閉じる


<<最初から読む

15 / 31ページ

13.【風】

 

灼熱の昼と、氷点下の夜
さそりは去ったが 足は石

大布かぶり 岩陰にもたれて
震えながら 目当ての星を探る

闇の雲の草をたべる 幾頭もの光の羊群
その手前 すいすいと 何かの姿の風が吹く
とたんに だれか どこかで倒れた
らくだが 驚いて鳴いている

長い息ひとつ 妙に落ち着いた気分で
斜めに交差した二対の翼の 黒鷲頭の人影を見る
その手から広がる 苦しみの煙

富と帰るもの 名すらも忘れられるもの
どこか遠いことだった 流行の噂で腹はふくれぬ
みえるもののみ 貪欲に踏み荒らし 余興に興じる灯火のかげ
暖なくも こころの灯火忘れぬひとびと 青い部屋の 虚ろな夢
ひざにあごをのせ まるくやさしい目をした老犬

煙 忘れられるものになる間 今までが長すぎる詩だった気もし
しかし ぼんやり眼が覚め 黒鷲のひとがいない

神話のように 地平にのぼる 圧倒的な光と熱の眼の手前に
衣たなびかせ 空中に立つ 何かの姿の風

旅人達の 旅またはじまる
遠くと遠くの はざまの砂漠にて

・ ・ ・
 犬先生:砂漠にコタツがあったら、夜も助かろう、生物も巣にしてみたりなぁ

 ラクシャさん:うん…昼は違った意味で トラップになりそうだけど…うぅ、しかし あったかいっ


14.【陽】

 

暗黒に「5つめの太陽」を今こそ創ろう
その想いのもとに 光と熱の珠 育つ
羽飾りの 金飾りの 数多くの仲間
次々 激しい光にのまれ 熱に焦がれ

燦然たる 魂の灯は成った

しかし 見上げる共は既になく
眼からは滝のような 落涙
目玉も流れ出すような


夢の奥か いつかの欠片か
密林の向こうへ沈む 真っ赤な夕陽を
だれかが押して 送っていく

・ ・ ・
 犬先生:見たまえ君。コタツの内部の色の、やや夕陽のごとき色あい…へっくしわおん!

 ラクシャさん:すっかり気に入ったんだね、おこた。


15.【建】

 

森の岩場から 川をみてみた
虫の声と静かな丸い光 水面に

おや なにかが ふたつ
何の力か 沈まぬ篭にゆられ

脚を伸ばして立ち上がり
小石けちらし 駆け下りて
くうん?と 首を かしげた

ずるずる 大泣きの篭 牙並ぶ口で引っ張りあげ
かくされたふたご くるんで眠った

たなびく旗 白い2つの城 勇壮な鎧の兵士達の夢
険しい顔で鼓舞し 見事な剣を振るう王たち 誰かに似ている

すっかり 守るつもりで 滋養を与え
寝息を聞いて出た狩りの間に 狩人がみつけた

篭の子ら あぶない 
狼にでも食われんように おれらでつれて帰ろう
おぉ 大粒の涙 怖かったろうになあ

雲間の精霊 名残の力やどる 狼のからだ
夕陽に輝く夢のような草原に 命の糧を狩らんと

のちの 栄華と儚さの帝国の丘にて

・ ・ ・
 犬先生:ラクシャ君、君の尾のふわふわ再現素材を全身に着てみたが、どうか。

 ラクシャさん:うん、羊です。


16.【山野】

 

いつからか でもたしかに
その姿 かつて山野に

呼吸をする 山々の気が
その姿 いくえにも たがえてうつす


畑仕事 背筋を伸ばしその先の
薄暗い森の境に 静かに光る眼を見た

障子がことこと震えるほどに
ものすごい 吠え声 聞いた

夜 光る雀をちらちら連れた
緊張の威風を背に歩く
転んでしまえば もう帰れない

うなっていた歯の間のとげ ぬいたら
恩返し してくれた

なかよし ころころ たわむれる
やんちゃで小さな ずんぐりさん達
いとしげに 見守り 世話する 対

守りに払い 千匹通り
すみかに えものに よわりかぜ
減っていくさま めにもあきらか

のちに聞かれた 吠え声は
おーいと呼ぶげな 響きと聞いた


そこに 姿 あったこと
そこに 今 いないこと
せめて こころの うちには


点灯したまま 停まりきりの車の前
口をぱくぱく かたまる目の前
眩しそうに 犬ではない何か
闇の藪に 横切って きえた


・ ・ ・
 ラクシャさん:「おおかみのまゆげ」 というお話も、あるそうです。

 犬先生:私にも1,2本ずつ 不思議犬の眉毛があるが、はて…


017.【羽】

 

おはようおはよう、と 顔をぺろぺろ
いつもどおり跳ね回る 元気な かぞくっこ

いつもと違うのは 小さな翼が生えていること

ぼうっと 柔らかい羽毛を眺めていたら
空のお皿くわえ 転がしながら持ってきた

かつて どこかの街道で
羽犬 あばれまわったという
その牙 強靭さ 空行く力で

ざらざらと どっぐふーど 水の皿も満たし
飛び掛らずに 待てるかな?
上手に出来たら、よし!で ごはん
その間に ばたばたと こちらも朝ごと

かつて 羽 得たような俊足の
お殿様の愛犬 いたという
だいじにだいじに とむらって
りっぱな塚 今もどこかに

支度の間の ひとときに水
尻尾ふって 自分でリード くわえてきた
そうだね これ持ったら お散歩だ

黒い宇宙に出来た 新しい白色の町
まだ飛べないらしい翼をみて
先の心配 今の ほっこり
今までの 愛らしい失敗 思い出し 歩く

くんくん空を嗅ぐ 先 過ぎた 流れ星

・ ・ ・
 ラクシャさん:わふふ…ぐぅ (しっぽ振りつつ)

 犬先生:ラクシャは寝つきが のびTくん並みなのである。ふあぁ…(流れ星出しつつ)



読者登録

謡犬 ユネさんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について