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おとうさん

 家に入ったなつ代は、お父さんが立っているのが見えた。

 「今の車はなんだ?」

 とお父さんが聞いてきたので、なつ代は

 「学校の先生がついでに送ってくれたのよ」

 と答えた。

 なつ代の父は本当に厳しい人で、なつ代の行動にかなり注意を払っていた。

 「そうか、なつ代、宿題の前に畑仕事に出かけるぞ」

 「はーい」

 なつ代が学校から帰ってきたら、毎日のように畑仕事がまっていた。

 いつも心の中では[嫌だな〜]と思っていたが、今日ばかりはなんだか楽しく思えてきた。


 (なんでだろう?)

 


メッセージ

何日か経ったある日、いつもと同じように簿記の授業を受けていたなつ代は、きゆ先生がみんなの問題集のファイルを返している時、ふと気になった事があった。

「なにかしら、これ」

なつ代の問題集の紙の片隅に小さく、

『週末は何してるんだ?』

と書いてあった。


「誰かの字に似てるわね。。。あ!もしかして、きゆ先生?」


それはまさしく黒板よくみるきゆ先生の[角張った]独特な味のある字だった。


「ふふ、面白いわね。”返事”書いちゃおうかしら」


『週末は畑仕事ですよ。』


と書いて、なつ代は今日の分の問題集を先生に渡した。


それからというもの、なつ代ときゆ先生は”問題集”で、今でいう”メールのやり取り”のような事をするようになった。


なつ代はその伝言のやり取りが楽しくて、問題集を出すのが楽しみになってきた。

きゆ先生から返ってくる伝言はいたって[角張った]独特な字だった。

 

 


この日

なつ代は家では時間があれば畑仕事を手伝っていた。
そして、夜時間が空いたら、夜遅くまで勉強をしていた。

それなので、なつ代はいつも授業の先を行っていた。

簿記の授業も同様、予習・復習をしっかりしていたなつ代は、
[この日]もいつものように問題用紙の裏にきゆ先生にメッセージを
書いていた。


今日帰ってきた問題用紙には

 『今日も車で送って行こうか?』

だった。

なつ代はそれに対して、

 『あら、今日もいいのかしら? お願いするわ。』

と書いておきながら、心の中では

 (きゃ>v< やったーー!)

と叫んでいた。


 (早く、学校終わらないかしら!)


 いつもより、学校の授業が長く感じた。







 放課後、いつものようになつ代は帰り道を歩いていたら
きゆ先生の車がやってきた。


 「おーい」

というきゆ先生の呼びかけに対して、なつ代は

 「あらあら、いつもご苦労様です」

と丁寧に挨拶をして車の飛び乗った。


 たわいもない会話で、あっという間に時間が過ぎてしまう

 [帰り道]


 今日はなんだか、ススキやらサトウキビの穂がすごい勢いで
揺れていた。

 「今日もありがとうございました!」

なつ代は仰々しくお辞儀をし、車を降りようとしたら
そこにスズメの赤ちゃんが居た。


 「きゆ先生みてー!スズメの赤ちゃん、カワイイー!☆」

 
 振り返ったなつ代に、

 きゆ先生はキスをしたのだった。


 。
 。
 。


 なつ代は家にはいり、どうしようもない怒りに自分を抑えられなかった。

 帰り際、きゆ先生は

 「今週末は何をしてるんだ?」

 ときいてきた。

 
 「いも掘りですo」


 半信半疑のきゆ先生は、

 「そ、そうか、じゃまたな。」

 と言って行ってしまった。


 「なにが、またな、よ! く〜〜〜くやしい!」


 初キスはレモンの味とか言うが、なつ代にとっては
 
 怒りで何がなんだか分からなかった。

 


てがみ

いつものように、簿記の授業を受けていたなつ代ではあるが、
前のように[問題用紙の裏でのメッセージのやり取り]は
[初キス]以来やっていなかった。

、というより、なつ代が返事を返していなかったのだ。


『今日も送っていこうか?』

『忙しいか?』

『どうかしたか?』

『何か怒っているのか?』


(なーーーーにが、”何か怒っているのかああ?”よ!)
(初キスはレモンの味ってきまってるのよ!)

となつ代はいろんな気持ちが入り交じっていて、それが「怒り」として
出てしまっていた。しかし、顔には出さないなつ代だった。





家に帰ってきたなつ代は、机の上に何かが置いてあるのに気がついた。


なつ代のお母さんが

 「なつ代、手紙が届いてたわよ」

と言った。

 「あら私宛に手紙?なにかしら」


 【山 村 な つ 代 様】

そして、送り主は、

 【白 岩 喜 由】

きゆ先生だった。


お互いのきもち

きゆ先生からの手紙を前になつ代は腕を組んで考えていた。

「ふむ、きゆ先生から手紙。。一体何が書いてあるのかしら?」

なつ代は、お尻がかゆくなるぐらいソワソワしていた。

中身が気になって仕方が無いのだ。
しかし、そう簡単に開けてしまったら、きゆ先生に負けた感じがするのか、【手紙の内容】を読む前に読み取ってしまおうとしていた。





「あーーもう、わからないわ!めんどくさいわね、読めばいいんでしょ読めば」

と、なつ代はかんねんしたのか、やっと手紙を開けた。

手紙の内容は簡単ではあるが次のように書いてあったーーー



『なつ代君、

お元気かな。

この前は、ごめんな。

小鳥にはしゃぐなつ代君の姿が

とても可愛らしくて、

つい、キスをしてしまった。

すまないと思っている。

もし許してもらえるのなら、前のように

問題集の裏に返事をください。


本当に申し訳ない。


  白 岩 喜 由  』



手紙を読み終わったなつ代は、なんだかホッとした。

今までの”怒り”はなんだったのか、気持ちがすっとしたようだった。

「きゆ先生でも、生徒の気持ちが”ちょっと”は分かるようね」


となつ代は独り言をいい、

その手紙を、自分の引き出しにしっかりしまったのだった。



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