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06.【雨】

 

さぁさぁと降る水粒に おおわれた闇
ぬかるみを こころもとない 灯りひとつ

と 足元 じっとりと 包まれる感触
ぼんやり丸い灯りの下 丸いずぶぬれ ひっついている
毛は房になり 潤んだ黒い目 どこか底なしの 何ともつかぬ仔
小さな足で ようやっと けんめいに 未知の声で 鼻をならし

世界 毎日 いろいろうまれ たえていく
たえるむすうの ものたちのうち いくつかは
こうして怪に なるのだろうか

同じじゃないから しゃべらないから 少し変わった所があるから
賢くないとは たしかな条かな?

ひとぶんの、いきているぶんの、時代ぶんの、地方ぶんの、
まちぶんの、おやぶんこぶんぶんの、みそっかすぶんの、いえでぶんの いち

ひざではさんだ 電池切れそう 懐中電灯 照らされて
りょうてでだっこされた怪の仔 満足げな あくびして ばしゃっとこまかな 水の粒

雨音 耳に戻り 呼ぶ声どたばた
ふっくらな手の きつい平手と はぐ食らい 
言わなかった心細さの糸が切れ

どうどうと流れ出す あったかい涙の混じる闇 
・ ・ ・
 犬先生:ぶるるふ足寒い…コタツの温度、上げてはくれんかね?

 ラクシャさん:え、さっき上げたよ?とりあえず、はい お茶。


07.【狼人】

 

山中 木造りの 小さな家
外では遠吠え 中では シチューの香りとお腹の鳴る音
暖炉に集まり 手をかざして ごはんのじかん 待っている

きょうは どうしたろうね やけに遠吠え きこえてくる
このごろは たいへんだから でも おまもり あるもの
生まれ持った 牙と、爪と、夜を見る眼 それに耳

くるしみもだえ 獣の姿に変わる人
いつからか どこからか

ある地ではおばけ ある地では戦士の力
故郷の山々は素敵だけれど
目ざとい大勢の「正義」が 減りゆく種族 追い詰める

でもかれらには ひとの忘れた力が宿る
野山飛び駆け 眼をひからせ
唸り吠え飛び掛り 戦い 守り 失い やっと得る
昔は大群 いまや どれだけか

だからこそわかる だいじさもまた


ひげもじゃ ぼさぼさ 葉っぱとすり傷の とうちゃん ご帰宅
おいしげなおみやげ もって帰った
子らはすっかり仔狼 転げてはしゃぎ お母さんも 尻尾ふってる 

山中の家から ちっちゃな 遠吠えがっせんと 煙突の煙

・ ・ ・
 犬先生:ふーっうまそうな ODEN である!がつがつあついあついっ

 ラクシャさん:ほらほら、猫舌なんだから気をつけないと。


08.【仙】

 

叩きつけるように吹き抜ける 風の峰
おとなしい犬と髪の長い人 座っている

犬 土ほじくれば 人 呼吸を長く整え
くねくね寝そべるそば 舞うように歩き
ごはんの食材 こだわって

百年ずつ 経るうちに
二者はだんだん 雪色に変わり

すべてがうつろう空しさと
生きる雲を呼び 乗って空を行く術 心得た

めざすは角の山
早く仙になりたくて なれなくて 闇に墜ち 
暴れる巨怪となった教え子 鎮めんと

まだまだ ずっと 未完成
しかしだから こやつと どこまでも

では 参りましょう と振り向く
白の豹紋 赤い星を額に得た金眼の犬

・ ・ ・
 犬先生:いまこの コタツの中には、何が入っているでしょうか。

 ラクシャさん:さて何かな…あれ、どこにも足がつかない…


09.【彷徨】

 

今宵かね?
すまぬ、それが急用でね
寝ずの番を せねばならぬて

中に?いやいや、何もおらんよ
巣でも掘ろうと思うてな
ほれ、じき白い大将が おでましになろう

おぬしこそどうしたね 立派な牙 むきだしにして
縞模様も その眼も 私より鋭きこと 知っておるわい
さぁさぁ、鬼市の宴 存分に楽しんでくるとええ


さてお嬢さん、縞々の猛き子 行ってしまったよ
しかし感心だなぁ、木の虚に泊まる守りを
土地の精霊に 頼むとは 若いのによう知っておった
まぁ、じいさまは留守 私しかおらなんだが

…ところで、その杖と がいこつ どうしたね?

・ ・ ・
 犬先生: 私の腹宇宙が、こたつに最適な果実をくれと言っておる…

 ラクシャさん:不思議犬仕様みかん なら、さっきので全部だよ。


10.【水棲】

 

木々の覆い隠す 池の中まで 柔らかな日差し
幾重にも咲く 水中の花々から
藻と鱗だらけの石が ひれと尾をぴんと 伸びをして
緑色の水犬の 泡のぼる おおあくび

仲間とぶくぶくごうごう おいかけっこ
こざかな たにし えび こがに かえる
水の乙女さんは 金と銀の何か 磨いていて
ぬしさんは 何万年かの 夢をみている

へとへとになり 暖かな日差し届く 沈んだ石の台の上
犬ず おしくらしつつ ひなたぼっこ
古い石 なんだろう なにか絵が 彫ってある
水の生き物 ずらりのそばに、半人半魚 見慣れぬ民族

陽の線 おどる 忘れ去られた 森の池の深みに
水のものたちの棲む 壮麗な神殿遺跡

・ ・ ・
 犬先生:私は夢のあちこちに、生きたヘンテコ宮殿を造る…そばから、逃げられておるのだ。

 ラクシャさん:僕は雲間の図書館に住んで、記憶の仕事もしています。(って どなたへの解説だろう)

 



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