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Re ・・・

 

そんな中、"葵"の人脈と行動力は見事だった。

「 後輩に車屋やってる子がいるからさぁ・・」

と言って間も無く、愛車である赤いゼットは引き取られ、中古の白いY-31が次なる愛車として納車された。

"小鳥"はこの時、売値と買値の差額で当面の生活費を捻出すると言っていた"葵"が本気だった事に心打たれ、愚痴も零さずそこまでしてくれた事に感謝し、それと同時に職探しに少しの猶予が生まれた気がして安堵を覚えた。

そして、

「 "リー(小鳥)"ちゃん! アタシは毎日使う訳じゃないし、送り迎えでも何でもするから、取り敢えずはこれ一台でがんばろうね!」

「 "イー(葵)"ちゃん・・ ありがとう 」

次なる勤務先を、

( 徒歩か自転車で通える場所か・・)

近場に絞って思いあぐねていたのだが、この"葵"の言葉によって選択肢を一気に広げる事が出来たのである。

( どれどれ・・)

何度も眺めた求人広告を心機一転して見直すと、似た様な就労条件と待遇が並ぶパチンコ店スタッフの募集の中から、

" 明るく楽しい仲間がアナタを待っている "

こんなキャッチフレーズが目に止まり、

( 新人として入れば、右も左もわからない・・ 冷たく扱われたりして途方に暮れるより、楽しい仲間に優しく教えて貰えた方が良いな・・)

心に余裕が生まれたからなのか、高額の給与や好条件ばかりを追い掛けても長く勤められなければ安定はしないだと思い直すと、まずは職場環境が大切であると新たな考えが生まれた。

そして、極めて献身的に応援してくれる"葵"を安心させる為には、このキャッチフレーズを掲載したハクサイグループの"8931ハクサイ"という店で二度目の面接を受けるべきだと思えた。
 
 

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即答

 

この店の住所は甲府市だったが、"北部運輸"まで通っていた事を思えば通勤距離に問題はなかった。そしてその距離は、山梨市を拠点とするカカシ商運の人間が来店する可能性を低くさせる為、

( 会いたくない・・)

という感情を抱えていた"小鳥"にとってはむしろ都合が良かった。

面接の日、甲州バイパス沿いに位置する店を迷い探す事は無く、約束の時間より少し早めに着いた"小鳥"は、付き添いで隣のシートに座る"葵"と駐車場でその時を待った。

揃ってタバコを吸いながら、

「 "リー(小鳥)"ちゃん、この店けっこう混んでるね 」

「 そうだね、次から次に車が入って来るしね 」

「 ここなら潰れる心配も無さそうだね 」

「 あぁ・・」

確かに、一度目の面接を受けた店と比べれば、車で埋め尽くさんばかりの駐車場と頻繁な客の出入り模様は混んでいる店で間違い無い。
 
「 "リー(小鳥)"ちゃん、そろそろ行った方が良くない?」

「 あぁ、それじゃちっと行って来るわ 」

「 ちゃんと挨拶してね 」

「 あぁ 」

・・・

自動扉を開けて店内に入る。

通路には出玉の入ったドル箱が所狭しと積み上げられていて、とても真っ直ぐに歩ける状態では無い。

( すっげぇなぁ・・)

注がれる視線に圧倒されながら、カウンターを見つけて面接の旨を伝えた。

内線が繋がれると、間もなく茶色のスーツ姿の女性が笑顔でやって来た。

「 "黒井(小鳥)"さんですね、お待ちしておりました、コチラへどうぞ 」

事務所へと案内され、

「 失礼します 」

「 さっ どうぞ、そこにお掛け下さい 」

「 はい 」

「 初めまして、ワタクシはここのマネージャーを務めている"甘党"です、履歴書をよろしいですか?」

「 はい 」

幾つかの質問に答えた後、

「 同棲中の彼女と結婚する為に、しっかりとした職場で働きたくて・・」

「 まぁ素敵!それじゃがんばって幸せにならなければいけませんねぇ 」

という会話を経て、

「 "黒井(小鳥)"さん、いつから働けますか?」

「 えっ? 働けるのでしたらいつからでも・・」

「 それでは明日からでも大丈夫ですか?」

「 はっ? あの・・ 採用していただけるのでしょうか?」

「 はい、採用です 」

信じられないスピードで採用が告げられた。

「 ああ、ありがとうございます・・ 自分はすぐにでも働きたいので明日からでも大丈夫です 」

「 そうですか! それでは制服を用意しますので採寸をしましょう 」

「 はい 」

"甘党"マネージャーはメジャーを持って来ると自ら"小鳥"のウェストと股下を計り、それから何処かへと電話を掛け、

「 明日までに大丈夫ですか? はい、 はい・・」

そして受話器を置きながら、

「 では明日からという事で・・ "黒井(小鳥)"さん、期待してますよ 」

明確な出勤要請をした。

「 質問してもよろしいですか?」

「 どうぞ 」

「 社員には、どのようにすればなれるのでしょうか?」

「 あぁそうね、条件は一ヶ月間、無遅刻無欠勤でがんばって勤める事、これが出来たら社員として採用になります 」

「 本当ですか?」

「 はい、その代わり副業は禁止ですから、ウチ一本で働いて頂く必要があります・・ 出来ますか?」

「 はい、大丈夫です 」

取り敢えずは遅番勤務でアルバイトとして研修期間を過ごす事を説明され、

「 ありがとうございました、失礼します 」

自動扉まで見送りに出た"甘党"マネージャーに一礼して、車で待つ"葵"の元へと少しだけ急ぐ。

「 "リー(小鳥)"ちゃん、おつかれ・・ どうだった?」

手応えを気にする"葵"に、

「 すっげぇ緊張したぁ 」

と答えて静かに車を走らせる。

そして、

「 "イー(葵)"ちゃん・・」

と呼び掛けて間を作る。

「 どうしたの?」

「・・・」

「 うまくいかなかったけ?」

"葵"が不安な表情に変わるか否か、

「 明日から働ける事になった 」

車は駐車場を出ていた。

「 はっ?」

と一瞬戸惑った"葵"が、

「 えぇ~、良かったじゃん~ じゃぁ今日はお祝いしなきゃぁ 」

と大きな喜びを見せる。

「 ふぅ~~っ、また駄目じゃねぇかって内心ビビッてたんだぁ・・ マジで良かったよ、"イー(葵)"ちゃん、今まで心配掛けてごめんねぇ・・」

「 ううん、全然・・」

帰りの車中は、来る時とは全くの別物になっていた。
 
 

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  著者 : k.kaminari
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