閉じる


<<最初から読む

2 / 21ページ

こぴかな時々あー++

表紙画像

こぴかな時々あー++

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こぴかな時々あー++

 

for epub 3.0

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Ver.2.0

 

 

 

 この本は,ガタケの時に手っ取り早く頒布物を増やす為に、過去にWebやTwitter、epubで公開済みの佳奈多SSを寄せ集めてとりあえずコピ本としてまとめたものを、再度コピ本として追加で作ろうと思ったら急に面倒くさくなったし最近インク代も高いので、一番安い印刷所のオフセットで作っちまおうと考えた横着本をさらにepub化したものである。

 

 ネットでどこで公開してるのかまでは面倒くさいから書かない。

 「荒野草途伸 佳奈多SS」でググれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目次

 

検索用タグ:

二木佳奈多 あーちゃん先輩 直枝理樹 リトルバスターズ! 佳理 140文字SS 三枝葉留佳 朱鷺戸沙耶

 

 

 

 

 


こぴかな時々あー++

魔法少女はるカ☆カなた

 

 この物語は、鬼の風紀委員長とは名ばかりのシスコンダメ姉な佳奈多ちゃんが、妹の葉留佳を守る為に空回り孤軍奮闘する涙の物語です。

 なんか似たような名前のSSが既にあったような気がしてなりませんが、たぶん気のせいでしょう。

 

 

 名ばかりとは言っても、鬼の風紀委員長としての名目は保っている佳奈多ちゃん。今日も職務に励んでいます。何故か今日は目の下のクマが異常に濃いですが。

「委員長。今日は特にお疲れの様子ですが、大丈夫ですか?」

「大丈夫よ、問題無いわ」

「そうですか。でも見るからにお疲れですし、今日の残作業は我々が引き受けますから、お休みになっては?」

「…そうね。今日はもう急ぎの案件も無いし。お言葉に甘えて引き上げさせて貰うとするわ。…あ、でも」

 佳奈多は一枚の書類を風紀委員に渡します。

「これだけは処理しといて」

「至急呼び出し、ですか。中庭ですか? ここじゃなくて?」

「ナイーブな問題なのよ、出来るだけ事を荒立てたくないの。だから行くのも私一人だけで十分よ」

「わかりました、すぐに放送部に手配をしておきます」

 

 

 

 そして佳奈多は、呼び出し場所の中庭に向かいました。中庭では真人が片腕立て伏せをしていました。佳奈多特に動じません。真人が、当の呼び出しをかけた相手だった為です。

 

「よぉ、遅かったじゃ無いか」

「その台詞は死亡フラグよ」

「あまり一般的では無いだろう。ちなみにオレはスイカを育てたりはしてねえぜ」

「代わりにマナカを育てたりしてないでしょうね」

「…やめようぜ、こういう話題。他人に聞かれたら俺たちがそういう人種だと思われる」

「…そうね。でも、今の話で確信できたわ。あなたが『Q』だということが」

「おいおい、今やめようぜって言ったばっかじゃねえか。だいたい公開は来年だぜ、Qが何なのかもわかんねえだろ」

「沖縄じゃまた桜坂劇場で再来年になりかねないけどね。…まあ、洋画偏重の国場を恨んでも仕方ないわ。だいたい、そっちのQのことじゃないし」

「さっき『今の話で確信できた』って言ったばっかじゃねえか」

「あなたがQに反応するという事実が大事なのよ、Q太郎」

「今度はQ太郎かよ。て言うかオレQ太郎て名前じゃねえし。井ノ原真人だよ。て言うかその名前で呼び出しかけてるだろ」

「そう。あなたはそうやって、人類を欺いているのよ」

 佳奈多ちゃん、なんだか電波炸裂状態です。真人大弱り。

「…なあ、手っ取り早く本題に入ってくれねえか?」

「わかったわQ太郎。…私は、あなたを抹殺する。葉留佳を魔法少女にさせない為に」

「は? いや、本気で意味不明だし。それにQ太郎じゃねえし」

「しらばくれても無駄よQ太郎、いえ、インキュベーター。」

「いや、インキュベーターでもねえし。て言うかなんだよそれ。何でオレがそんな呼ばれ方されなきゃならねえんだ?」

「あなたの名前。井ノ原真人と名乗っているわね。インキュベーターとそっくりじゃない」

「いや、全然似てねえし。『い』しか合ってねえし。言いがかりにすらなってねえし。あまりの理不尽さに怒る気にもなれねえぜ」

「そう。じゃあ『イノセンスハァト』とでも呼んで欲しいのかしら?」

「いや確かに字数増えたけどさ。その呼ばれ方かなり恥ずかしいし」

「そう。じゃあQ太郎でいいのね」

「いやそれもよくねえよ。だいたいなんでオレがQ太郎なんだ」

「あなたこの間、棗さんと肉球について激論していたでしょう。その肉球へのこだわりこそ、正にあなたがQ太郎である証拠よ」

「オレは筋肉専門なんだよっ! 肉球にこだわってたの鈴の方だぞ! 言いがかり付けるなら鈴にしてくれよっ!」

「あの子女の子よ。太郎呼ばわりは失礼でしょう」

「だったらQ子でいいだろっ! 何でそこまでしてオレをQ太郎にしたがるんだよ!」

「じゃあどう呼んで欲しいのよ」

「普通に真人と呼んでくれよ…」

「いきなり下の名前で呼べだ何て。よほどフレンドリーなのか、それとも私に気でもあるのか…どっちなの?」

「前者でいいよ…いいから早く用事済ませてくれよ」

「用事はさっき言ったとおりあなたの抹殺だけど、異議は無いのね」

「しまったぁ…! いや、抹殺は勘弁してくれ、せめて抹茶にしてくれ」

「あなたに茶の湯の心がわかるとでも言うの?」

「ぐ…残念だがオレにそんな教養はねえ…」

「ならこれ以上は問答無用ね。抹茶の代わりにこの赤マルソウ1.5リットルパックを一気飲みしなさい」

「赤マルソウって味噌と醤油どっち…ぐ、やはり醤油か…」

 真人は倒れてしまいました。醤油1.5リットル一気飲みさせられたら、普通は倒れますね。というか病院行った方がいいです。

「…Q太郎、やはり話の通じる相手じゃなかったわね…」

「いや、話通じないのどう考えてもおめ…ガクッ」

 

 

 

 数分後。倒れている真人の近くを葉留佳が通りかかりました。

「救急戦隊ゴーゴーファイブってどう考えても特警ウィンスペクターの焼き直しじゃんって思ってたの私だけですか? って真人君どうしたデスカ!?」

「…風紀委員長にやられた…とりあえず水をくれ…」

 葉留佳 は真人に目隠しをしました。

「…何がしたい」

「『見ず』。Don't show.英語合ってますカネ?」

「英語以前に日本語を勉強してくれ…無い知恵絞っていえば、オレが今欲しいのはH2Oだ。あ、先に言っておくとギャルゲーじゃないぞ」

「わかりました、阪神阪急ですネ。でも今年はもう中日が優勝しちゃいましたヨ?」

「チクショウ、最近の企業グループの名前意味わかんなさすぎだぜ! って違えよ! て言うかお前理系だろ、普通化学式連想するだろ!」

「数学が得意だからと言って化学も得意だとは限らないのデスヨ」

「いやもう変な理屈はいいから、水をくれ…マジ死ぬ」

「はるちんがいつも携帯しているポカリスエットとトマトジュースがありますが、どっちがいいですカ?」

「今のオレにはどっちもキツイが…背に腹は代えられん、ポカリをくれ」

「160円になりマス」

「微妙にボッタクりと言えないところが余計に腹立たしいぜ…金はポケットに入ってるから、早くポカリをくれ」

 ポカリを飲んだ真人は、やっと落ち着きました。

「で。一体何をしでかしたんデスカ」

「何もしてねえ…わけのわからん言いがかり付けられて…ああ、そう言えば何か、魔法少女がどうとか、お前を守るとか何とか言ってたな」

「あー…あのバカ姉、また暴走してますネ」

 はるちん、何か心当たりがあるようです。

「オレに非があるなら文句は言えねえ。けど、何もしてないのにこの仕打ちはあんまりだ。チクショウ、このままじゃ腹の虫が収まらねえ」

「ふむ…。では一つ、ぎゃふんと言わせてやりますカ」

「『ぎゃふん、これで気が済んだ?』、で終わりそうだが」

「確かにそう言いかねませんガ、別にぎゃふんという台詞にこだわってるわけではないデス。要は、はるちん自ら魔法少女になって、きゃつめを困らせてやろうというわけデス」

「なるほど…」

 何かがおかしい気がしますが、気にしちゃいけません。この二人ですから。

 

 

 

 そして葉留佳と真人は、恭介の部屋に行きました。

「そういうわけで魔法少女に詳しそうな棗先輩に相談に来マシタ」

「三枝。お前は俺という人間を誤解している」

「いいや、誤解してない。わかるぞ、はるか。上が馬鹿だと妹が苦労するんだよな、うんうん」

 一緒に居合わせた鈴が葉留佳の肩を叩きます。

「こんな事で鈴ちゃんと意気投合するとは思いませんでしたヨ」

「鈴はこんなとこで何してんだ?」

「フ。それは勿論、兄妹でいけない事をしていた」

「いけない事?」

「宿題がわからないから教えて貰っていた。丸写しじゃ無いんだからそんなに悪い事じゃないと私は思う」

「むしろいい事デスネ」

「だが恭介の一言で台無しだな」

「そうだ。だから私はこいつを馬鹿兄貴と呼ばざるを得ない」

 恭介四面楚歌。

「…まあ、いい。で、魔法少女がどうしたって?」

「魔法少女になって姉をぎゃふんといわせたいのデス」

「なんでそうなるのか話の筋がよくわからん」

「姉は優等生に見えますガ、実はかなり子供っぽいのデス。今はどうやら、私が騙されて魔法少女にされるのを阻止する、という設定にはまり込んでいるようなのデス」

「二木ってそんな奴なのか?」

「この間もタンスの奥に、俺の妹が~とかいうライトノベルとアニメを隠してあるのを見つけてしまいマシタ」

「三枝、いくら姉妹とは言え、他人のプライバシーを暴くような真似は感心しないぞ」

「わざとじゃないですヨ。また下着が無くなったのでどうせ姉の仕業だろうと思って探していたら偶然見つけてしまったのデス」

「なあ鈴。オレ、なんかいろいろ聞いちゃいけない話を聞いちまった気がするぜ…」

「安心しろ、私も同じ立場だ」

 仲間がいるって心強いですね。

「とにかく姉は異常なのデス。…あ、今は異常なのデス」

「だからまずはそのふざけた幻想をぶち壊してやろうってわけか…。いいぜ、乗ってやる」

「まずお前自身が既に幻想にとらわれていることに気づけ」

 鈴ちゃん容赦ないです。

「さて、魔法少女といってもいろいろあるが…。Key系だとまじかるさゆりんか藤林杏あたりになるが、そういうのか?」

「イエ。名前は言えませんが2011年ダントツの最高傑作といわれてる、アレデス」

「ああ。俺はアニプレックスが許せないからDVDは買ってないが、内容は把握している」

「素直に金が無いと言え」

「要するに、奇跡はそれを超える代償無しには得られないという、熱力学第二法則を解説するアニメだったな」

「まあ、そうとも言えますネ」

「なら何も魔法に固執する必要は無いわけだ。物理少女はるか☆フィジカ、何てどうだ?」

「いやー、個人的には悪くないデスガ、それで姉の鼻を明かせるかっていうとどうだか」

「『魔法少女』にはならずに済んだ、て解釈しちまう可能性はあるな」

「よし、ここは変な小細工はせずに、正攻法でいこう。まずは魔法少女になる仲間を集めるんだ」

「仲間デスカ。沖縄に行けばいいんデスカ?」

「そういう使い古されたネタはよせ」

「いやー、はるちん実際沖縄に行ってるんで、つい」

「麻枝が異常に嫌っている豚足は美味かったか?」

「それなりに。あと、ミミガーが安くて食べ応えがありましたヨ。有月さんに教えてあげたいデス」

「だがミミガーはカレーには向かないだろう…ってそんな話をしてる場合じゃない。三枝、お前に友達はいないのか?」

「ここにいるみんな友達デスヨ」

「チクショウ、嬉しい事言ってくれるじゃねえか…」

「うむ。だが俺が言いたいのは、一緒に魔法少女になってくれそうな友達のことだ。ここにいるのは野郎ばかりだろう」

「鈴ちゃんは女の子デスヨ?」

「確かにそうなんだが、鈴ではなんだか面白みが無い気がする」

「はるか、私は今馬鹿にされたのか?」

「よくわからないデスガ、とりあえず蹴っていいデスヨ」

 

 

 

 仲間を求めて彷徨っていた葉留佳達は、理樹と出会いました。

「そういうわけで、理樹。魔法少女になれ」

「…え?」

「なるほど。確かに理樹ならうってつけだな」

「いやいやいや」

「姉の罵倒も理樹君なら喜んで受け入れそうデスシ」

「ちょっとそれ酷い誤解」

「私も、私より理樹の方が魔法少女に相応しいと思う。それ以前に私はなりたくないが」

「いやいやいや、だからみんなちょっと待ってよ、根本的なところでおかしいでしょ!?」

「何がだ?」

「だから。少女ってのは、大人になる前の女性のことをいうんでしょ」

「それがどうした」

「僕、男だよ!?」

「え?」

「え?」

「え?」

「え?」

「ちょっと! 何その反応!!」

「理樹。現実逃避はよせ」

「それこっちの台詞!」

「諦めろ理樹、まともな理屈が通じる相手じゃ無い。それに理樹が断ると私が魔法少女にされかねない」

「何て身勝手な」

「しかし実際、理樹君には姉の目を覚まさせる力があるような気がしマス」

「違う方向に目覚めそうだけどな」

「だが適任だ」

「よし、決まりだ。次行くぞ」

「ちょっと! 僕の意志完全無視!?」

 

 

 

 そして一行は、寮事務室にやってきました。

「何故ここに?」

「例の魔法少女モノの中に、先輩キャラがいただろう。それを確保しなければならない。しかし俺らの周りで女の先輩キャラといったら、ここにいる寮長ぐらいだ」

「クドわふたーにフェルマーの定理を語れる科学部部長がいましたけどネ」

「だがあれは系列校の生徒だ。今すぐには確保出来ない。そういうわけで者ども、突入だ!」

「いや、普通に入ろうよ」

 ドアを開けた一行が部屋に入ると、中には女子寮長、通称あーちゃん先輩がいました。本名は不明です。

「なので仮に早坂アコとしておく」

「何意味不明な事言ってるのよ」

「アコ、三枝と一緒に魔法少女になってやってくれ」

「やーよ」

「うわ即答」

「廊下での会話、聞こえてたわよ。先輩魔法少女でしょ? 魔女に食べられて死んじゃう。いやよそんな役」

「…まあ、そうですヨネ…」

 一同しょぼくれます。その姿を見てあーちゃん先輩、にやつきながら言いました。

「…んー、でも…アタシが食べる側だったら、別にいいかな…。にゅっふっふ」

 独特な笑い方をしながら、あーちゃん先輩が恭介の方を見ます。恭介は逃避モードに移行します。

「あー、いや、その、なんだ。うむ、すっかり忘れていたが、俺は就職活動の為石垣島に行かねばならんのだった。そういうわけでさらばだ、アデューアディオス再見うわ何をするお前らこらやめ」

 葉留佳達は恭介を捕らえて、あーちゃん先輩に引き渡しました。

「どうぞ」

「あらやだぁ、そんなつもりじゃなかったのにぃ、でも折角の行為を無碍にするのもなんだしぃ」

「いやだから俺は今から石垣島に」

「石垣島は徒歩では行けないわよ。アンタ飛行機代出せるの?」

「船便で行くさ」

「残念。石垣航路は運行していた会社が倒産して、旅客便は今は無いのよ」

「くそ、抜かった…ッ!」

「にゅっふっふ~。さ~て、嘘付いたおしおきしないとね~」

「あの~、はるちん達、外に出ときますね」

「あらぁ、そんな気遣わなくていいのよぉ」

「いえいえ。どうぞごゆっくり」

 葉留佳達は寮事務室を後にしました。

 

 

 

「…あれでよかったのかな?」

「いいんじゃないデスカ? どのみち先輩魔法少女は3話で消えることになってますし」

「馬鹿な兄だったが、それなりにいいところもあった…」

「魔女と戦うって事がどういう事か、身を以て教えてくれたんだね」

 一行は勝手な事を言いながら廊下を歩いて行きました。

「さて、後は最後の一人を見つけるだけか」

「でも最後の一人っていきなり殺し合いになるんだよね? そんな人いるのかなあ?」

「伊吹風子なんてどうデスカ?」

「いや確かにある意味まんまだけど、俺らと作品違うし」

 そんな事を話しながら歩いていると廊下の先に佳奈多と小毬が話しているところを見つけました。

「…お姉ちゃん、何やってんデスカ」

「あら葉留佳。あなた、魔法少女になろうとしているようね。あれほど忠告したのに」

「いや、この件に関してはまだ何の忠告も警告もされていませんケド」

「でもお生憎様。この学校の魔法少女は、神北さんに任せることにしたから」

「…え?」

「そういうことなの。葉留佳ちゃんごめんね~」

「でも待って。確かに小毬さんはお菓子食べまくってるけど、他の魔法少女と殺し合いするような人じゃ無いよ」

「…直枝理樹。あなた、神北さんに死ぬほど恥ずかしい目に遭わされたそうね」

「…えっ!? 何故それを…」

「ん? 何だ、何の話だ?」

「う~ん。たぶんね、理樹君に私の服着せて写真撮りまくったことがあるんだけど、その時の話だと思うの」

「あー。あの恥ずかしい私服デスカ」

「お前が言うなよ」

「で、でも。僕と小毬さんは別にいがみ合ってるわけじゃ無いし」

「そうね。確か…最後は泣くほど仲良くなったのよね」

「いや、最初から仲いいから」

 理樹の抗議も無視して、佳奈多は蕩々と語り始めます。

「立場や生き方が違っても、手を取り合って戦うことは出来る。望んで魔法少女になった者なら、それはむしろ必要なこと。でも…」

 佳奈多は、葉留佳を指さして、続けます。

「葉留佳。あなただけは、魔法少女にはさせない。そんなの私が許さない」

「いいえお姉ちゃん、私は魔法少女になる。そう決めたの」

 いつになく真剣な表情の葉留佳。その気迫に来押されしたのか、佳奈多はへたり込んでしまいます。

「そんな…ッ! 葉留佳、どうしてあなたは…! そうやって自分を貶めて…。あなたのことを大事に思っている人のことを、少しは考えて!」

「…イエ、そんな自虐的な思考は持っていませんガ。そもそも誰の所為でこういう事態になってると思ってるんデスカ」

「とにかく、葉留佳 は魔法少女になんかなっちゃいけないの。ううん、ならないで!」

「まだ言いますカ。…仕方ないですね。問題を解決するにはやはり私が魔法少女にならなければいけないようね」

 葉留佳は普段と全く違う表情になり、真人の方に向き直って言いました。

「さあ、井ノ原Q太郎。私の願いを叶えて、魔法少女にして!」

「いやだからオレQ太郎じゃねえよ。お前までなんなんだよ」

「いいからこの場は合わせて下さい」

「…わかった。さあ三枝葉留佳、魔法少女になる代償に、お前は何を願う?」

「願い…? そうですね…。」

 葉留佳は、暫し考えて、そして言いました。

「私は、人を殺して奇跡を乱発する風潮を無くしたい。僻みで世界観を作ったり原案を改変してしまうライターや、中身も見ずに中傷する狂信者そのものを消し去りたい!」

「その祈りは…そんな祈りが叶うとすれば、それは作品批判なんてレベルじゃ無い。keyそのものに対する反逆だ! 三枝、お前は城桐を神にでもするつもりか!?」

「神様でも何でもかまわない。私は、keyの魂を信じて付いてきたみんなの願いを無駄にしたくない! さあ、かなえてよ井ノ原Q太郎!」

「ムリ」

 それまで真剣な表情で聞いていた佳奈多が、思い切り突っ伏して廊下に頭をぶつけてしまいました。結構いい音したので、小毬が少し慌てています。

「と言うか、姉の鼻を明かすという話から、えらく大きく飛躍したな」

「いやー、なんかつい調子に乗ってしまって。正直スマンカッタデス」

「でもちょっと本気入ってたよね」

「本気で遊ばなきゃ面白くないってもんですヨ」

 そう言った後、葉留佳は佳奈多に手をさしのべて、言いました。

「でしょ? お姉ちゃん」

「葉留佳…いえ、私は…」

「ずっと私の為に戦い続けてくれたから。いろいろごちゃ混ぜになっちゃったんだよね。これからは、羽目の外し方も覚えていこう」

「はるかは外しすぎない方法を覚えた方がいいと思う」

「鈴、あんまり突っ込みすぎると今度は自分に返ってくるよ」

「そうだよ鈴ちゃん、今はちょっといい所なんだから」

 周りが見守る中、葉留佳と佳奈多の会話は続いていました。

「葉留佳…こんな馬鹿な姉を許してくれるの?」

「馬鹿な姉なら許しマセン。でもお姉ちゃんは馬鹿じゃ無いはずデス」

「葉留佳は…葉留佳を妬んで葉留佳の変装をしたり逆に過保護に走ったりする私を、馬鹿じゃ無いと言ってくれるの?」

「馬鹿と言うつもりはありまセン。ケド…下着を盗むのはさすがに勘弁して欲しいですネ」

「盗んでないわ…交換してるだけよ」

「いや…それもっと嫌なんですケド」

「えーっと…そろそろ突っ込みどころなのかな?」

 小毬の言葉が締めになって、そのままこの場は解散になりました。

 

 

 結局、奇跡も魔法もありませんでしたが、彼女達にはそんなものは必要無かった、ということなのでしょう。

 これがめでたいかどうかは、これから長く続く人生の中で決まっていくことです。

 

 

 ちなみに、後日最大の被害者である真人の元に佳奈多から詫び状が届きましたが、生真面目な佳奈多の書いた長文の詫び状は、却って真人を苦しめることになるのでした。

 

 

 

 

 

「…というお話だそうです」

「そうですか。相変わらずはた迷惑だけど愉快な人達ですね」

「ところで、西園さんはこの手の話には絡んできやすそうに思うのですが、全然名前が出ませんでしたね」

「…能美さんは私をどういう人間だと思っているのですか?」

「はう…すみません」

「謝らなくてもいいですが…。そうですね、私は、美少年がたくさん出ないアニメには興味ありませんから」

「そうですか? でも、そもそもの発端は、西園さんが佳奈多さんにDVDを貸したのが始まりだと聞きましたけど」

「…。」

 

 

 

 

 

 

 

 


こぴかな時々あー++

半分÷半分の誕生日

 

「姉妹はいつでも半分こ。二木は昔、三枝にそう言ったらしいな」

 誕生日を前にした佳奈多を前に、突然恭介が切り出した。

「ええ。確かに昔、そんな事も言いましたね」

「だからお前達姉妹は、毎年同じ日に誕生会をやっていると」

「いえ、待って下さい。私達は誕生日が同じなので、それで同じ日になってしまうだけです。別に半分こしてるわけでは無いです」

「そうなのか。だが、三枝はそうは思っていないようだぞ」

「そうなんですか?」

「たまには自分一人でみんなに囲まれた誕生会をやりたいと」

「──そうですか。あの子がそんなことを」

「そこでだ。俺達は考えた。中途半端な半分こでは無く、もっときっちりけじめを付ければいいのでは無いかと」

「そうですか。何をなさるおつもりで?」

「10/13を午前と午後に分ける」

「単純ですが、確かにはっきりしてますね」

「職員室に体育館を丸一日借りる許可を貰ってきた。そこで、午前中に三枝の誕生会を、午後に二木の誕生会をやる。寮会生徒会文化部会の承諾も取り付けてある。あとは一応運動部会の承諾も貰いたいわけだが」

「何も体育館まで借りる必要は無かったんじゃ無いですか? それに私の分は結構ですよ」

「まあ、これも三枝の希望でな」

「そうですか。まあ、あの子がそう希望しているのなら」

 そう言って佳奈多は、手にしていた書類を束ねてとんと置いた。この話は終わり、了承。わかりやすい意思表示だった。

「意外とあっさり承諾したんだな」

「抵抗して何か得があるとでも?」

「いや、いいんだ。じゃあ当日の準備は俺達でやるから、二木は三枝の誕生会が始まるまでに来てくれればいい」

「そうですか。それは助かります」

 

 そして10月13日がやってきた。

 午後0時を挟む昼休みの1時間、それとその前後の数コマを休講またはずらすことで、三枝葉留佳と二木佳奈多の全校一斉誕生会の時間が確保されていた。午前中は三枝葉留佳の、そして午後0時になると同時に二木佳奈多の誕生会に切り替わる、と進行表ではそうなっていた。

 

「休講にしてまでこういう事をするのは感心しないのですけど」

 葉留佳の部が始まる直前にやってきた佳奈多は、呆れ気味に主催の恭介に話しかけた。

「先生方も勤め人である以上有給休暇を取りたいという事さ」

「それでですか。職員組合まで動かしたと聞いたときは何事かと思いましたが」

「職員組合だけではないさ。必要な関係諸機関には全て手回ししてある。消防とかな」

「どんな危険なことを企んでるんですか…」

「そんなおおげさな話じゃ無いさ。何かあったときの念のため、というだけだ」

「そうですか。ではひとまずその言葉を信じることにします」

「ああ、悪いようにはしないつもりだ。ほら、三枝の誕生会が始まるぞ」

 恭介が顔を上げて目線を前方にやる。壇上に設けられた特別席に葉留佳が座り、周りを選ばれた数名が取り囲んでいる。檀の下にも何名かが集まっている。

「ほら、二木も行ってやれ。三枝が一番来て欲しいのは二木、お前じゃ無いのか?」

「──そうですね。人の多いところは苦手なのですが、葉留佳の為というなら」

 そう言って佳奈多は、葉留佳とそれを囲む一団に近づいていった。

 

「よお。遅かったじゃ無いか」

 謙吾に声をかけられる。

「時間通りに来たつもりだけど?」

「いや、二木が来たらそう言ってくれと頼まれていてな」

「誰に。葉留佳? 棗先輩?」

「いや、西園だ」

「西園さん?」

 佳奈多は壇上にいる西園美魚をちらりと見た。葉留佳と何か詰めの打ち合わせでもしているようだ。

「何故西園さんが」

「そこは俺もよくわからん。お、何か始まるようだぞ」

 壇上では葉留佳を取り囲む一団が一斉に拍手を始めていた。それにつられるように、段下にいる生徒達も拍手を始める。佳奈多も合わせるように拍手をした。

「おめでとう」

「おめでとう」

「おめでとう」

「おめでとう」

「おめでとう」

「おめでとう」

「おめでとう」

「おめでとう」

「ワタシハココニイテイインダ!」

 葉留佳が天井を仰ぎながら何か叫んでいる。

 

「…なんなの、あれは?」

「いや、だから、俺にはよくわからん」

 佳奈多の心に、にわかに不安感が拡がり始めた。あれが何なのかよくわからないけど、もしかして同じ事を自分もやられるのでは無いだろうか。いや、あれと同じでは無いにしても、ああいう恥ずかしい思いをする何かをされるのではないだろうか。そもそも、この誕生会は葉留佳の希望したものなのだ。

 

 葉留佳が私にしたがること──。

 

 そう考えると、佳奈多の背筋には寒気が走った。どんな目に遭わされるかわかったものでは無い。しかも協力しているのはあの棗恭介だ。

 

 企画:三枝葉留佳、実行:棗恭介。佳奈多の目には悪夢しか見えなかった。

 何とかしてこの場から逃げ出さなくては。

 佳奈多は咄嗟に周囲を見渡した。出入り口は、受付と称して残された一つを除いて、全て封鎖されている。受付のある出入り口も、すぐに閉じられるよう両脇を生徒が固めている。さらに、その生徒を守るように、体育会系の生徒が警護している。封鎖されている出入り口も、やはり体育会系の生徒達によって守られている。

「(私が逃げ出すことは織り込み済み、か──)」

 他に逃げ出せる場所はないだろうか。窓なら上の方にもある。が、あそこから飛び降りるなど自殺行為だ。楽屋や倉庫から抜け出せるルートは無かっただろうか。佳奈多は必死に考えた。おそらくはそこにも人が配置されているだろう。通路はあってもとても狭い。数名いれば簡単にブロック出来るだろう。

「(緊急時の避難計画を見直した方が良さそうね…)」

 こんなときにでも、そんな事を考える余裕があった。否、むしろそんな事を考える程度にしか余裕が無かった。佳奈多は完全に追い詰められていた。

 佳奈多は壇上に目をやる。葉留佳を取り囲む中に、小毬や唯湖の姿もある。そういえばあの子達は、屋上や放送室と行った逃げ場を確保して、これまでを凌いできたのだったかしら。

 ──逃げ場所といえば、自分にもあるじゃないの。保健室が。

 気分が悪くなった、休みたい。保健室に行きたい。そう言って、堂々とここから出ればいいのだ。あとは、今回の誕生会に確保していた時間が過ぎるまで保健室で休んでいればいい。それ以降はちゃんと授業をやることになっているのだから。

 

 方針を決めた佳奈多は、身近にいた謙吾に話しかけようとした。

「宮沢、私、少し気分が──」

「うおっ、なんだあれは」

 佳奈多が話しかけたその時に、謙吾が声を上げる。その視線の先には、大道具用に確保された大きめの出入り口があった。先程まで閉鎖されていた扉が大きく開け放たれて、外から白色の大型車両がバックで入ってきていた。

「オーライ! オーライ! オーライ! オーライ! ストーップ!」

 高規格救急車だった。車の中から乗り込んでいた医師と看護師が降りてくる。

「ドクターカー!? 何故あんなものが…」

 唖然とする佳奈多の下に、恭介が歩み寄ってきた。

「恭介。なんだあれは?」

 呆然としたままの佳奈多の代わりに謙吾が尋ねる。

「ドクターカーだ」

「それくらいは俺も知っている。何故そんなものを呼んだ」

「折角の誕生会なのに、急病人が出て中座する人間がいては水を差すことになるからな」

「誕生会にドクターカーを呼ぶ方がよほど水を差す気がするのだが…」

「しかし三枝がしきりに二木の体調を気にかけていたからな。よく保健室通いをしていると」

 気づかれていたのか──。そう思うと、佳奈多の口元に何故か自然と笑みがこぼれた。しかし、今は笑っている場合では無い。

「なるほど。確かにドクターカーがあれば、体調を崩してもこの場で治療や休養が出来るな」

「ちょっと宮沢、何丸め込まれてるの!?」

「そういえば二木、さっき気分がどうとか言いかけていたような」

「気が晴れたわ。ええ、あまりにもサプライズ過ぎてもう、気が晴れたわ」

「そうか。それは良かった」

 全然よくない。これでもう完全に逃げ道は塞がれた。

 佳奈多は絶望感でいっぱいになった。

 

「おっ。そろそろ12時だな。お姫様の交代だ」

 前方に掲げられた時計を見ながら、恭介が言う。佳奈多には時間が無い。このままでは、自分は壇上に上げられて晒し者にされてワタシハココニイテイインダとか意味不明なことを叫ばされてしまう。

 壇上に上がっていた一団が、一旦下に降りてくる。クドが空欄の状態な名簿を差し出してくる。

「一緒に壇上に上がって欲しい人がいれば記入して下さい」

「やっぱり同じ事をするのね…」

「佳奈多さんから何かご希望があれば出来るだけそのようにしますが」

「そうね。今すぐここから逃げ出したい気分だわ」

「それはダメです。折角皆さん集まって下さっているのですから。好意を無駄にしてはいけません」

「葉留佳と棗先輩の悪意しか感じ無いんだけど」

「私達の善意も信じて欲しいのです」

「──そうね。信じたいところだけど」

 

 ふと、佳奈多の目に一人の男子生徒の姿がとまる。直枝理樹。彼ならもしかしたら何とかしてくれるのでは無いか。そんな期待が佳奈多の心をよぎった。

「ここに希望する名前を書けばいいのよね」

「はい。──え?」

 佳奈多がさっと書き込んだ名前を見てクドが戸惑っている間に、佳奈多は理樹の元に駆け寄って、有無を言わさず手首を掴んで詰め寄った。

「直枝。私と一緒に壇上に来て」

「えっ!? 僕が?」

「一緒に壇上に上がる希望者として名前は書いたわ。手続きはそれでいいんでしょう?」

「うん、手続きとかそんな大袈裟な話じゃ無いけど…」

「じゃあそれでいいのね。行きましょう」

「あの、佳奈多さん、他には? 他の方はいいのですか?」

 クドが必死に呼び止める。

「結構よ。どうしても人数が必要なら、じゃんけんでもバトルでも何でもして決めて頂戴」

「えっ、えっ、えっ」

 クドは戸惑い、謙吾と真人は早速じゃんけんから始まり実力行使に至るバトルを始め、そして佳奈多は理樹を連れてさっさと壇上に上がってしまった。

 壇上からだと馬鹿二人のバトルがよく見える。理樹と一緒に下を見ながら、佳奈多はそんな事を思った。

「謙吾と真人も壇上に上がりたいのかな? 今からでも二人とも指名してあげたら?」

「あの二人はただ闘いたいだけでしょう。それよりも直枝。あなたにお願いがあるの」

「僕に?」

「──私を連れてここから逃げて」

「えっ!?」

 突然の、しかも意味ありげな佳奈多の言葉に、理樹は戸惑った。

「逃げ出すって。誕生会はどうするの?」

「知らないわ。葉留佳の分が終わったんだから、もうそれで十分でしょう」

「折角みんな集まってるのに?」

「それなりに余興も楽しんでるようだし、それで十分じゃ無いかしら」

 いまだに続いている謙吾と真人のバトルとそれに群がる群衆を横目で見ながら、佳奈多は続けた。

「葉留佳はどうだか知らないけど、私はこういう騒がしいのは嫌。もっと静かに、心を許せる人と二人でいたい。そんな誕生日がいい」

「僕には心を許してくれると」

「──そうね。認めざるを得ないわ」

「わかったよ。そういう事なら、何とか考えてみる」

 理樹は片手を顎に当てて、暫く思案し始めた。そして、考えた結果を佳奈多に耳打ちした後、佳奈多の手を取って突然檀の端の方、楽屋に向かって走り始めた。

 クドがすぐにそれに気づいた。

「あっ、あっ、佳奈多さん、何リキ連れて逃げようとしてるですか!」

「なにぃ!?」

 クドの声に、葉留佳も事態に気づく。いや今は逆なんだけど、と佳奈多は心の中で突っ込んだ。

「この嘘つき姉! 私達3人、お姉ちゃんと私と四葉ちゃんとでまた来年も誕生会をしようね、って約束したのに!」

「あの、すみません葉留佳さん、私達そんな約束したでしょうか? 確か去年は、家に報告する為に形だけの誕生会しかしていないように記憶しているのですが」

「イヤ四葉ちゃんあのね、今はそういう事言わなくていいから…」

 

 葉留佳達が揉めている間に、佳奈多と理樹は奥に引っ込んで姿が見えなくなっていた。

「いかん。このままでは二人とも見失ってしまう。緊急配備だ、みんな、余興は中止だ!」

 無線機を手に指示を飛ばしながら、その合間に恭介は歯ぎしりしていた。

「おのれ二木佳奈多、俺の理樹を…!」

「何を言うのです恭介さん、私のリキです!」

「二人ともどさくさに紛れて何を口走ってるのデスカ! 人が遠慮してるのをいいことに!」

 追う側は全くまとまりが無かった。その証拠に、謙吾と真人のバトルはまだ続いていた。いい加減にしろと割って入った唯湖も結局巻き込まれて三つ巴の闘いになっている有様だった。

 

 それでも暫くすると何とか落ち着きを取り戻し、捜索部隊が編成された。

「無線機越しの報告では、二人ともどの出入り口からも出た様子は無い。──もっとも、二木に言いくるめられて虚偽の報告をしていなければだが」

「佳奈多さんがそこまでするでしょうか?」

「ああ、俺もそこまでするとは思っていない。だから、まだ体育館の中にいるか、或いは俺も知らない抜け道を使って外に出たか、だな」

「外を捜索する部隊も編成した方が良くは無いか?」

「だな。足の速いものを集めて、外側の捜索部隊を編成しよう。足の遅いもの体力の無い者は、引き続き内部の捜索と出入り口の警護を」

 

 そうして恭介ら生徒達が大騒ぎしている間。佳奈多と理樹は、楽屋奥の倉庫の片隅に身を潜めていた。

「──外の様子はどうなっているのかしら」

「まだ誰も探しに来ないし、意外と手間取ってるみたいだね」

「そうね。思ったより時間が稼げそうだわ」

 ふぅ、と佳奈多はため息をついた。

「でも、私一人では気がつかなかったわ。一人になりたいだけなら、何も体育館の外に出る必要は無い、って」

「一人じゃ無い、僕もいる。二人だよ」

「そうね。望んだとおりの、二人きりの静かな誕生日ね」

「お茶もお菓子も無いけどね」

「いいの。私にはこれで十分──」

 

 そう言って佳奈多は、自分の右手でそっと理樹の左手を握りしめた。

 

「か、佳奈多さん」

「しっ。静かに。でしょ?」

「う、うん…」

 

 そんな二人の様子を、扉の隙間からそっと観察していた一人の人物がいた。

「あーらら…あらまぁ」

 

 ひとしきり事態の推移を観察して楽しんだ後、あーちゃん先輩はそっと隙間から離れた。

「ま、みんなには黙っといてあげますか」

 そう言って扉から離れるあーちゃん先輩の元に、美魚が歩み寄ってきた。

「あーちゃん先輩。そちらには?」

「んん? まあ、見た限り、アタシにはよくわからなかったわねえ」

「──そうですか」

 何かを察した美魚は、そのまま踵を返して、人の集まる場所に向かって言った。

「おう西園、どうだった?」

「私は二人を見ていません」

「そうか。そっちにはいないかー」

 

 その場にいる殆どが、そう勝手に解釈した。結果、二人の捜索は困難を極めた。そして、佳奈多と理樹は、元々誕生会が予定されていた時間が終わるまで、ずっと二人きりの時間を過ごすのであった。

 

 その後どうなったかはいざ知らず。 

 

 

 

 

 


こぴかな時々あー++

いろいろすれ違いな姉妹のバースデイ

 

 

理樹「佳奈多さん、今日は葉留佳さんの誕生日だね」

佳奈多「そうね」

理樹「ということは、佳奈多さんの誕生日でもあるよね」

佳奈多「そうとも限らないわよ」

理樹「どうして? 二人は双子なんでしょ?」

佳奈多「双子だからって同じ誕生日とは限らないわ。特にKeyではね。藤林杏と藤林椋の誕生日が違ったのは有名な話よ」

理樹「でもあれは後で訂正されたよね?」

佳奈多「そうね。でも実際、双子が同じ日に生まれるとは限らないのよ。双子と言っても、普通分娩なら一度に出てくるわけではないし、帝王切開でも手間取れば0時を過ぎて誕生日の日付が変わってしまうという事はあり得るわ。wikipediaによると、アメリカのルイジアナ州で1994年から1995年にかけて、誕生日が95日離れた双子が生まれたらしいわ。異父二卵性双生児に比べれば、ずっとありふれた話よ」

理樹「そうなんだ。でもそのwikipediaに、佳奈多さんも葉留佳さんも誕生日は10月13日と書いてあるよね?」

佳奈多「…。」

理樹「どうしてそんな無駄な抵抗するのさ」

佳奈多「そ、それは…」

理樹「それは?」

佳奈多「あ、あの子と一緒の誕生日なんて、嫌だったからよ」

理樹「ホントに? て言うか、嘘でしょ」

佳奈多「…。」

理樹「なんでそんな嘘つくのさ。もうみんな真相は知ってるんだから、虚勢張らなくてもいいのに」

憂希「ではあたしが説明してみましょうか」

理樹「誰!?」

あーちゃん「クドわふたーに出てくる併設校の科学部部長で、クドのテヴア時代の先輩の、氷室憂希さん。主人公なら覚えときなさいね」

憂希「ちなみに城桐キャラよ」

佳奈多「クドわふたーで出てきたキャラなんだから基本的には城桐キャラに決まってるでしょう。何を言ってるのかしら」

憂希「そう? 食堂のおばちゃんって城桐キャラかしら…?」

佳奈多「そんなレベルで話されても…」

理樹「そんなことよりさっきの話説明してよ。城桐キャラは変人という事はよくわかったから」

憂希「…。」

佳奈多「…。」

あーちゃん「…。」

理樹「あ、有月姉妹はまとも、かな…?」

憂希「全然フォローになってないわ…」

理樹「そんな事より説明! 説明お願い! 話進まないから」

憂希「いつか追求するからね、忘れないでよ。で、さっきの話を解説すると。二木佳奈多の心情としては、自分が、自分自身が、妹の葉留佳の誕生日を祝いたいと」

佳奈多「!!!」

理樹「祝えばいいじゃない」

憂希「でも彼女も同じ誕生日なのよ? それなのに祝う立場になっちゃうのは変だと、考えたのじゃない?」

佳奈多「…。」

理樹「そうなのかなあ?」

あーちゃん「ま、例えば卒業生が送別会の幹事やってたら、それは変だしね」

理樹「うーん、それもそうか」

憂希「ま、でも誕生日が同じという現実は変えられないわ。この件に関してはあきらめる事ね」

佳奈多「…そうね…」

理樹「…いや、そういうことなら手はある」

佳奈多「え?」

憂希「無いわよ。戸籍上の名前や本籍を変える事は出来ても、誕生日を変える事は出来ないのよ。事実と違うという証明がされない限りはね」

理樹「いや、誕生日を変える必要はない。ただ、時間を変えてしまえばいいんだ」

佳奈多「…は?」

理樹「時間を入れ替えて、誕生日じゃない日の佳奈多さんが誕生日の葉留佳さんを祝えば良いんだよ」

佳奈多「ごめん何言ってるのかわからない。ううん正確に言うと、言ってる事が非現実的すぎて、理解したくない」

憂希「そうね、そんなできない提案をされてもねえ」

理樹「デキルヨ!」

あーちゃん「あんたは中津静流か」

佳奈多「で。いったいどうやるって言うの?」

理樹「僕は、時間を変える事が出来るんだ!」

佳奈多「…馬鹿じゃないの?」

憂希「なにそれ。あの、厨二って奴? それともデムパ?」

理樹「何言ってるの! リトルバスターズのラストそういう展開だったでしょ! 遺伝子まで書き換えちゃったんだよ! もう忘れちゃったの!?」

憂希「いや、あたしクドわふからのキャラだし…」

あーちゃん「あたしもリトバス時代は立ち絵無しだったし…」

佳奈多「私もリフレイン以降は絡んでないから…」

理樹「うわー。なんかそこはかとない僻みを感じるよー」

佳奈多「だって野球にも出してもらえなかったし…」

理樹「出たかったんだ」

佳奈多「べ、別に…ッ。ただ、ファンが…」

憂希「まあ、朱鷺戸沙耶は出てるのに二木佳奈多はスクリプトの都合で無理ですとか言われても、納得いかないわよねえ」

佳奈多「べ、別に良いのよ…野球なんて…本編に関係ないし…」

理樹「そう、その本編! 僕ちゃんと過去書き換えてるでしょ!? 出てる出てないとかは置いといて、この事実は認めてよ!」

憂希「でもクドわふだとあなた、ナルコレプシー治ってないのよ? つまり過去書き換えられてないのよ?」

佳奈多「それが本来の流れよね。そもそも過去書き換えなんて、そんな荒唐無稽な話あり得ないわ」

理樹「でも、リトバスってそういう話なんだよ!」

憂希「そう。じゃあもし仮にそれが可能だとして。でもあれは、あなたが虚構世界とかいうこの宇宙の物理現象を無視した特殊な空間にいたからこそ出来た次元跳躍的な行動だと考えるべきじゃないかしら。つまり、普通の空間にいる限りは、あなたは時間をいじる事なんて出来やしない。そう考えるのが妥当じゃない?」

理樹「それは…。じゃあわかった、虚構世界をもう一回作ってもらう! 恭介に頼んでみる!」

佳奈多「またそんな無茶苦茶を…。というかもう良いわよ、そこまでしなくても」

あーちゃん「まあ、そう言わず最後まで付き合ってみたら? 方向性はともかく、気持ちは真剣みたいだし」 

憂希「あたしも、ほんとに出来るのなら興味あるわね。ついていくわ」

 

 

 

恭介「風が気持ちいいぜ…。ここは屋上…。俺は片足を欄干にかけて一人でかっこつけながら、ちょっとした自己陶酔に浸っている…。今回筆者が地の文は書かないと決めやがったから、こんな事もいちいち声に出して言わないといけない…虚しいぜ」

理樹「恭介、ちょっといいかな?」

恭介「なんだ、理樹か。いいぞ、理樹のいう事なら大概の事は聞くぞ。性的な話も含めてな」

理樹「性的な事はどうでもいいけど、話を聞いてくれるのはうれしいよ。実は、恭介にもう一度虚構世界を作って欲しいんだ」

恭介「…理樹。確かに、作品を重ねるごとにお前がだんだん馬鹿になっていっている事はわかってる。わかってはいるが、だからと言って認めたくはないものだ」

理樹「ひどいよそんな言い方…。だいたい、クドわふではそんなに馬鹿じゃなかったでしょ」

恭介「俺出てなかったから知らない」

憂希「またここにも僻み根性の人が…」

あーちゃん「まあ、就職活動してたんだからこれは仕方ないんじゃない?」

恭介「まあそれは置いといて。虚構世界をもう一度作れというのは無理な話だ。あれは俺の、生死をかけた一生一度の大技だ。やれと言われて安易に出来るものじゃない」

理樹「でも、時間を動かしたいんだよ」

恭介「そういう話なら、尚更無理だ。SFの世界でも、時間絡みの話は大変に複雑で緻密な考察と理論設計が必要になる。安直に手を出していいものじゃない」

理樹「でもリトバスは特に深い説明とか無くそういう展開になってたのに」

恭介「あれは麻枝准だから許されるんだ。一介のSS書きがそんな事したら失笑を買うのがオチだ」

理樹「え? SS書き? 恭介の話じゃなくて?」

恭介「その辺は気にするな。とにかく、虚構世界は無理だ。何か別の案を考えるべきだな」

理樹「別の案と言っても…」

恭介「理樹、目的と手段を混同するな。お前が本当にやりたい事は一体何だ? まずそれを整理してみろ」

理樹「それは…佳奈多さんに喜んでもらいたい」

佳奈多「え…? ちょ、直枝、違うでしょ」

あーちゃん「違わないんでしょ。本当の目的はそういう事、って事でしょ。直枝君って、意外と素直なのね」

佳奈多「な…! な…! な…!」

恭介「ふむ。それで理樹は、どうしたいと思った?」

理樹「佳奈多さんは葉留佳さんの誕生日を祝いたかった。でも自分も同じ誕生日だから、直接お祝いするのはおかしいという話になった。」

恭介「だから時間をいじろうとしたわけか。だがそういう話なら、別の視点もあるんじゃないか?」

理樹「別の視点?」

恭介「つまり、二木佳奈多が二木佳奈多でなくなればいい。二木佳奈多以外の誰かが三枝葉留佳の誕生日を祝うのならば、何の問題もなくなる。そうだろう?」

憂希「それはそれですごい屁理屈っぽい気がするけど…具体的にはどうやるの?」

恭介「二木には自分を自分でなくする得意技があるだろう。三枝葉留佳に変身するという」

理樹「あ!」

恭介「シナリオによってはそれで理樹を犯しちゃうしな」

あーちゃん「へーーーーーーーーーーーー」

憂希「へーーーーーーーーーーーーーーー」

理樹「わーっ! わーっ! わーっ!」

佳奈多「嫌! やめて! その話はやめて!」

あーちゃん「ま、この件は後でゆっくり追求するとして。かなちゃん、はるちゃんに変身するのはすぐ出来るの?」

佳奈多「出来ますよ、いつでも準備してますから。あと、いつからはるちゃん呼ばわりするようになったんですか」

あーちゃん「NHKのニュースに冬将軍が出るようになった頃から、かしら」

恭介「結構前だよな、それ」

理樹「かなちゃん呼ばわりはもう許したんだね」

憂希「いつでも準備してる事には誰も突っ込まないのね…」

 

 

 

あーちゃん「そういうわけで、変身完了です!」

佳奈多「…。」

理樹「文字じゃ全然わからないけど、どこからどう見ても葉留佳さんです!」

あーちゃん「かなちゃん、『アヒョー!』とか『葉留佳ちんちん18禁』とか言ってみてよ」

佳奈多「葉留佳はそんな事言いません! 前半はともかく!」

憂希「前半は言うのね…」

恭介「そしてうまい具合に三枝葉留佳も呼び出した。事件の臭いがすると携帯電話で告げただけで、すぐ飛んできた」

葉留佳「その一言ではるちんは騙された事を理解しました! いやー、参りましたネ」

理樹「まあ、そう参る事もないよ。これからいいことがあるから」

葉留佳「?」

理樹「この人が、話があるって」

佳奈多「…。」

葉留佳「…誰デスカ?」

佳奈多「わ、わ、わ、…」

葉留佳「輪? 輪っか? 円デスカ? 円はあらゆる図形の中で最も性質がいいという、あれデスカ?」

憂希「好きなタイプだけど関わりたくない人が、こんなところにいたなんて…」

佳奈多「私は葉留佳! 三枝葉留佳!」

葉留佳「何言い出すんですカ突然? 確かに姿ははるちんにそっくりデスケド」

佳奈多「サイグサハルカハシンダ! サイグサハルカハシンダ!!!」

葉留佳「何て事言うんデスカ」

理樹「佳奈多さん落ち着いて、テンパらないで!」

葉留佳「お姉ちゃん?? まーた私の格好して遊んでるんですか? 何やってんでスカ。風紀委員と寮長と女子高生弁理士の仕事はどうしたんデスカ」

憂希「最後の、何…?」

佳奈多「遊びじゃないわよ! その…葉留佳、誕生日おめでとう」

葉留佳「…それを言うためにわざわざそんな格好を?」

あーちゃん「誕生日が同じかなちゃんが誕生日のお祝いを言うのは変だからという、彼女なりの理屈なのよ。察してあげて」

葉留佳「それで私の格好を?」

恭介「そうだ。これで二木は二木でなくなった。問題無い」

葉留佳「でもそれって、私が私におめでとうって言ってる事になりますヨネ? 余計変じゃないデスカ?」

理樹「あ」

あーちゃん「そうよねー」

恭介「フ、俺とした事が…」

憂希「私は気づいてたけど、敢えて黙ってた」

佳奈多「え、えっと、そ、その、その、その、…」

葉留佳「はあ…。まあいいデス。お姉ちゃんが変な事するのは、今に始まった事じゃないですカラ」

理樹「葉留佳さんには言われたくないと思うよ…」

あーちゃん「まあまあ。姉妹なんだし、その辺はお互い様という事で」

佳奈多「…。」

葉留佳「…まあ、いいデスケドネ」

恭介「では、これで一件落着という事で」

理樹「うん。じゃあ、僕たちからもおめでとうを言わせて」

あーちゃん「そうね。おめでとう」

憂希「ま、私もおめでとうと言っておくわ」

恭介「おめでとうな」

クド「おめでとうなのですー」

初「おめでとうございます」

椎菜「おめでとー」

真人「おめっとさん」

謙吾「おめでとう」

小毬「おめでとう~」

鈴「うん、めでたい」

唯湖「めでたいな」

美魚「おめでとうございます」

佐々美「おめでとうございますですわ」

沙耶「おめでとう」

佳奈多「ソウカ、ワタシハココニイテイインダ!」

葉留佳「だから、私の格好で変な事言うのやめてくださいヨ。て言うか軽くキャラ破壊デスヨ」

 

 

 

 

 

Fin

 

 

 

 

クド「ふう。私たち、なんとか最後で出してもらえましたねえ」

椎菜「おなじ城桐キャラなのにはぶられたらどうしようかとおもったよー」

初「筆者によると他意はなかったとの事ですが…。それよりも、一日遅れた事の方が問題ですね」

クド「城桐信者鞍替え宣言をしておきながら遅刻した筆者への抗議メールはこちら!」

http://kouyaxatosi.info/xlink/mail.php

 

初「yahooドメインからのメールは何故か届かないらしいので、ご注意を」

 

 

 

 

今度こそ 終わり

 

 

 

 

 

 



読者登録

荒野草途伸さんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について