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てがみ

いつものように、簿記の授業を受けていたなつ代ではあるが、
前のように[問題用紙の裏でのメッセージのやり取り]は
[初キス]以来やっていなかった。

、というより、なつ代が返事を返していなかったのだ。


『今日も送っていこうか?』

『忙しいか?』

『どうかしたか?』

『何か怒っているのか?』


(なーーーーにが、”何か怒っているのかああ?”よ!)
(初キスはレモンの味ってきまってるのよ!)

となつ代はいろんな気持ちが入り交じっていて、それが「怒り」として
出てしまっていた。しかし、顔には出さないなつ代だった。





家に帰ってきたなつ代は、机の上に何かが置いてあるのに気がついた。


なつ代のお母さんが

 「なつ代、手紙が届いてたわよ」

と言った。

 「あら私宛に手紙?なにかしら」


 【山 村 な つ 代 様】

そして、送り主は、

 【白 岩 喜 由】

きゆ先生だった。


お互いのきもち

きゆ先生からの手紙を前になつ代は腕を組んで考えていた。

「ふむ、きゆ先生から手紙。。一体何が書いてあるのかしら?」

なつ代は、お尻がかゆくなるぐらいソワソワしていた。

中身が気になって仕方が無いのだ。
しかし、そう簡単に開けてしまったら、きゆ先生に負けた感じがするのか、【手紙の内容】を読む前に読み取ってしまおうとしていた。





「あーーもう、わからないわ!めんどくさいわね、読めばいいんでしょ読めば」

と、なつ代はかんねんしたのか、やっと手紙を開けた。

手紙の内容は簡単ではあるが次のように書いてあったーーー



『なつ代君、

お元気かな。

この前は、ごめんな。

小鳥にはしゃぐなつ代君の姿が

とても可愛らしくて、

つい、キスをしてしまった。

すまないと思っている。

もし許してもらえるのなら、前のように

問題集の裏に返事をください。


本当に申し訳ない。


  白 岩 喜 由  』



手紙を読み終わったなつ代は、なんだかホッとした。

今までの”怒り”はなんだったのか、気持ちがすっとしたようだった。

「きゆ先生でも、生徒の気持ちが”ちょっと”は分かるようね」


となつ代は独り言をいい、

その手紙を、自分の引き出しにしっかりしまったのだった。


ひさしぶり

ーー次の日

いつも簿記の授業できゆ先生の顔が見るのを楽しみにしていたなつ代は、今日はなんだか、足取りが重いような、照れくさいような、
緊張した気持ちできゆ先生の授業を受けていた。

なつ代の前には、問題集を裏にした紙いちまい。


(うーん、先生の手紙の返事なんて書こうかしら・・・)


きゆ先生も何度かこちらを見てきた気はしていたが、
恥ずかしくって顔をあげないで、じっと紙を見つけていた。


(うーーん)






キーンコーンカーン・・・

授業の終わりを知らせるチャイムが鳴った。


(あ!もう授業終わっちゃった?!まだ返事書いてないのにー。。)


なつ代は、時間の流れの早さにびっくりした。

そして、黒板の前にいるきゆ先生の言葉でもっとびっくりしたのだった。


「えー、明日から”夏休み”なので、思いっきり楽しんでください。でも、宿題は忘れるなよ!」


(な、夏休みー?! 忘れてたー。。)

周りは盛り上がっている中、なつ代はどうしようか困っていた。


(返事書いてないよー!なんだか話しかけるのもこっ恥ずかしいし、、)


その時、同じクラスの女子たちが、きゆ先生の所に駆け寄って、

「先生は夏休みどうしてるんですか?」
「広島の彼女さんとデートとか?」
「キャー!!」

と騒ぎ始めていた。


「この夏は、広島の実家に帰るかな」

ときゆ先生は言った。女子に囲まれちょっと照れているようだった。

それを見たなつ代は、なんだか胸が痛くなった。

夏休み中会えないのか、、と思うと同時に、



 『先生の事、。。好きなんだ』


と実感したのだった。


長い長いなつやすみ

暑い夏休み。

きゆ先生、
あなたは今何をしているの?


家の近くの川辺で
風でゆらめく水面を眺めていたよ。

大きな白い花が流れて来た。

私は、
黄色い小さい花を摘んで、

そして、白い花の方に投げたら

二つの花が、
寄り添うように、
一緒になって流れていったよ。

大きいほうが先生で、

小さい方が私。


だんだん流れて見えなくなってしまう。

でも、最後の最後まで見えたのは、

しっかりとひっついた

白い花と、

黄色い花。


きゆ先生、
あなたも私の事想ってる?







長い長い夏休みが、

過ぎていった。

 


にがっき

畑仕事や家事、夏休みの宿題に追われつつ、そして二学期が始まった。

「おはよー」
「久しぶり〜!」
「って昨日会ったばっかだよね〜」

学校の校門をくぐったなつ代は、いろんな声が飛び交う中、どきどきワクワクしながら教室へ向かった。

教室へ行く道に職員室の前を通らなければいけない。

(きーゆー先生はー。。、いないよね!)

ちょっと背伸びをしながら職員室の窓を覗き込む。

ちゃんと見たか見ないかで、通りすぎていく。


教室の前に里美が居るのに気づいた。

「なつ代ー!久しぶり〜!宿題終わった?私終わってないのよ〜」

「里美久しぶり!ばっしり終らしたよ〜!見せてあげますとも」

「ありがたい!」

そんな会話をしながらまた楽しい学校生活が始まると、疑いもなく
なつ代は感じていた。



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