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昇進

この本を読んで頂いている方には分かると

 

思いますが、私達アル中には特殊な能力があります。

 

それは場の雰囲気を読む力です。

 

またはその場で何を求められているかを瞬時に判断

 

できる能力を持っていることです。

 

多分この力はアル中やその他のアディクション患者の

 

持つ特性であると私は思います。

 

悲しいけれど、私達はそれがなければ生きてこれなかった人達ですから。

 

そして私はその能力を買われたのか花形の営業部門へ引き抜かれました。

 

それはかなりの飛び級と言えるもので、多くの人の嫉妬を買いました。

 


昇進2

異動初日。

 

局長室へと向かうエレベーターの中で

 

さすがにあまりの酒臭さを課長に咎められました。

 

昨晩お祝いで飲まされたということにして、結果的には

 

私ではなく一緒に飲み屋にいた先輩が犯人にされたので

 

申し訳なかったのですが、飲み屋で祝杯をあげたのは

 

事実でしたが、家に帰ってから更に深酒したのは

 

紛れもない私自身でした。

 


新天地

営業部門で待っていたのは新たな問題でした。

 

多くの嫉妬や反感を買っていた私です。

 

初日に課長に言われた言葉は「君の身には何が起こるか

 

見当もつかないけれど、それは想像を絶するものかもしれない。

だけど、とにかく耐えてくれ」でした。

 

 

実際に待っていたのは辛い日々でした。

 

それは以前いた部署でもそうでしたが、コミュニケーション

 

の全く取る事の出来ない世界。

 

仕事は教えて貰えない、ただ一方的に無視される、怒られる

 

この毎日でした。


日常

そんな辛い日々を送っていました、

 

毎晩酒でその辛さを洗い流しながら・・・・

 

飲んでいる時だけが生きていることを実感できる唯一の時間でした。

 

しかし、さすがにその頃には課長の目がかなり気になり始めました。

 

営業結果が出ないこともありましたが、毎朝酒臭い息。

 

そして充血した目。

 

段々と離れていく課長。

 

充血した目は色々試して見つけた目薬で誤魔化すことには成功しましたが、

 

酒臭い息だけはどうにもできません。

 

そして何よりも毎日体調がすぐれません。

 

この頃にはあちこちにアル中を証明する症状が

 

出始めました。


出会い

それは休みの日でした。

 

本屋さんの病気の書籍のコーナーでアルコールに関する本を片っ端から手に取って

 

斜め読みしていました。

 

もう何かにすがる思いだったのでしょう。

 

何を読んだのか買ったのかすらあまり覚えていません。

 

そして、そこに書いてある事にかなり感銘を受けたような

 

気もします。

 

しかしただ一つ覚えていることは、シアナマイドという抗酒剤

 

があることを知った事です。

 

これはショックでした。

 

いや、良い意味でです。

 

これで職場で何とか誤魔化しながらやっていける!

 

そう思いました。



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