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初かいわ

 「君は、。。山村、なつ代くんか。何か質問があったら、手をあげてくれよな。」

と、きゆ先生はなつ代の名札と名簿を照らし合わせながら、言った。

 なつ代は、ハッと我に返り、何を思ったのか机の中から[そろばん]の教科書を出して、

 「前のそろばんの授業でココとココの意味がわからなかったのですが、教えてもらえますか?」

と今の授業に関係ない事を聞いてしまった。

 「はは、まかせとけ。」と先生は笑いをこらえながらも、快く教えてくれた。


 先生となつ代の初めての会話だった。


ぐうぜん?

 

 

 ーー放課後、

「なつ代、一緒に帰ろ」

 なつ代の大の親友、里美が下駄箱の所でなつ代に声をかけた。

「うん、ちょっと待って、く、靴がはけない」

 ははは、と笑いながら校庭に出ていくと、
桜が満開になっている所に目が行った。

 青い空を背景に、太陽を目指して咲いている桜はとても眩しかった。

「先生ー!!」

 里美が後ろを向いていきなり叫んで、手をふった。

 その先には、きゆ先生が二階の窓からこちらを見ていた。


 (もしかして、きゆ先生もこの桜の木を眺めていたのかな?)

となつ代は思ったらなぜだか、うれしくって笑えてきた。


 「はははー」


 「えー何笑ってるの、なつ代ー!」
と里美が言っても、笑いがとまらないなつ代だった。


えくぼ

 それから、なつ代はきゆ先生の授業が、なんとなーく楽しみになってきた。

「今から教室まわって行くから、質問がある人はどんどん聞いてください」

 きゆ先生の声がなつ代の耳に響いた。

(あ、昨日わからなかった所きかなきゃ)

 なつ代がノートをめくっている間に、きゆ先生がやってきた。

「きゆ先生、ここってこれで合ってますか?」

 つい[きゆ先生]と言ってしまって、なつ代はハッとした。

「ん?ああ、はは、今日はそろばんの質問じゃないんだな」と笑ったので、なつ代は、
 
(ほら、やっぱり”きゆ先生”でよかったんだわ)

と違う意味で笑ってしまった。そしたら、きゆ先生が

「お、なつ代くんのえくぼ可愛いな」と言ったので、なつ代は、

(あら、この人、先生のくせにして生徒に可愛いですって)

と心の中で思ってみたが、照れくさくもあり、なんとなく、
嬉しかった。



その日の帰り道、お店のガラス窓に写った自分の顔をみて、にこって笑ってみた。

 (なかなか、可愛いかしらね)

っとその時、ぶおーん、と車がやってくる音が聞こえた。

「なーに一人で、にやけてるんだ?」


 きゆ先生だった。

 

 

 


ふたりきり

 車一つも通らないような道路というより田舎道に、きゆ先生は車から顔を出して、なつ代に呼びかけた。

 一人で笑っている所を見られたのもあって、びっくり恥ずかしいなつ代は、

 「きゆ先生?!なにしてるんですか?」

とちょっと裏返ったような声で聞いてしまった。

 「ちょっとこっち側に用があってな。なつ代君の家はこの先なのか?よかったら送っていこうか?」

きゆ先生がそう促すと、[ラッキー!]と思ったなつ代は車に飛び乗った。



 ふわ、

 (あ、なんか海の香りがする)

 車内はなんだか爽やかな、潮の香りがしていた。



 「きゆ先生は、きょうだい何人いるんですか?」となつ代は質問してみた。

 「俺は一人っ子だ。妹でも欲しかったんだけどな、」

 「じゃあ私がきゆ先生の妹になるよ」

 「ははは、こりゃ元気な妹だな」

 
 話をしている内に、なつ代の家に着いた。

 
 「きゆ先生、ありがとうございました!」

 「おう、質問があったらまた言えよ!ははは」

 
 きゆ先生が、行った後、初めての[ふたりきり]に少し緊張していたなつ代は、もっともっとお話したい気持ちで沢山になった。


 「。。。ん?そういえばこの先に何があったっけ?」


 畑とさとうきび畑、そしてその先の先には空と海が青く輝いていた。

 


おとうさん

 家に入ったなつ代は、お父さんが立っているのが見えた。

 「今の車はなんだ?」

 とお父さんが聞いてきたので、なつ代は

 「学校の先生がついでに送ってくれたのよ」

 と答えた。

 なつ代の父は本当に厳しい人で、なつ代の行動にかなり注意を払っていた。

 「そうか、なつ代、宿題の前に畑仕事に出かけるぞ」

 「はーい」

 なつ代が学校から帰ってきたら、毎日のように畑仕事がまっていた。

 いつも心の中では[嫌だな〜]と思っていたが、今日ばかりはなんだか楽しく思えてきた。


 (なんでだろう?)

 



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