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この日

なつ代は家では時間があれば畑仕事を手伝っていた。
そして、夜時間が空いたら、夜遅くまで勉強をしていた。

それなので、なつ代はいつも授業の先を行っていた。

簿記の授業も同様、予習・復習をしっかりしていたなつ代は、
[この日]もいつものように問題用紙の裏にきゆ先生にメッセージを
書いていた。


今日帰ってきた問題用紙には

 『今日も車で送って行こうか?』

だった。

なつ代はそれに対して、

 『あら、今日もいいのかしら? お願いするわ。』

と書いておきながら、心の中では

 (きゃ>v< やったーー!)

と叫んでいた。


 (早く、学校終わらないかしら!)


 いつもより、学校の授業が長く感じた。







 放課後、いつものようになつ代は帰り道を歩いていたら
きゆ先生の車がやってきた。


 「おーい」

というきゆ先生の呼びかけに対して、なつ代は

 「あらあら、いつもご苦労様です」

と丁寧に挨拶をして車の飛び乗った。


 たわいもない会話で、あっという間に時間が過ぎてしまう

 [帰り道]


 今日はなんだか、ススキやらサトウキビの穂がすごい勢いで
揺れていた。

 「今日もありがとうございました!」

なつ代は仰々しくお辞儀をし、車を降りようとしたら
そこにスズメの赤ちゃんが居た。


 「きゆ先生みてー!スズメの赤ちゃん、カワイイー!☆」

 
 振り返ったなつ代に、

 きゆ先生はキスをしたのだった。


 。
 。
 。


 なつ代は家にはいり、どうしようもない怒りに自分を抑えられなかった。

 帰り際、きゆ先生は

 「今週末は何をしてるんだ?」

 ときいてきた。

 
 「いも掘りですo」


 半信半疑のきゆ先生は、

 「そ、そうか、じゃまたな。」

 と言って行ってしまった。


 「なにが、またな、よ! く〜〜〜くやしい!」


 初キスはレモンの味とか言うが、なつ代にとっては
 
 怒りで何がなんだか分からなかった。

 


てがみ

いつものように、簿記の授業を受けていたなつ代ではあるが、
前のように[問題用紙の裏でのメッセージのやり取り]は
[初キス]以来やっていなかった。

、というより、なつ代が返事を返していなかったのだ。


『今日も送っていこうか?』

『忙しいか?』

『どうかしたか?』

『何か怒っているのか?』


(なーーーーにが、”何か怒っているのかああ?”よ!)
(初キスはレモンの味ってきまってるのよ!)

となつ代はいろんな気持ちが入り交じっていて、それが「怒り」として
出てしまっていた。しかし、顔には出さないなつ代だった。





家に帰ってきたなつ代は、机の上に何かが置いてあるのに気がついた。


なつ代のお母さんが

 「なつ代、手紙が届いてたわよ」

と言った。

 「あら私宛に手紙?なにかしら」


 【山 村 な つ 代 様】

そして、送り主は、

 【白 岩 喜 由】

きゆ先生だった。


お互いのきもち

きゆ先生からの手紙を前になつ代は腕を組んで考えていた。

「ふむ、きゆ先生から手紙。。一体何が書いてあるのかしら?」

なつ代は、お尻がかゆくなるぐらいソワソワしていた。

中身が気になって仕方が無いのだ。
しかし、そう簡単に開けてしまったら、きゆ先生に負けた感じがするのか、【手紙の内容】を読む前に読み取ってしまおうとしていた。





「あーーもう、わからないわ!めんどくさいわね、読めばいいんでしょ読めば」

と、なつ代はかんねんしたのか、やっと手紙を開けた。

手紙の内容は簡単ではあるが次のように書いてあったーーー



『なつ代君、

お元気かな。

この前は、ごめんな。

小鳥にはしゃぐなつ代君の姿が

とても可愛らしくて、

つい、キスをしてしまった。

すまないと思っている。

もし許してもらえるのなら、前のように

問題集の裏に返事をください。


本当に申し訳ない。


  白 岩 喜 由  』



手紙を読み終わったなつ代は、なんだかホッとした。

今までの”怒り”はなんだったのか、気持ちがすっとしたようだった。

「きゆ先生でも、生徒の気持ちが”ちょっと”は分かるようね」


となつ代は独り言をいい、

その手紙を、自分の引き出しにしっかりしまったのだった。


ひさしぶり

ーー次の日

いつも簿記の授業できゆ先生の顔が見るのを楽しみにしていたなつ代は、今日はなんだか、足取りが重いような、照れくさいような、
緊張した気持ちできゆ先生の授業を受けていた。

なつ代の前には、問題集を裏にした紙いちまい。


(うーん、先生の手紙の返事なんて書こうかしら・・・)


きゆ先生も何度かこちらを見てきた気はしていたが、
恥ずかしくって顔をあげないで、じっと紙を見つけていた。


(うーーん)






キーンコーンカーン・・・

授業の終わりを知らせるチャイムが鳴った。


(あ!もう授業終わっちゃった?!まだ返事書いてないのにー。。)


なつ代は、時間の流れの早さにびっくりした。

そして、黒板の前にいるきゆ先生の言葉でもっとびっくりしたのだった。


「えー、明日から”夏休み”なので、思いっきり楽しんでください。でも、宿題は忘れるなよ!」


(な、夏休みー?! 忘れてたー。。)

周りは盛り上がっている中、なつ代はどうしようか困っていた。


(返事書いてないよー!なんだか話しかけるのもこっ恥ずかしいし、、)


その時、同じクラスの女子たちが、きゆ先生の所に駆け寄って、

「先生は夏休みどうしてるんですか?」
「広島の彼女さんとデートとか?」
「キャー!!」

と騒ぎ始めていた。


「この夏は、広島の実家に帰るかな」

ときゆ先生は言った。女子に囲まれちょっと照れているようだった。

それを見たなつ代は、なんだか胸が痛くなった。

夏休み中会えないのか、、と思うと同時に、



 『先生の事、。。好きなんだ』


と実感したのだった。


長い長いなつやすみ

暑い夏休み。

きゆ先生、
あなたは今何をしているの?


家の近くの川辺で
風でゆらめく水面を眺めていたよ。

大きな白い花が流れて来た。

私は、
黄色い小さい花を摘んで、

そして、白い花の方に投げたら

二つの花が、
寄り添うように、
一緒になって流れていったよ。

大きいほうが先生で、

小さい方が私。


だんだん流れて見えなくなってしまう。

でも、最後の最後まで見えたのは、

しっかりとひっついた

白い花と、

黄色い花。


きゆ先生、
あなたも私の事想ってる?







長い長い夏休みが、

過ぎていった。

 



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