいいものではありません」

「そうですか」

「待て。没収とか言いつつ私物化するつもりじゃないのか」

「しません。時期が来たら返します」

「時期が来たら、ですか…」

「な、なによ」

「それまではお部屋で存分に自分が楽しむ、ト」

「そんなことしないわよ!」

「そうだ。楽しむのなら俺と理樹が絡んでるのにするべきだ」

「いやいやいや」

「そうね、そっちの本もあるんでしょう、没収するわ」

 

 佳奈多ちゃん、元々こっちの本だと聞いていたのです。

 

「うわー、この人恭理でも楽しむ気だー」

「没収だって言ってるでしょ! 西園さん、早く出して」

「はいはい」

「西園、こっちにも一冊くれ」

「即売会では無いのですが…」

「早くしてくれないかしら。その…待ってるだけでも恥ずかしいから」

 

 佳奈多ちゃんは美魚ちゃんから薄い本を受け取ると、それを脇に抱えてさっと教室を出て行こうとしました。

 

「待って、二木さん!」

 

 理樹君が佳奈多ちゃんを呼び止めます。

 

「不愉快な思いさせちゃってごめん…でも、その…僕は気にしてないから!」

「気にしてないって…何をよ」

「その、二木さんに無理矢理されたの、とか」

「あ、あなた何を言い出すのっ!」

 

 佳奈多ちゃんまた顔真っ赤。

 そして佳奈多ちゃんの周りが固められます。

 

「これは帰すわけにはいかなくなったな」

「お話聞かせて貰いますよー」

「しんみょうにしろ」

 

 こうして佳奈多ちゃんは、半強制的に仲間に迎え入れられたのでした。

 

 

 

 翌日。美魚ちゃんの姿は教室にはありませんでした。

 

 代わりに、美鳥ちゃんが来ていました。

 

「やった! あたしもう出番無いかと思ったぁ」

「よぉっす、明るい方のみおちんではナイデスカ」

「明るい方とか言うな、んなこと言うと君もネジ飛んでるの隠さない方の佳奈多って呼ぶよ」

「ちょっと、何よそれ…。というか、西園さんはどうしたの?」

「あたしが西園さんです。西園美鳥」

「ああ、そうなの。えっと、西園美魚さんはどうしたの?」

「美魚は何かいたたまれなくなって教室から消えた、という設定らしいよ」

「設定って…」

「あ、置き手紙があるんだった。読むね。えっと、『二木さんが折角みんなと仲良くなれたのに、私と一緒にいると二木さんまで腐扱いされて後ろ指指されかねません。だから私は消えます。腐女子差別怖いです』だって」

「え? あの、なんかとんでもない認識の違いがあるみたいなんだけど」

「そうだ、二木佳奈多は俺と理樹の関係を邪魔する悪の存在だ」

「バカ兄貴ちょっと黙ってろ」

 

 鈴ちゃんが恭介さんを蹴っている間に、ゆいちゃんが佳奈多さんに語りかけます。

 

「佳奈多君。これでいいのか?」

「いいわけないじゃないですか」

「やっぱり腐女子扱いはいやか」

「だって私には直枝が…いえ、そうじゃなくて。そっちじゃなくて」

「そっちの話をゆっくり聞きたいところだが、今は我慢しておこう。佳奈多君はどうしたいのだ?」

「会って誤解を解きたいです。もう一度話して…私が入りたかったのは、西園さんがいる仲間の中なんだって、ちゃんと伝えたいです」

「ふむ。そうか」

 

 ゆいちゃんは美鳥ちゃんの方をちらと見ました。

 

「わかってますよ。美魚を連れ戻せばいいんでしょ」

「…ごめんね」

「いいの。私はいつだって美魚と一緒にいるし。あーあ、あたしもアニメ2期に出たかったなあ」

 

 そう言って美鳥ちゃんは退場し、代わりに美魚ちゃんが現れました。

 

「…二木さん。あなた、何やってるんですか」

 

 あれ? 美魚ちゃん何故か怒ってます。

 

「え? 何って、私は西園さんと一緒にいたいんだということを伝えたくて」

「事前に打ち合わせしたじゃないですか。あなたはその通りに直枝さんと仲良くなっていれば良かったんです。私は私で気持ちの整理付けたかったし、その為に一人で考えたかったんです。美鳥も久しぶりに外に出たがっていましたし。それをあなたは…。あと一緒に即売会行く約束はまさか忘れてませんよね?」

 

 佳奈多ちゃんは美魚ちゃんに正座させられて、泣き入るくらいお説教されました。

 周りのみんなは助けてあげたかったけど、なんか介入しづらい空気だったのでただただそれを見守るしか無かったのでした。

 

 

 

 おしまい。

 

 

 

 

 



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