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018.【蹄】

 

きらびやかな宮殿 謁見の間に
文官・武官 居並び 装飾の玉座に皇帝さん
の 間に1列 緊張している一団

使者を見おろす 立派な髭の君
珍しい鳥獣が大好きで
本日の到着にも 内心胸を躍らせる

金飾りの赤い綱に ひかれてきたのは 黄白色 のんびりとした 大柄の馬
いえいえ お顔は 耳の垂れた犬さん

なんでも 日に千里駆け 耳はききわけ 眼は宝玉
吠える声は敵軍を戦慄させ 背に乗らば寿命が千年 伸びるとか

しかし 背に乗り損ねれば 逆に寿命が 縮むとか

遠域の思惑か 贈られた宝か
はみ を はみはみ 犬馬さんは

故郷の仙境 雲間の青い絶景を夢に見て
蹄こっこっと 鳴らし 御者に笹竹 生やしている

・ ・ ・
 犬先生:ハア~ッ……あ、それっ にょろにょろ

 ラクシャ:だからコタツに そういったもの生やすなというにっ!


19.【花】

 

野のはずれに 緑色の犬が立っている
見える人あり 見えぬ人あり

お天気の祝祭の たるんだ昼すぎ
妖精の飼い犬 と だれかが言った

どうもうだけれど 彼らと野歩き
そのときだけは 安全だって

緑色の犬 野の中に来ている
くつろぐ人々 見極めるように

網で蝶採る ひとがいる
めずらしくないと 放るように 網を振ると
翅よろよろと空へ どこかへ

今日はやけに 蝶が少ない
この間は ここらにいないはずのを
沢山捕まえ…

鼻すぐ近く 薬花の香
からみあう草花の毛並みをした犬が
音もなくその人 抱え込む


やわらかい弧で 高価な網が倒れる頃には
環のような草跡のこし もとの花野

あ、妖精の環っか できてるよ

みえること みえないこと
しっていること いないこと
眠たげな昼すぎの 死と生をいだく くさはら

・ ・ ・
 犬先生:ふーむ、わが腹宇宙 なにやら ごろごろとっ…

 ラクシャさん:はい、腹(宇宙)巻きと 甘くないヨーグルトです。で、なに食べたんだい?


20.【旅】

 

舌で息し 黒い眼を輝かせて
旅人とともに 犬が歩く

かつて旅には同胞がいたが
絶景に まみえるたびに
一人 また一人 根付いていった

熱帯の密林 砂の海のオアシス 雲を海とたなびかす山々

旅の犬にも同胞がいたが
根付いていく人々ごとに
一頭 また一頭 ついていった

青々とした海原 雨の島々 雪深き原野 風吹き荒れる星の荒野

また密林 鳥や獣の声に眠り かきわけるように巨大な葉の間抜け
沖で大鯨の跳ねる海 行き止まり 眺めた

背で 大きな機械の音がする
かぞく どこかで まつだろうか
ごはんのときには わらうだろうか

うしなわれるもの うまれていくもの

できなかったこと できるようになったこと
そして もうにどと できぬこと

舌を出して 宇宙のような瞳 見上げている
あまえるような ものがなしいような まばたき

うん そうだね ほんとうに ありがとう
さて、これから いっしょに どこへ ?

見上げた空は既に夜
赤黒い雲が 月星 覆い隠し
しかしわずかに透けている 巡るものの 光彩

・ ・ ・
 犬先生:我が毛並みには、星々と目玉が跳ねているのだ。

 ラクシャさん:目玉さん1個 とんできたよ?

 


21.【寓話】

 

お祝いの日 おいしいハムもらって ごきげん
しっぽふって とことこ あっちとこっちと

広いお庭 落ち着くところで 食べようと
くんくん みわたす 飾りのあいだ

植え込みの木陰 どうかしら
おや、りっぱな 黒服の人
うそのおはなし していたよ

トナカイさんのランプの陰は?
おや、元気な色の服の人々
みんなでだれか 泣かせて笑った

ぴかぴか飾り まぶしくてわくわく
でも、あご つかれてきた

お屋敷の子 溜息か 微笑みか
誰もいない白いブランコ ぶらん
一角獣のぬいぐるみ よいしょと抱え

お歌 聞こえるね
わたしは はむを食べに きたよ
みんな たのしげだね
だからね ふわふわのおじいさん
きみにも はむ くれるとおもう

そこで食べようと 足元 座ったら
小さな橋 みえた

お庭に川や池を作って めぐらせて
なにもみえないかな なにかみえるかな
とっとこ走って ききっと止まって

水みたら わんこがいたよ
おんなじように はむ持って
きみも なんだね!そこにもいたね!
わん!といったら

ぶくぶく はむ 沈んでいき
むこうのわんこも もういない

しばらくほえてみたけれど やはりおなかがすいてきて
座って ぶくぶくいうのを みてた

ふる ふる…と ゆれるしっぽ
そのうしろ 赤い服の ひとじゃないだれか
毛むくじゃらの手で 何か 置いていきました

ぶぅぶぅいうこ だまっているこ わんわんいうこ
皆の眼にうつるせかいに 冷気と 可憐な結晶

・ ・ ・
 ラクシャさん:よーし、ケーキも準備して、と…アレ、犬先生~?

 犬先生:(この空間には煙突が…仕方ない、このままコタツ内で待機だ わふっ楽しい…)


22.【雲】

 

久しぶりに じっくり雲を見上げると
大小の犬 寒気と日差しの中

やんちゃな一匹 大きなせなか 登る
甘えんぼな一匹 もっしりした 脚を あまがみ
のんびりな一匹 その脚まくらに すやすや おなか

ほこっとしたのも 久しぶり
こころでしずかに 呼びかけてみる

お~い ころころ かわいいね
おそら どうだい あったかいか
いろんなもの みえるかい

きりっと記憶 久しぶりに 思い出す

黒いぐらいの 隘路の家屋のならび
みあげたとき そのときも

雲の犬 勇ましく 柔らかげに
電線ぬけてく 風つれて 空にいた

うまくも よくも どうなってきたか
ただ転がり来た だけかもしれない

でも また会えてよかったよ と
ねじれた空き缶 たしかに こここと笑った

去るか 帰るか お散歩か
遠ざかっていく雲の犬の 振り返った 青い眼

・ ・ ・
 犬先生:ほっほっほ。やぁよい子よ、おじさんがプレゼントをあげよう。

 ラクシャさん:(クゥーッ犬先生そっくりになれる かぶりものセット…!)



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