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運命

第1章 運命

 

 ある日を境に人類は2つの勢力に分かれてしまった。

 

ある日とは2012年12月1日、一般的には「啓示の夜」と呼ばれている。今では正月とクリスマスの次に有名な日だ。この2012年12月1日に人類は真実を知ってしまった。いや、真実へ辿り着く道を見つけたと言うべきだろう。

 

 極秘裏に行われていた研究は、ある者たちによって急速に全世界へ広まることとなった。その方法はあまりにもチープであった。なんてことのない携帯端末のゲーム「Ingress」として公開された。このとき、人類の行く末を決めるゲームということなど誰も知る由も無かった。一部の開発者たちを除いて。

 

 この日本の偏狭の地、ギガフロート玉野においても、アーリーアダプターによって「Ingress」の名は瞬く間に広まっていった。かくいう自分もアーリーアダプターの1人であり、「Ingress」というゲームを手に入れた時に、「Ingress」が人類の運命を決めるツールであることを知らなかった。

 

 2つの勢力とは「エンライテンド)」と「レジスタンス」。簡単に言えばエンライテンドは革新派、レジスタンスは保守派である。ただし物事はそんな単純なわけではない。「啓示の夜」もしくは、それ以前に一部の人間は知っていた。人類の進化において影響を与えた何かがあったと。その何かがモノなのかコトなのか真実は明らかになっていないが、その何かを「シェイパー」と呼ぶことだけは多くの者が理解していた。

 

 だが、その「シェイパー」が与える影響を望む者と望まざる者が生まれた。「シェイパー」が与える影響を望む者を覚醒者という意味で「エンライテンド」。「シェイパー」からの影響を拒む者を抵抗者という意味で「レジスタンス」と呼んだ。

 

 「Ingress」をインストールした携帯端末では、「シェイパー」が人類へ影響を与えていると言われるXM(エキゾチックマター)を可視化することができた。そのため使用者は 「Ingress」をインストールした携帯端末のことを「スキャナ」と呼んだ。

 

 そして、次第にXMが歴史的な建造物、人が多く存在する場所に集中していることに誰もが気づき始めた。そして、そのXMが集中する場所を「ポータル」と名付けた。

 

 「エンライテンド」は人類の革新を求め、XMの拡散を行うために「ポータル」を取得し、「レジスタンス」は人類を守るために「ポータル」を取得してXMの減衰を行うようになった。

 

 「ジャービス 」と「エイダ」、「デボラ」と「ハンク」。日本にいても彼らの名前は知っている。ハリウッドスターより有名かもしれない。何も知らない人たちには。こう教えている。 

 「ジャービスはエンライテンドの象徴、エイダはレジスタンスの象徴。デボラとハンクはXMやシェイパーを知る重要な人物である」と。このくらいの説明でほとんどの者は納得する。ゲームのキャラクターだと思っているうちは・・・だ。

 

 当然彼らにあったことは無いが、彼らが存在することは知っている。恥ずかしいことに最近知ったのだが、 「Ingress」で自分をナビゲートしていたのは人工知能のエイダだった。今知っていること、人類の運命を語るには、自分の幼少時代から説明する必要がある。

 そして、これからのことも語る必要がある。まずは「啓示の夜」が起こるずいぶんと昔、携帯電話も普及していなかった幼少時代の話になる。


この本の内容は以上です。


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