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20.【旅】

 

舌で息し 黒い眼を輝かせて
旅人とともに 犬が歩く

かつて旅には同胞がいたが
絶景に まみえるたびに
一人 また一人 根付いていった

熱帯の密林 砂の海のオアシス 雲を海とたなびかす山々

旅の犬にも同胞がいたが
根付いていく人々ごとに
一頭 また一頭 ついていった

青々とした海原 雨の島々 雪深き原野 風吹き荒れる星の荒野

また密林 鳥や獣の声に眠り かきわけるように巨大な葉の間抜け
沖で大鯨の跳ねる海 行き止まり 眺めた

背で 大きな機械の音がする
かぞく どこかで まつだろうか
ごはんのときには わらうだろうか

うしなわれるもの うまれていくもの

できなかったこと できるようになったこと
そして もうにどと できぬこと

舌を出して 宇宙のような瞳 見上げている
あまえるような ものがなしいような まばたき

うん そうだね ほんとうに ありがとう
さて、これから いっしょに どこへ ?

見上げた空は既に夜
赤黒い雲が 月星 覆い隠し
しかしわずかに透けている 巡るものの 光彩

・ ・ ・
 犬先生:我が毛並みには、星々と目玉が跳ねているのだ。

 ラクシャさん:目玉さん1個 とんできたよ?

 


21.【寓話】

 

お祝いの日 おいしいハムもらって ごきげん
しっぽふって とことこ あっちとこっちと

広いお庭 落ち着くところで 食べようと
くんくん みわたす 飾りのあいだ

植え込みの木陰 どうかしら
おや、りっぱな 黒服の人
うそのおはなし していたよ

トナカイさんのランプの陰は?
おや、元気な色の服の人々
みんなでだれか 泣かせて笑った

ぴかぴか飾り まぶしくてわくわく
でも、あご つかれてきた

お屋敷の子 溜息か 微笑みか
誰もいない白いブランコ ぶらん
一角獣のぬいぐるみ よいしょと抱え

お歌 聞こえるね
わたしは はむを食べに きたよ
みんな たのしげだね
だからね ふわふわのおじいさん
きみにも はむ くれるとおもう

そこで食べようと 足元 座ったら
小さな橋 みえた

お庭に川や池を作って めぐらせて
なにもみえないかな なにかみえるかな
とっとこ走って ききっと止まって

水みたら わんこがいたよ
おんなじように はむ持って
きみも なんだね!そこにもいたね!
わん!といったら

ぶくぶく はむ 沈んでいき
むこうのわんこも もういない

しばらくほえてみたけれど やはりおなかがすいてきて
座って ぶくぶくいうのを みてた

ふる ふる…と ゆれるしっぽ
そのうしろ 赤い服の ひとじゃないだれか
毛むくじゃらの手で 何か 置いていきました

ぶぅぶぅいうこ だまっているこ わんわんいうこ
皆の眼にうつるせかいに 冷気と 可憐な結晶

・ ・ ・
 ラクシャさん:よーし、ケーキも準備して、と…アレ、犬先生~?

 犬先生:(この空間には煙突が…仕方ない、このままコタツ内で待機だ わふっ楽しい…)


22.【雲】

 

久しぶりに じっくり雲を見上げると
大小の犬 寒気と日差しの中

やんちゃな一匹 大きなせなか 登る
甘えんぼな一匹 もっしりした 脚を あまがみ
のんびりな一匹 その脚まくらに すやすや おなか

ほこっとしたのも 久しぶり
こころでしずかに 呼びかけてみる

お~い ころころ かわいいね
おそら どうだい あったかいか
いろんなもの みえるかい

きりっと記憶 久しぶりに 思い出す

黒いぐらいの 隘路の家屋のならび
みあげたとき そのときも

雲の犬 勇ましく 柔らかげに
電線ぬけてく 風つれて 空にいた

うまくも よくも どうなってきたか
ただ転がり来た だけかもしれない

でも また会えてよかったよ と
ねじれた空き缶 たしかに こここと笑った

去るか 帰るか お散歩か
遠ざかっていく雲の犬の 振り返った 青い眼

・ ・ ・
 犬先生:ほっほっほ。やぁよい子よ、おじさんがプレゼントをあげよう。

 ラクシャさん:(クゥーッ犬先生そっくりになれる かぶりものセット…!)


23.【竜】

岩間からたえず流れ落ちる清水をみて、ぼんやり のひと
青緑色の滝つぼ深く 底は知れない
肌がぴりぴりする冷気いっそう そのとき

にわかに水面泡立ち 白い光 まどろむように 次第に近く

自然とどこかのはざまより 未知来たりて ときにまみえる
それがどこか別でなく よもや いま ここ とは

鼓動激しく でも動けず 眼をつぶる事も 光は目の前
強く鈴の音 短く鳴ったあと

両手に乗るほどの 白い超常の動物 鼻をこすって
硝子のような青い眼 鳥のような桃色の手足
赤く渦巻いた翼と 細長いからだ 水色の鰭のある尾

前脚ぺろぺろ おわって 両の眼きりっと そのひと見つめる

そなたには まばたく ま ながら せわになった
これ このたま もてゆかれよ

くわっぺっと 清水とともにはきだした 澄んだ色の玉
仔竜は雲湧かせ まとい 瞬く間に かなしいほど青い空へ
風の名残が 傷に優しく こころのひびにも

穏やかな目をした大好きな老犬 ここがお気に入りだった
水のごうごういうのを見ながら へはっと
よもや たくさんのなか そんなことも あったとは

空へ昇って 大きな姿に なるだろうか
またこの水辺に戻り のんびりと宿るだろうか

手の中 泡色まんまる 振ると幽かに 鈴の音がした

・ ・ ・
 犬先生:んふふ…ぐぅぐぅ ごるる…

 ラクシャさん:さてさて、僕からもこれ 置いておこうかな。

 


24.【闇】

 

生きたような黒い煙 もんやり広がる秘密の地下室
次第に見えきた姿は 見事な翼を広げた 蛇の尾の黒獣

でも それが本体とは 限らない

呼び出した人 飛び出しそうな鼓動を隠し
数々の質問をするために 人の姿に なってもらった
獣は雌のかたちなれど 変わった姿は ぎらりとした眼の 屈強な鎧戦士

どちらが本当かは わからない

長年学び そして 踏み外し それでも渇望した知の疑問を
誠実に ひとつひとつ答える 黒髪たゆたう魔の声だけが
鐘のように 頭蓋に染み入っていき

供物を持ち 消えゆく姿の 威厳と優美 射る眼の微笑み

憧れた絵画の 翼の人に 静かに立つ犬に どこか似ていた
いそうなほどに緻密なのに どうしても どこにも

なにが正しいか ころころと裏表
しかし 儀式終わり ばったりと倒れたままの 恍惚の人
もう二度と かわらぬ殿堂を そなえてしまった かもしれない

こころうばわれ 目は虚ろに姿を描き 耳はいとしの声のみ響き
はかなく熱い涙に 奥底からの笑み そのひとだけの偶像

野山の村に 幾重にもつらなる空より 静けさの陽光

きづくも なしも ひかりありて かげもまた
なにがけがすか なにがすくうか
どちらなのか どうすればいいのか 
だれもよくはしらないまま しっているという

そして それすらも 宇宙の片隅 粒の粒 

どこかのはずれで白牛 だれにともなく 鳴いた

・ ・ ・
 犬先生:あぁ私は ときに混沌魔法を夢中にぶっ放すが、魔物とはまた なぁ ごくごく うぃっ

 ラクシャさん:(あげた 魔法たんぶらー に 何を入れてきたんだろう…)



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