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09.【彷徨】

 

今宵かね?
すまぬ、それが急用でね
寝ずの番を せねばならぬて

中に?いやいや、何もおらんよ
巣でも掘ろうと思うてな
ほれ、じき白い大将が おでましになろう

おぬしこそどうしたね 立派な牙 むきだしにして
縞模様も その眼も 私より鋭きこと 知っておるわい
さぁさぁ、鬼市の宴 存分に楽しんでくるとええ


さてお嬢さん、縞々の猛き子 行ってしまったよ
しかし感心だなぁ、木の虚に泊まる守りを
土地の精霊に 頼むとは 若いのによう知っておった
まぁ、じいさまは留守 私しかおらなんだが

…ところで、その杖と がいこつ どうしたね?

・ ・ ・
 犬先生: 私の腹宇宙が、こたつに最適な果実をくれと言っておる…

 ラクシャさん:不思議犬仕様みかん なら、さっきので全部だよ。


10.【水棲】

 

木々の覆い隠す 池の中まで 柔らかな日差し
幾重にも咲く 水中の花々から
藻と鱗だらけの石が ひれと尾をぴんと 伸びをして
緑色の水犬の 泡のぼる おおあくび

仲間とぶくぶくごうごう おいかけっこ
こざかな たにし えび こがに かえる
水の乙女さんは 金と銀の何か 磨いていて
ぬしさんは 何万年かの 夢をみている

へとへとになり 暖かな日差し届く 沈んだ石の台の上
犬ず おしくらしつつ ひなたぼっこ
古い石 なんだろう なにか絵が 彫ってある
水の生き物 ずらりのそばに、半人半魚 見慣れぬ民族

陽の線 おどる 忘れ去られた 森の池の深みに
水のものたちの棲む 壮麗な神殿遺跡

・ ・ ・
 犬先生:私は夢のあちこちに、生きたヘンテコ宮殿を造る…そばから、逃げられておるのだ。

 ラクシャさん:僕は雲間の図書館に住んで、記憶の仕事もしています。(って どなたへの解説だろう)

 


11.【捕】

 

オリンポスの神さまが 飼っていた犬さん 英雄が借りた
絶対に どんな獲物も捕らえるという 見事な猟犬

つかまえたいのは、不敵な狐さん
絶対に どんなものにも捕まらぬという 神さま育ち

犬さん たちまち 猛烈に追い 狐さん軽々と 跳び駆け
鋼の息し 尾を振りわけ がっしり すらりとした脚を運び 
2頭 なかなか 捕まえきれず 捕まりきらない

絶対 と 絶対 どちらが ほんとう? どちらか うそ?
古代世界のかたすみで ひとときの永遠を作る 捕と捕
そこに それぞれのいみ なんだろう?

ふぅむ と 雷霆の方 雲の下へ 手をかざすと
張り切って走った2頭とも つるりと綺麗な 大理石

そのうち おおいぬの星座 その犬さんという

冬の星空に染み入っていく どこかの遠吠えの声

・ ・ ・

 犬先生:ほおう、たしかにどちらも互角…

 ラクシャさん:そこ!コタツの上で ちっちゃい剣闘士 戦わせない!


12.【封】

 

川沿いの 異様の風吹きだす 洞窟
狩人の犬さん なぜか気になり 岩穴の奥へ

舌で息をし 突き当たった地の深み 噛みあう岩の間に
鎧の覆う 神話の巨躯を見た

飛び上がったが逃げ出さず 鼻に皺よせ 尾を払い唸ると
重低音の静かな笑いと 語りかける声 


口笛にこたえて 飛び出してくる狼犬さん
どうした、と肩をなでられ 嬉しそうに ごつごつの手をぺろぺろ
雪深い平原 空を横切る黒い狩猟団を見上げながら 父母の待つ村へ

犬さんが 少し浮いて走っていることに 今はだれも 気付かない

はての日 放たれて自由になり 混乱を食い駆け 滅ぼさる事 自ら知る
封じの伝説者から 気まぐれに与えられた 鉄の森の息吹 

・ ・ ・
 ラクシャさん:その装備、どうしたんだい?

 犬先生:寒冷防御力を誇る魔法鎧である。おぉっしかし背中掻けないっ


13.【風】

 

灼熱の昼と、氷点下の夜
さそりは去ったが 足は石

大布かぶり 岩陰にもたれて
震えながら 目当ての星を探る

闇の雲の草をたべる 幾頭もの光の羊群
その手前 すいすいと 何かの姿の風が吹く
とたんに だれか どこかで倒れた
らくだが 驚いて鳴いている

長い息ひとつ 妙に落ち着いた気分で
斜めに交差した二対の翼の 黒鷲頭の人影を見る
その手から広がる 苦しみの煙

富と帰るもの 名すらも忘れられるもの
どこか遠いことだった 流行の噂で腹はふくれぬ
みえるもののみ 貪欲に踏み荒らし 余興に興じる灯火のかげ
暖なくも こころの灯火忘れぬひとびと 青い部屋の 虚ろな夢
ひざにあごをのせ まるくやさしい目をした老犬

煙 忘れられるものになる間 今までが長すぎる詩だった気もし
しかし ぼんやり眼が覚め 黒鷲のひとがいない

神話のように 地平にのぼる 圧倒的な光と熱の眼の手前に
衣たなびかせ 空中に立つ 何かの姿の風

旅人達の 旅またはじまる
遠くと遠くの はざまの砂漠にて

・ ・ ・
 犬先生:砂漠にコタツがあったら、夜も助かろう、生物も巣にしてみたりなぁ

 ラクシャさん:うん…昼は違った意味で トラップになりそうだけど…うぅ、しかし あったかいっ



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